第七十六話 決戦・急
「これで終わりですね」
「……………」
私は目の前にいる天使の脳天に矢を突き刺すことでこの天使が死亡したのを確認しました。
急いでフィーちゃんの方に加勢しましょう。
恵ちゃんはもう少し持ちこたえられると思いますので。
あの子達が負けていたら焔君に何故ついてきたんだと怒られちゃいますからね。
お姉さんとしてのお仕事です。
===============================
「…なれないことはするものじゃないですよ?精霊は精霊らしく地上に住んでいなさい!」
「いたたた……」
いきなり視界が真っ白になったと思ったら次はいきなり体が吹き飛ばされました。
大体相手が立っていたところから推測すると十メートルぐらいですかね、飛ばされたのは。
一体何が起こったのでしょうか?
「まだまだ!確かに今のは痛かったですがそこまでのダメージはありません!」
「精霊にしては、いやシルフィードにしては丈夫な体ですね。今のを普通の精霊が食らったら魔力の状態に戻っているはず何ですが……」
「え?何ですかそれ、怖い!!!」
魔力の状態に戻されるって…精霊にとっては死ぬと同意ですよ!?
むしろ死ぬのは依代があれば復活できるのですが魔力の状態にまで戻されたら復活出来ないので死ぬよりも怖いですよ!
今のは鎌に当たったみたいで大丈夫でしたがもう一回は食らわないようにしませんと……
「一回で駄目ならば……!」
「うわ!危ない!」
白い光を放っている玉がこっちに飛んできました。
さっきの攻撃の正体はこれですか!
近距離だったので玉が着弾する時間が短かったんですね、今は距離が開いていて助かりました。
正体がわかればこっちのもんですよ!
「やぁああああ!!!」
「突進してくるしか能がないんですか?それだけならば簡単にばらばらですよ?」
「【障壁】【濃霧】」
「な!?」
私はまず障壁であの光の玉を防ぎます。
防いだ、のですが………はい。
障壁が消えてなくなりました、はい。
どうやら魔力レベルまで分解されるという話は本当のようで。
ですが一回防げばこっちのものです。
霧を出して視界を悪くします。
これであの光りの玉はわかりやすく、私の位置はわかりにくくなりました。
これであの玉には大分当たりにくくなったはず!
一気に天使に接近します。
一瞬で片を付けてしまいましょう、あんな一撃必殺みたいな技が向こうにあるのならば私の負けは確定みたいなものですからね。
今のうち、当たり辛いうちに殺ってしまいましょう。
「くそ!どこにいる!」
「……………」
私は息をひそめ、音を立てずに近づきます。
この鎌じゃちょっと命中精度に不安がありますね。
スキルで………スキル名の詠唱も破棄してやってみましょう。
考えるのです、こいつを倒す技を。
イメージするのです、こいつの首が飛ぶのを。
具現化するのです、魔力を放り出して。
……段々出来上がってきました。
このイメージを投影しましょう、私自身の体に。
「ええい!鬱陶しい!吹き飛べ!」
霧が飛ばされてなくなります。
今の私にはそんなことは気になりません。
「な……何なんですかこれは!あなたは、あなたは本当に精霊ですか?」
「……【魔神化・フレズベルグ】」
私の手と足には鋭い鍵爪が生え、腕の外側には羽が幾つか付き、背中には巨大で鳥のような羽が生えてきました。
しかしその羽は天使のような柔らかい印象はなく、とても巨大で、禍々しい印象を見るものに与えます。
「す、姿が変わっても所詮は精霊。神の御加護を受けている私が負けるはずが――」
「……………」
「――!―――!!!」
私は一瞬で天使の首を刎ね、殺しました。
そして死んだのを念入りに確認してから魔神化を解除します。
「フィーちゃん!大丈夫ですか!?」
「玉依さん!こっちは終わりましたよ、そちらは?」
「こっちももう終わりましたよ、恵ちゃんのところに行きましょう」
玉依さんです、どうやら私よりもかなり早く終わらせていたみたいで。
恵ちゃんがまだということらしいので迎えに行きましょう。
===============================
「その程度か!」
「きゃあ!」
想像以上にこの天使、やりますね……
こうなった悠長に相手が氷漬けになるのを待っている暇はなさそうです。
フィーちゃんは大丈夫でしょうか?
全員この強さならば玉依さんは大丈夫でしょうけれどフィーちゃんはきついかもですね。
…いや、大丈夫だと信じましょう。
私だって危ないところなんですから他人の心配をしている暇はありません。
「いやはや、流石にお強いですねぇ」
「……今からでも悔い改めれば神は許して下さるぞ」
これはこれは慈悲深い一言ですね。
しかし私は舌を出してこう言います。
「私は魔王なんかを許す神なんかに許しを請う気はありませんね!」
「ははは。…チャンスはこれ一度だけだ、次はもうないぞ?後悔したときにはもうおしまいだ」
「上等です!とことん足掻いてやろうじゃありませんか!」
私はアイシクルランスを構え直します。
この時にアイシクルランスに氷を纏わせておきます。
そして一気に近づき、そして天使に向かって突きをします。
「当たらない、狙いが下手すぎるぞ」
天使は半身になって私の突きを避けます。
そしてその行動と言葉に私はにやりと笑ってしまいます。
「これこそが狙いですよ、【アイス・スプリット】」
「ぐっ!何だと!」
アイシクルランスに纏わせておいた氷が枝分かれしながら伸びて行きました。
そしてその内の幾つかが天使の体に刺さりました。
さらに私は追い打ちを掛けます。
「追加でこれもどうぞ!【イローション・アイス】」
「またこれか!くそ!抜けない!」
氷が刺さった部分から天使の体が凍りついていきます。
天使が氷を抜こうと躍起になっています、氷で張り付いているので抜けませんが。
天使が抜くことが出来ないとわかると私を先に倒せばいいと考えたようで攻撃をしてきます。
その行動に私は天使の体に刺さっている氷を刺さっている部分だけへし折り、天使から離れます。
これで天使が完全に凍りつくまでの時間が短縮されました。
凍りつけば凍りつくほど、相手の動きは鈍くなるのでこちらが有利になります。
「小癪な真似をするんだな」
「私はご主人のように強くはありませんからね、小細工でもしないと駄目なのですよ」
私はまた舌を出します。
ベーって、ベーーって。
天使はもう半身が凍りついています。
これほど凍りついているのに動けるこの人はおかしいんですけどね。
「……くそっ!」
「おっと」
天使が攻撃してきましたが動きがかなり鈍くなっていたので余裕綽々で避けられました。
そして私は反撃をして、天使の体を砕きました。
「これでお終いです、さようなら」
「がっ………!」
音を立てて天使の体が崩れ落ちます。
詳しく見なくとも死んでいることがわかります。
「さて、フィーちゃんと玉依さんに合流しましょうか」
私はご主人と別れた場所に向かって歩き出します。
そして少し進んだところで二人と合流しました。
お互いの無事を確認した後ご主人とニュクスちゃんが向かった方向に三人で走り出しました。
===============================
「……そろそろ、向こうは終わったころか。はたしてこちらに来るのはお前の部下か私の天使たちか」
「はぁ、はぁ」
「なあ、焔の魔王よ。どちらだと思う?」
「……………」
「もう話す余力も残っていないのか、力がないというのは悲しいな」
「はっ!そんなもん恵達に決まっているだろうが!」
あいつらがあの程度の奴らに負けるわけがない。
あの程度の奴らに負けるぐらいなら玉依さんが来るのを止めていただろう、だがあいつらは来た。
どんな奴にも勝てるとふんだからここに来たんだ!
「ふむ、なるほどな。しかし今のお前を見てどう思うかな?満身創痍のお前を見て」
「はは、それもそうだな。みっともない姿だからな」
魔神化は解け、体は傷だらけ、致命傷こそないものの膝をついて座っているのがぎりぎりと言ったレベルだ。
ニュクスの詠唱はまだ終わらない。
まだ時間を稼ぐ必要がある。
俺は自分を奮い立たせる。
約束しただろう?
約束は守る、それが俺のルールだ。
自分で約束したのに裏切るなんてそれこそ最低の野郎だ。
約束したのなら、果たせないまでも出来る限りの努力をするべきだ。
「まだ、立つか。いい加減諦めてみたらどうだ?」
「嫌だね、諦めるのはもうこりごりなんでな」
俺は立つ。
神の前で立ちあがる。
満身創痍でもかっこ悪くてもいい。
後で死ぬほど後悔するよりは何倍もましだ!
俺はレーヴァテインを握りしめ直す。
汗や血で滑る。
だが今は気にならない。
「らぁ!」
「無駄だと何度言ったらわかるんだ?」
神に俺の攻撃は簡単に避けられる。
これではさっきまでと一緒だ。
どうする?
俺はレーヴァテインを神に向かって振りながら考える。
策を考えなければ負けは確実だ。
「はぁ…はぁ……」
ニュクスの詠唱はまだ終わらない。
くそっ!詠唱をフルでとは言ったがここまで長いとは聞いてないぞ!
最強のやつと言ったからしょうがないか。
何か、何かきっかけがあればまだ何とか……。
せめてあいつらがいなければ……
俺はまた振りかぶり神に切りかかる。
まだ俺の攻撃は空を切るだけだ、神には届かない。




