第七十話 魔神の目的と正体
ハイブリッド達は全員処置し終えた。
住むところも働くところもないと言っていたから適当に首都と恵の町で働ける場所を探してそこにいれた。
残っていたのは五十人ぐらいだ、元々が百五十ぐらいだったから百人死んだことになる。
百人の犠牲のうち五十人は最初の適当にやっていた時に、三十人は次にニュクスから魔族について訊いた後の模索で、二十人はうまく魔力を引きはがせなかったり拒絶反応を起こしたりして死んだ。
何はともあれこれで俺のあいつらとの約束は果たされたな。
そしてその後は玉依さんに任せておいた仕事の後処理だ。
玉依さんにしてはちょっと仕事が雑になっていたなとは思ったが十分やってくれていたので何も言わない、きっと何かの事情で時間がなかったんだろ。
そしてその仕事も大体が片ついた。
そのころにはもう夜になっていた。
「……ニュクス、ちょっと外に出るからついてきてくれ」
「なんじゃ?いきなり」
「ちょっと話がある。今なら玉依さんや恵も寝ているだろうからな」
「……わかった、ちょっと待っておれ」
俺はその辺で寝っ転がって暇を持て余していたニュクスに声を掛ける。
ニュクスは迷惑そうに返事をしてきたが俺が真剣な顔をしていることに気が付くと外に行く準備を始めた。
準備と言っても夜だから防寒具を身に着けただけだがな。
「で、どこにいくのじゃ?」
「北の山岳地帯に湖を作ってある。そこなら誰もいないだろうし静かだから話に集中できる」
ここで俺は一つ嘘をついた。
と言っても保険を掛けただけだ、いざという時のためな。
ニュクスはその嘘に気付いていないみたいだから大丈夫。
それにあそこの湖なら近くに“あれ”への入り口がある、万が一暴れるとしてもそこなら大丈夫だ。
ニュクスが準備し終わったみたいだからニュクスを連れて湖に転移する。
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「……さて」
「焔よ、一体何の話なのじゃ?」
「そろそろいいんじゃないか?」
「一体何がじゃ?」
「お前の目的について、だ」
「……………」
俺が質問を投げかけた瞬間ニュクスの顔が真剣そのものになる。
そして微かに殺気を放っている。
「お前と会ってだいぶ経った。しかしまだお前の目的を俺は知らない。……俺はお前の本当の名前を知っている」
「!?」
「新鳥さんからいろいろと聞いたんだよ。今思い出すとその前にもお前がそれについて話していたし真剣に考えてみると簡単に思いつく奴がいた」
「………そこまでわかっておるのならお主ならばわらわの目的も推測できるじゃろう?」
「お前の口から訊きたいんだよ、ニュクス。いやこう呼んだ方がいいか?」
俺は一拍おいてから再び口を開く
「“堕天使ルシファー”、と」
ニュクスが纏っていた空気が先ほどとは確実に変わった。
ニュクスが放っている殺気が凄みを増している、普通の奴だったら息苦しさで窒息していてもおかしくはない。
「お前が何故そんな幼女の姿をしているのかも多少は見当がついている。お前、素のルシファーとしての体を捨てたんだろ?」
「お主……本当にどこまで知っておる!?」
「俺が言っているのは新鳥さんから訊いた情報とお前が勝手に自白した情報をもとに推測した俺の勝手な妄想だ。だからこそお前から真実を知りたい。教えてはくれないか?」
「………わかった。焔だけならばよい、話そう」
ニュクスから放たれていた殺気が消えた。
どうやら話してくれるみたいだ。
この後はニュクスの語りに移るぞ。
「そうじゃな、まずどこから話したものか………」
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まずはわらわが今の体になった理由を話すこととしようかの。
焔の言った通りわらわは昔の、“ルシファー”の体は捨てたのじゃ。
あの体は限界だったのじゃよ。
神に敗れ、天から落とされ、魔力の殆どを失ったわらわには傷ついた体を維持することさえ長い間は出来なかったのじゃ。
持ったのは大体……それすら忘れたわ、新鳥を魔王にして少し経ってからじゃったな。
そのころにはもう体がずたずたでな、新鳥には気が付かれた気配はなかったが立って喋っていることすら大変だったのじゃよ。
わらわがその体を捨てるという決意をしたのもそのあたりじゃったな。
故に新鳥から離れて新しい体に出来そうな体を探し始めたのじゃ。
結局この体が見つかったのは元の体が崩壊を初めてからじゃったかな?
それこそ死のギリギリで見つかったのじゃよ。
こやつの体はわらわの元々の体ほど魔力の許容量は多くはなかったがまあまあの容姿であり何よりも闇属性の魔力に適応しておった。
今の口調は元々この体の持ち主のものじゃよ、この体に馴れるまではどうしてもこの少女を演じて周りに不信感を持たせるわけにはいかなかったのじゃ、その状態でやられたらひとたまりもないのでな。
この体になった理由はこんなものじゃ。
案外簡単なものじゃったろ?
次は………目的じゃな。
これに関しては単純明確、神の鼻を明かすことじゃ。
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「――やられっぱなしでは癪じゃからな、どうしても復讐してやりたいのじゃ」
「……やっぱりか」
「やはり焔はわかっておったか」
「いや、体については俺の推測とは違かった。…一つそこんところ聞かせて貰いたい、その体の元の持ち主の意識、魂は今どうなっているんだ?」
この問いにニュクスは渋い顔になる。
「わからぬ。この体の元の持ち主は名を……セレナと言ったかの、その魂に代わってわらわはこの体に入ったのじゃ。元々の魂はこの体から追い出されそのまま魂のまま朽ち果てたかもしれぬし、誰かに拾われたかもしれぬ。わらわには知りようがない」
…この体の本当の持ち主はどうなっているのかはわからないという事か。
勿論俺はこのニュクスの行動を責めるつもりはない。
責めてどうなるというものでもないしな、すぎたことだ。
「んじゃもう一つ聞かせてもらうが何故“ニュクス”という名を騙っていたんだ?」
「『名は体を表す』、これは本当に効果があるのじゃよ。強き者の名を借りることでなるべく早く力を取り戻せるように
したのじゃよ。きちんと本人には許可は貰ってある」
「どうやって?」
「公衆電話から電話したのじゃよ」
……なんだろう、さっきからシリアスだったはずだよな?
シリアスよ、さようなら。
…さて
「俺らの話が終わるまで待っていてくれるなんて随分と優しいんだな。なあ?さっさと出て来いよ」
「……気が付いてましたか」
俺は闇に紛れていたそいつに声を掛ける。
…うん、はい。
ニュクスの正体の公開です、大半の人は予想がついていたのかと思います。
あと、だからどうしたという事でこの告白で焔君がニュクスちゃんに対しての接し方を変えることはありませんので。




