第六十九話 思案、現場調査、そして結果
「……やはり普通の方法じゃあ分裂は不可能か。ニュクス、何か考えはあるか?」
「うーむ、わらわもこんな事例は初めてじゃから予測がつかぬな……魔族の事ならば詳しく話すことが出来るがそれでいいかの?」
「それでもいい、教えてくれ」
「わかった、魔族は基本的に魔物と人間の中間に位置する生き物じゃ、何か足しにはなるやもしれぬな」
ニュクスからしばらく魔族と人間の違い、魔族と魔物の違いを教えてもらった。
いくつかヒントになりそうなことはあったがそれでも解決とはいかなさそうだ。
やっぱり死体の山を築くしかなさそうだな。
しかし大した進展もなく三十人が犠牲になった。
「やっぱり普通の方法じゃ不可能みたいだな………なるべく苦痛を与えない方法でやってきたのが悪いのか?」
「それなら早めに踏み切った方がよさそうじゃな。後回しにすればするほど悪化するパターンじゃろうし」
「あの状況で何かが変わったのか……?やはりもう一回あの場所を詳しく調べてみるとするか、出かけてくる」
「わらわも一緒に行った方がよいか?」
「いや、ここで待っていてくれ。考え事は一人でする方が捗るんだ」
そう言って俺はあの場所に転移する。
何か一つでもいいから新しい情報が欲しい。
何かあれば……
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「……やっぱり特に目ぼしいものはない、か。しかしこのまま何にもわからずじまいっていうのはまずいよな……ん?」
あまりにも何にもなく目を適当に逸らしたところであるものを見つけた。
というよりも見えたというべきか。
「これは……ただの物じゃなさそうだな、あれだけの炎で焼かれたというのに焦げ一つついてない。見たところ石のようだが……なんだこれは?」
ニュクスに聞いてみるか?
知っているかどうか微妙なラインだがダメ元とも言うし後で訊いてみるか。
というかこれがこの世界の物とは思えないんだ。
業炎に耐えてさらに見た目に傷や焦げ一つない。
こんなものがこの地球上にあるとは思えない、思いたくない。
「ひとまず収穫はあったか……もうちょっとこの辺のことを調べたら持って帰って調べてみよう」
結局この後成果はなし、俺は拾った石ころ一つもってダンジョンに帰還した。
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「お帰りじゃ、焔よ。何か成果はあったかの?」
「ああ。ニュクス、この石について何か知らないか?」
「!、……焔よ、どこでこれを見つけたのじゃ?」
「あの天候野郎が持っていたのを拾ってきたんだ。てっきりあいつと一緒に燃え尽きたと思ったんだが……何かわかるか?」
ニュクスはよく石を見ている。
ひっくり返して裏まで念入りに、だ。
そしてこう結論付けた。
「これは……“魔力結晶”じゃな。何故この世界にこれがあるのじゃ?」
「俺にもわからん、てか“魔力結晶”ってなんだ?」
やはりこの世界の物ではなさそうだ。
ニュクスはこれについて知っているようだが……何なんだろうな?
「この世界では“賢者の石”とも呼ばれているそうじゃ。こっちならばピンとくるのではないかの?」
「“賢者の石”、か。これまたとんでもないものが出てきたものだな、やれやれ」
賢者の石を知りたい人は新しいタブを開いて検索してみると出てくるはずだ。
でもこれで合点がいったな。
あいつ自体は魔力量があれほどの事が出来るほど多くなかった。
それが少し不思議だったが賢者の石という伝説級の物があれば唯の人間でも可能だろう。
それはあいつに賢者の石を渡したものがいるということ………
これは“あいつ”ぐらいしかいないだろうな。
そろそろ見つけ出して話をゆっくり訊きたいな。
「じゃあその魔力結晶とやらについて詳しく教えてくれ」
「魔力結晶は文字通り魔力を凝縮し、固体になるまで固めたものじゃ。大きさは米粒レベルから拳大ぐらいじゃな、それ以上の大きさとなるとわらわでも作るのは厳しいの」
「効果を教えてくれないか?」
「効果は単純じゃよ。使用できる魔力の増加と魔力を貯めることができるのじゃ。魔力の銀行のようなものじゃな」
「魔力を貯める?」
これは便利そうなものを手に入れた。
あとで実験してみるとともに俺にも作れないか試してみよう。
「ニュクス、これは俺にも作れるか?」
「可能じゃ、作りたいのならば後でじっくりと教えることにしようかの」
「ならこれは使っても問題ないな……」
「焔よ何をするつもりじゃ?」
「なあに、いつも通り実験さ」
とんだ思い付きだが俺はいつだって思い付きで動いてきたし成功してきた。
今回はストックがある分楽なもんだ、出来なかったら別の事を試せばいいだけだ。
「それじゃあ行ってくる。ニュクスは今回も見学するか?」
「いやもう良い」
「わかった。もしかしたら後で頼むことが出てくるかもしれんからその時はまた呼びに行く」
再び実験場に戻って確かめに行く。
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「………これでどうだ?」
「うう……ああ………」
「ならこうしてみるか。ちょっとつらいが我慢してくれ」
「ぐあああああああ!!!」
「ん!これは新しい反応だな、もしかしたら………」
この後五分ぐらい色々と確認しながら進めて行った。
すると………
「お?お!近いぞ!」
「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」
「耐えろ!もう少しだ!」
まさかとは思ったが本当に出来るとは思っていなかった。
しかしこれは大変だな………加減を間違えたら死ぬぞ。
そして完全に魔物だった部分が人間に戻った。
「ここだ!」
「っはぁ、はぁ、はぁ」
「大丈夫か?」
「はぁ…はぁ……」
……どうやら意識を失ったようだ。
魔力を一気に吸い取ったわけだからな、無理もない。
おっと、俺がした直し方の説明がまだだったな。
魔力結晶を使ったんだ、今回はそれの性質の一つ“魔力をためることが出来る”を使ったんだ。
魔物は基本的に母体はなしで魔力だけで構成されている。
つまり魔物の部分は魔力が主になっているんだ、その魔力を俺はクリエイトで分解してからこの魔力結晶を突っ込んだ。
そしてそのあと魔物の部分が空くからそこにまたクリエイトで人間の体を作っていく、これで人間の体とほぼ同じになる。
魔力結晶に魔物の魔力を閉じ込めたのには意味がある。
元々はこいつの魔力だったんだ、そのまま放置しておけばこいつのもとに戻るのが普通だろう。
ん?俺の魔力もその辺に撒き散らされているって?
あれはスキル発動によるいわば燃えカスのようなものだ。
こっちの魔力は無理やり引きはがしたものでまだ使える魔力なんだ、普通ならまだ持っているはずの物なんだ。
いわばこっちのは磁石のS極とN極を放した状態になる、このまま放っておけば勝手に戻っていく。
戻ってしまえばまた元の状態に戻るだけだ。
この方法は実はもっと前にもちょっとしたことを考えていた時に思いついていたんだが魔力が戻るのを止める方法がその時にはなかったんだ。
しかしこれでもう大丈夫だろう。
さっさと他の奴らも人間に戻して仕事に戻ろう。
はぁ、玉依さんが怖い。
最後が近い上に作者が暇なため今日の二話目投稿です。
あと最終話は大体七十五から八十の間ぐらいになる予定です。




