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第六十八話 楔を打て

 焔君が悪戦苦闘しているのでかなり久しぶりの恵ちゃん主観の回です。

 ちょっとシリアスちょっとネタの回

「高梨さん、この箱はどこに運べばいいですか?」

「その箱はUの5に運んでください」

「高梨さん、こちらの荷物は……」

「そっちはEの3、その後ろの方のはAの13です」


 ああ、忙しい。

 ご主人は島全体の事ですからきっとこの町だけの私よりも大変なのでしょうね。

 ご主人は今別の案件で忙しいそうなので現在その仕事を普通に現在肩代わり玉依さんもかなりすごいです……私には無理ですね。


「高梨さん、神崎様がお見えになっております」

「玉依さんが?一体何の用事なのでしょうか?今は私よりも忙しいと思うのですが……取りあえず部屋に向かい入れてください」


 噂をすれば何とやら、玉依さんのご登場です。

 忙しいはずなのに私に何の用事なのでしょうか?

 今ご主人が持っていた案件で港関係の物はなかったと思いましたが……何なんでしょうね?


「こんにちは恵ちゃん、今お話しいいかしら?」

「ええ、大丈夫ですよ。丁度今玉依さんが好きそうなお茶があるのでちょっと待っていてください」


 そう言ってお茶を取りに行きます。

 確か戸棚の一番上だったような……う、届かない。

 ……おとなしく踏み台持ってきます。


 後ろで玉依さんが笑っている声が聞こえてきました。

 うう、恥ずかしい。

 何はともあれ取れましたのでお湯を沸かしましょう。

 このちょっとの間にお話しを聞いていましょうか。


「ところで今日は何の用で?」

「あら?私は用がなくちゃ恵ちゃんに会いに来ちゃいけない?」

「いえ、ご主人が玉依さんに仕事を押し付けたと聞いたので忙しいとばかり」

「ああ、それなら確かにやることはたくさんね。でも息抜きも大切なのですよ?」

「おっしゃる通りで」


 玉依さんには敵わないなぁ。

 話しているとそんなことを感じさせられます。


 そんなこんなでお湯が沸きました、お茶にしましょう。


「えーっと、急須はどこに閉まったっけな……ああ、ここにありましたか」

「恵ちゃん、お茶はまだ?」

「もうちょっとだけ待ってくださいな、もうすぐ入れられますので」


 まずは湯呑にお湯を出して、少し経ったら急須に茶葉を入れて、湯呑に入れておいたお湯を急須に注いで、と。

 これで茶葉が開いたらですね。


 私は急須と二人分の湯呑をもって玉依さんが座っている机の玉依さんの真正面に座ります。

 そして茶葉が開いたので湯呑にお茶を入れました。

 忘れてました、羊羹があったのでそれも持ってきましょう。


「はい、どうぞ」

「ん、ありがとう。……美味しいですね、このお茶」

「気に入ってくれたのでしたら茶葉を持って行ってくれてもいいですよ?私お茶はあまり飲まないので」

「ふふ、そうさせてもらいます」


 そのあと三十分ぐらい何ともない雑談をしました。

 羊羹美味しかったです。


 そのあと玉依さんが急に真面目そうな顔になったので私もつられて真面目な顔になります。

 何やら雰囲気が……いつものとは違います。



「ねぇ、恵ちゃん?」

「はい、なんでしょうか?」

「いや、ね。いつまでこのまま停滞し続けるつもりですか?」

「え?」

「見てる側としてはもどかしいんですよ?なんかもう……ねぇ?」


 一瞬玉依さんが何を言っているのか私にはわからずきょとんとしてしまいました。

 そのあとすぐに何を言っているのかを理解してしまして顔が赤くなっていくのがわかります。

 玉依さんの表情が心なしかにやついているようにも思えてきました。


「な、な、何を言い出すんですかー!?」

「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。でも恵ちゃん、そんなに動揺したという事はまさか図星?」

「うううぅぅぅぅぅ!!!」

「はいはい、唸らない唸らない」


 もう玉依さん!

 本当にこの人は人をおちょくって!



「でも本当に考えておいた方がいいですよ?正直言って焔君は危ないの」

「ご主人が、危ない?」

「ええ、焔君は危ないんですよ。私から見ていると焔君は崖っぷちにいつも立っているようなものです、そしていつでも

その崖から自ら飛び降りそうでもある………そんな危険性をあの強さの陰にいつでも持っている」

「……………」


 玉依さんはさっき茶化してきた時とはまた違う、ひどく物悲しげな表情を浮かべながら続けます。


「だから、あなたが焔君を繋ぎとめる“命綱”になってあげて。私じゃ焔君は警戒して“命綱”を結べない、フィーちゃんじゃ結べても緩過ぎてすぐに解けてしまう。……あなたしか、いないのよ」

「玉依さん………」

「さっきも言ったように焔君はいつでも跳び下りかねない、だから結ぶのなら早め早めのほうがいいんですよ」

「しかし……」

「私が無理を言っているのはわかる、そして恵ちゃんがこの話を理解しきれていないことも。だけれど焔君は私達を大事に思っている、そしてもし焔君が跳び下りるのならば原因は間違いなくそれです……」


 真面目な話、ですが。

 私には少し難しすぎます。

 玉依さんもそれは見抜いているようで。


「ちょっと難しかったですね。私ももうそろそろ戻らなきゃいけませんし最後に一つだけ言っておきます」


 玉依さんは立ち上がり部屋から出ていく寸前でそう言ってきました。



「『自分の気持ちに嘘をついてまで現状を維持しても最終的に後悔するのは自分』だそうですよ?」

「……………」

「それじゃあまた今度、なるべく早く決着をつけないと………そろそろ終わってしまいますよ?」



 その言葉を最後に玉依さんは部屋から出ていきました。

 私は部屋の中で一人、今までの事や今の事、自分やご主人のことを延々と考えていました。

 それでも今は答えは出そうにありませんが、今はきっとそれでもいいのでしょう。

 玉依さんはそこまで見透かしているのでしょうから………

 恵ちゃんの事なのでこんなこと言われると答えは一つしか出せなさそうです。

 それにしても焔君慕われていますね。


7/7 誤字訂正 救急箱さん報告ありがとうございました。

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