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第六十七話 神になろうとした人間、魔王にされた人間

「よう、最近ずいぶんと調子に乗っているみたいじゃないか。身の程をわきまえない人の子が」

「君が近頃有名な魔王か、そっちも自分専用の島なんか作って。生意気な」


 最初の挨拶をにこやかに交わし戦闘準備を整える。


「ところでそこにいる……男の子と女の子はお前の連れか?子供連れとは中々洒落が効いてるじゃないか」

「ははっ確かに子供だな。だが少なくともお前の手駒よりも使える奴らだ」

「それは楽しみだ。……お客さまだ!お前ら存分にもてなしてやれ!」



 天候(笑)が周りに向かってそう言った。

 すると人ではない者たち。

 人と魔物とのハイブリッド達だ。

 ……と言っても何か妙だな、ハイブリッド達には男と女がいるはずだが今出てきたのは男だけだ。

 何やら臭うな。


「じゃあ予定通り二人はそいつらを頼む、俺はこいつを潰すから。……わかっているよな?」

「ええ、わかっていますとも」

「なるべく、ですね」

「じゃあ頼んだぞ。あと俺の攻撃に巻き込まれないようにしろよ、特にタマルに関しては命の保障が出来んからな」


 フィーなら死んでも蘇生が出来るがタマルは俺の眷属じゃないからなぁ。

 とばっちりで死ぬ可能性が高い。


 二人はその他雑多の皆さんを引き連れてこの場を離れていく。

 俺はフィー達が十分離れたのを確認してから天(笑)に話しかける。



「それじゃあ俺たちも始めるか?最近暇だったからな、お前の一発芸でも見せてくれよ」

「そうだな、俺もさっさと目の前の生意気なガキを消しておきたい。外に出ろ」



 (笑)が外に出ていく。

 俺も一緒に外に出ていく。

 今まではあの()がいた家の中にいたんだ。



「さて、待っててやるから一発撃ってこい。それでどのぐらいの力で相手してやるか決めるから」

「いいだろう、一発で消し飛ばしてやる」


 天候云々が何やらぶつぶつ呟きはじめた。

 詠唱か、にしても首にぶら下がっている石がぼんやりと光っているのが気になる。


 そういやこいつは確か領主と呼ばれたっけ?

 やっぱり身なりはそれなりにいい。

 服装は装飾が施されているし指には宝石が付いた指輪、首は今はぼんやりと光を放っている石がぶら下がっている。

 俺が普段学生服なことを考えるとこの二人が勝負しているというのはやっぱりおかしな絵面だな。



「…………これでお前はお終いだ、神への懺悔は済ませたか?」

「そうだな、今度暇なときにでも考えておくよ」

「そうか、ならば死ね」


 みるみる空に暗雲が満ち、今にも雨が降りだしそうになる。

 よく見るとここら一帯だけに雲はあるみたいだ、どうやら天候云々は本当だったみたいだな。

 疑ってたわけじゃないが。

 念のためにもう一回言っておく、疑ってたわけじゃないが。


 <カッ!ドゴォン!>


 空が一瞬光り、次の瞬間俺に向かって雷が落ちてきた。


「うお!」


 あまりにもいきなりだったので驚いてしまう。

 てか眩しい!

 光に包まれているような状態だからとてもじゃないが目を開けたもんじゃない、目がつぶれる。

 だがそれだけだ。



「……………」

「どうした?そんなに目を見開いて。まるで幽霊でも見るような目じゃないか」


 服がちょっと焦げてしまった。

 変えの服まだあったっけな?

 憶えてねぇや、帰ってから考えよう。


 さて、固まっている(笑)さんに話しかけてやるとしよう。


「どうしたお山の大将、俺を一撃で消し炭にしてやるんじゃなかったのか?それとも手加減してくれたのか?敵に情けを掛けるとは随分と優しいんだな、俺とは大違いだ」

「おい!お前ら!こいつを殺せ!」

「残念ながらお仲間は来れませんよー」

「フィーさん怖かった……」


 二人が戻ってきた。

 フィーが血まみれでタマルが死体を引き連れていないところを見るとタマルがしくじってフィーがその分頑張ったみたいだな。

 初めての実戦はこんなものか。


「おお、戻ってきたのか。それでちゃんと生きているんだろうな?」

「ええ、誰一人殺してはいませんよ」

「うう………」

「タマル君が死にそうになりましたがねー」


 ……おいおい。

 まあ生きていたんだから良しとしよう。


「な、なんなんだよお前ら!あいつらは人間とは構造も違う!弱点も違う!そんな連中を全員殺さずに無効化なんて出来るわけないだろ!」

「…残念ながらこいつは人じゃないんでな」

「なぁ!!」

「こいつは“精霊”、人のそれよりも魔物の方が近い存在だ。人なら不可能でも魔物に近い存在のこいつなら相手がどんなものなのか理解しやすい」

「精霊……だと?なんでそんなやつがお前の言いなりに……!」

「あぁん?そんなもん決まっているだろ?」


 さぁ、ここで決めるぞ!


「俺が魔王だからだ」


 決まった!

 たぶん今決まった!


 天候云々は足から崩れ落ちて膝をついた。

 それで俺はそいつに近づいていく。


「ひぃ!」

「おいおい、逃げるのか?逃げるにしてももっと速く逃げないと捕まえちまうぞ?」


 立てない状態のまま腕を使って少しずつ後ろに下がっていくそいつに俺はゆっくりと、しかし確実に近づいていく。


「来るな!こっちに来るんじゃない!」


 そいつが木にぶつかった。

 そこで俺は一回足を止め、上を向く。


「【イクスプローション】」


 <ドゴォォォォォン>



 俺たちの頭上で巨大な爆発が起きる。

 そして雲はすべて吹き飛ばされ、青空が顔を出した。

 


「……………!、!」

「さて、俺らに喧嘩を売ったことを後悔する時間だ。懺悔はもう済ませたか?俺は今から時間を取ってやるほど優しくはないんでな」


 俺は再び口をパクパクさせている天候云々に近づいていく。

 もう動く気配すら見せない。

 その眼にはもう俺すら映ってないように見えた。


「じゃあな、消えて無くなれ。【業炎】」

「あ……ああ……」


 もう感覚すら手放したのか。

 無様だな。



「フィー、あいつらのところに案内してくれ」

「わかりました」

「うう……」

「……タマルの様子がおかしいのはどうしてだ?」

「魔力の使いすぎですね、今は鬱状態の一歩手前と言ったところでしょうか?」


 …計画はご利用的に。

 眷属じゃないから俺からの援助がないもんなぁ。

 むろん眷属にする気はないが。


===============================



「…全員ちゃんと生きているみたいだな、何人か危なさそうな奴もいるが」


 これはひどいな、怖い怖い。

 ここら一帯に動けないぐらい弱っているハイブリッド達が横たわっている。

 死屍累々とはこのことなのか?

 恐ろしや恐ろしや。


「一人は意識もちゃんとしている状態で残しておきましたよ、褒めてくださいな」


 フィーが胸を張って見せる。

 今思ったが俺の周りにいる奴らって胸がないんだよな。

 ひんぬー派の人は大歓喜だな、俺はどっちでもいいんだが。

 本当にどうでもいいな。

 あとそこの奴らひとまず落ち着け、そしてちゃんと座れ。


 取りあえずフィーの頭を撫でてやる。


「で、誰がその意識があるやつなんだ?」

「はふぅ……あそこで木にもたれ掛っている人です」


 満足そうなフィーは俺たちから少し離れたところにいる一人を指さす。

 俺はフィーたちをその場に残してそいつのところに行った。

 タマルはやっと立っている状態だ。



「よう、最初に言っておくがあいつは俺が始末した。だからもう俺たちに刃向う理由はないぞ」

「…ははっ全てお見通しか」

「お前らが今はその姿になったことを悔やんでいることを知っているからな、わざわざ姿を見せる必要もない」


 人が来たなら隠れるだろうからな。

 恥ずかしい見た目を人に見せたがる奴は露出狂ぐらいなもんだ。


「…殺せ、今さら生きようという気も起きない」

「ならなぜ今まで生きてきていた?死ぬ気ならあいつに従う必要もなかっただろうに」

「ここにいるのが男勢だけだと気が付いていたか?」

「………なるほど、女の方は人質にされていたのか」


 日本でも昔似たようなことをしていたよな。

 江戸時代にそんなことをやってたよな。


「そいつらはどこにいるんだ?あいつはもういない、救出することも可能だ」

「…だが俺たちは生きていける場所がない。あいつがいなくなった今この場所も誰かがやってくるだろう、そうしたら俺たちは住めなくなる」

「…お前たちはもとの姿に戻りたいか?と聞かれたらどうする?」


 この問いにこいつはすごい反応を示した。

 今まで俯きぎみだったのだがいきなりすごい勢いで顔を上げた。


「当然戻りたいに決まっているだろう!それこそ何をしてもだ!」

「何をしても、か。なら命を賭ける覚悟はあるよな?」

「当然だ。……何が言いたい」

「死ぬ可能性があるがもしかしたら元の体に戻れるかもしれない、その可能性に賭けてみるかと聞いたんだ。勿論元の体に戻れる可能性は限りなくゼロに近い、もしかしたらゼロなのかも知れない。それでも賭けてみるかと訊いたんだ」


 何とか人間の部分と魔物の部分を分離できれば可能かもしれない。

 しかしそれは当然今の体を分解するということだ、そんなことをして生きていられる保障はない。

 普通は無理だ、だが俺やニュクスの知識があれば可能かもしれない。

 今わかっているのはもしこれをやるのならば出来るにしても出来ないにしても死体の山が出来上がるということだ。


「…わかった、俺らの命で子供たちが救えるのならば安いものだろう。今は皆気絶しているみたいだがきっと皆も了承してくれるだろう」

「…なら俺もやるべきことは一つだな。念のために確認しておく、死体の山を築くことになるがそれでもいいのか?」

「0.1パーセントでも可能性があるのなら、だ」


 こいつの目を見る限り本気のようだ。

 そして自分が犠牲になることも容認している。

 ここまで言っておいてなんだが強い眼差しすぎてちょっと引く。


「わかった、おそらく想像を遥かに絶する苦しみが待っているだろう。それでも進むと言ったお前なら信用できる。俺はお前たちの体が人間に戻れるように努力することをこの場で誓おう」


 静かにこいつが目で感謝を伝えてきた。

 もう覚悟を決めるしかないな。

 暫くはこれで時間が潰れそうだ、その間事務仕事は玉依さんにやってもらおう。

 小言や後での要求が恐ろしいが頼むしかないだろうな。



「フィー!こいつらも一回ダンジョンに連れていくことになった」

「ええ!?こんなにたくさん入るスペース無いですよ!?」

「ないなら作ればいいんだ」

「そういうことでしたか、ならいいんじゃないですか?疲れるのはマスターだけですし」


 おいおい、今冷たい言葉が聞こえたぞ。

 いつもの事だから気にしない。


「一回俺は戻ってお前らが研究の間住むところを作ってくる。すぐに戻ってくるからそのまま……いや、出来れば女達も集めて説明をしておいてくれ」


 頷いたのでフィーたちを連れてダンジョンに一回転移する。

 そのあと実験場の奥に新しく居住スペースと作って玉依さんに事務仕事を頼んでニュクスにも協力を頼んだあと再び転移して戻ってきた。

 その時にはもう皆起きていて説明も終わっていた、どうやら全員納得していたみたいだ。

 女勢は本心は仲間を犠牲にしてまでと考えているみたいだが男勢は皆その犠牲になる覚悟もしているようだな。

 何にしてもやることは一つ、俺はこいつらが人間に戻れるようにするだけだ。


 そして全員を転移させ、俺も向こうに転移する。

 焔君無双の回

 力を持った者は調子にのり、そしてさらに強い力を持った人に消されるのです。

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