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第六十二話 エルフ族の姫

 久しぶりの姫さんです。

 今回は鬱ってしまっている姫さんを立ち直らせる回になりますのでちょっとシリアス入ります。

「姫さんに会いたいのだが、会えるか?」

「まだ姫様は気分が優れないようですので……」

「わかった、ならば無理やりにでも会う」

「え?………痛い!」

「それじゃあ謁見と行こうか」


===============================


「よう、元気にしていたか?」

「……焔の魔王殿ですか、私を嘲笑いにでも?」


 姫さんは膝を抱えて床の上にうずくまっていた。


 見事に病んでいるな、重病だ。

 確かに親の仇だと思っていたやつは一番状況を愁いていた奴だったし、信頼していた人物は本当の親の仇だったんだからな。

 さらに自分はその仇にいいように操られて戦争まで起こした始末。

 これはこのぐらい凹んでなきゃ逆に侮蔑されるぐらいの失態だよな。


 しかし仮にも一族のトップが長い間凹んでいることは許されることではない。

 失態を起こしたのならばそれを超える結果を出せるように頑張るべきだ。

 それが皆を率いるものの責任というものだ。



「そうだな、今のお前は嘲笑う価値すらないと言っておこう」

「そう。私にとっては今何よりもきつい言葉ですね」

「ところで俺が会いに来た相手を知らないか?」

「わざわざこの場所に来たという事は私に会いに来たのではないの?」



 姫さんが虚ろな目でこっちを見てくる。



「いや、俺は“エルフの現族長であるエルフの姫君”に会いに来たんだ、お前じゃない」

「何を言って―」

「お前は族長じゃない、その資格が今のお前にはない。お前じゃあ役者不足なんだよ」



 トップである以上立ち止まることは許されない。

 何かやってしまって後退することはあるかもしれないがそれでも歩みを止めてはいけない。

 責任を感じている暇があるのなら少しでも償いをするために前に進め。

 後退した分を打ち消せるぐらい前に進め。



「ふっそんな私を皆は無能だと思ってるのでしょうな。無能な私はどうすればいい?答えを教えてくれないか?焔の魔王殿」

「残念ながら俺は答えを持ってはいないんだ、だがその答えを教えてくれる奴らがいるじゃないか。お前も知っている奴らだ」

「それはいったい……」

「それじゃあそいつらに答えを聞かせてもらうとしようか、今から回線を繋ぐぞ」



 俺は手元に用意しておいた機械を起動させる。

 そして姫さんを復活させるために用意した奴らに準備はいいかと確認した、どうやら大丈夫みたいだ。



「ほら、この通信の先にいるやつがお前の求めている答えを知っている」

「……はい、私です」



 姫さんが恐る恐る通信機を俺から受け取る。

 そして相手に話しかけた。


『姫様…ですよね?あの出来事からずっと部屋に籠りっぱなしでしたので皆心配していたのですよ』

「心配?ふふっどうして私なんかを?今代わりにやってもらっている彼のほうがよっぽどいいじゃない」

『姫様、そんなことを言わないでください。確かにあなたは操られていいようにされていました。しかし誰だって肉親の仇となれば冷静になることなど不可能というものです。そのことに責任を感じておられているというのならば止めてください』



 俺が言った答えを知っている者とはエルフの民の事だ。


 王として大切なのは何かを今の姫さんは知る必要がある。

 そしてそれは俺は民だと思う。


 民なくして王無し。

 王とは民をまとめ、従え、導くものだ。

 ゆえに民がいない王は王とは呼ぶことは出来ない。


 そして今の姫さんは自分が犯した失敗に目を奪われてそのことを忘れている。

 王が盲目になり進むことができないのならば民は動くことが出来ず静かに死を待つしかないのだ。


 そして王ならば自分が沢山の人に支えられてその位置に立っていられることを忘れてはいけない。

 王は民の上に立つのではなく、民の下に立つことを心得よ。

 昔の人はそんなことを言ったそうだ。



「私はまんまと敵の策略に嵌められて皆を苦しませた。私に皆の先頭に立つ資格なんかない」

『そういわないでください。確かにあなたは戦争を起こしました、それは変えることはできません。ですから前を向いてください、そして前にいる人たちを見てください。あなたは一人で抱え込み過ぎなのですよ、あなたの母君である前王女様もすべて一人で解決なんて出来ていませんでした』

「しかし……」

『あなたは一人ですべて背負い込もうとしすぎなのです。完璧ではないから助け合う、それが重要なのです』

「しかし!」

「そこまでだ」



 姫さんが暴発しそうだからそこで俺がストップをかける。

 しっかし俺が台本を用意したとはいえ大した奴だ。

 中々の演技だった、錯乱状態の姫さんにくらわすには十分すぎるほどにな。

 ここからは俺が仕上げる。



「答えはもう教えてもらったな?お前がこれからどうすればいいのかも」

「私にはもはや資格が……」

「資格がないのなら資格を手に入れればいい、それにお前はもうその資格を手に入れていたじゃないか」

「?」


「王は民に認められて初めて王と名乗れるんだ」

「私は大きな失敗を犯した、皆私を認めてくれているはずが……」

「認めているからあんなに心配してくれていたし復活を待ってくれていたんじゃないか。復活を望んていない相手をわざわざ励ますか?」

「……………」



「お前は十分民には認められていたんだよ。だからこそ心配してもらえた、だからこそこうすればいいと教えてもらえた、だからこそ手伝おうと言ってもらえた」

「……………」

「お前は自分に王の資格がないと言った、俺もさっきのお前には王の資格がないと言った。さっきのお前は何も知らない赤ん坊みたいなものだったからな。今なら見えているものがあるだろう?」

「見えているもの?……」

「あるだろう?」


 姫さんの虚ろだった目に軽い光が戻る。

 とほぼ同時に姫さんの目から大粒の涙が零れ落ちる。


 ようやく見えたか、これでもう大丈夫だろう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「落ち着いたか?」

「ええ、もう大丈夫です。それで私に何の用だったのですか?」


 俺は姫さんが泣き止むのを静かに待って泣き止んだのを確認してから声を掛けた。


「ああ、実は俺が島を作ってな、そこに住まないかと誘いに来たんだ。ちなみにドワーフの連中にはすでに声を掛けた、向こうは姫さんの決定しだいだそうだ」

「わかりました、ですがこれに関しては私の意見だけでは決めかねますので皆にも聞いてみます。返答は後日にさせてください」


 完全に復活したな。

 これならもう下手な失敗はせずに一族を引っ張っていけるだろう。


「そうだな、元気になった姫さんを皆に見せてくるといい。返事は今度でいいぞ、それに断ってくれても構わない」

「今日はありがとうございました、なるべく良い返事を返せるように努力します」

「おう!また今度な」


 俺はダンジョンに転移で戻るとしよう。

 これでエルフもそのうち返事をくれるだろう。

 他にどこか魔族で声かけてないのいたっけな?

 久しぶりに長い連続した会話をした気がする。

 にしてもガルーたちぇ………

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