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第五十八話 引っ越し準備

 この間の焔君の失敗の回収回です。

『それでは次のニュースです――』


「玉依よ、わらわはそのテレビで見たいものがあるのじゃが」

「私がニュースを見ていますよー」

「だからチャンネルを変えてほしいのじゃ」

「嫌ですね」


 玉依さんとニュクスがいつものようにテレビで争っている。

 いつも通りだとニュクスが見事に言いくるめられて玉依さんがニュースを見終わるまで待つことになる。



「…ん?あ。ちょっと焔ちゃん、こっち来てこのニュースみてくださいな」

「なんだ?面白いニュースでもやっていたのか?」

『最近現れた“魔王”についての特集です。つい先ほど、政府が魔王の正体を特定したとの発表をしました。その正体は――』


 ……あれ?


 テレビは淡々と事実を告げている。

 そしてそこには俺の名前と顔写真があった。





 <プルルルルルルルル、プルルルルルルルル>


『はい、こっちは○○放送局。魔王についてのお問い合わせで?』

「ああ、全くもってその通りだ。あの写真は写真写りが悪いから取り替えてくれ。あと勝手に実名出すんじゃねぇよ」

『と言われましても政府の方から配布された顔写真と実名を出して放送するように言われているんです』

「マスコミは国家権力には屈しないんじゃないのか?」

『時と場合によります』


 だ、そうです。

 都合のよいことで。


「じゃあせめてその写真はやめてくれ」

『他の写真は渡されていないので』

「じゃあもういいや、じゃあな」



 全く、話が通じない奴だ。

 ……じゃなくて!



「どうすっか、正体ばれちまったしいろいろと厄介なことになったな…てかどうしてばれたんだ?」


 今までで何かあったのならもうとっくにばれていてもおかしくない。

 と、いうことは最近やっちまったということだ。

 何かやっちまってたかな?

 ……あ


 最近の記憶を辿ると確かにあった。

 あのタマルと会う前、あの討伐隊と話をしたことだ。


 今まではアルマや電話など実際に俺自身が姿を現していなかったんだ。

 だがあの時は俺が直々に姿を現して話していたんだ、しかも魔物について詳しく。


 きっとそのせいだろうな。



『それでは次のニュースです、日本への外国からの風あたりが強くなってきたそうです』


 ん?

 今度はなんだ?


『日本は魔王を匿っている、実際にまだ討伐できていないのと我らの増援を受け付けないのが証拠だということです』




 なるほど、一回だけ外人どもが来たがそれっきり来なかったのはそういうわけなのか。

 って違うだろうな。


 たぶん他の理由があるのだろうが俺が気にすることじゃないだろう。



「でもこれはある意味いい機会か、ちょっと話をしに行ってみよう」

「またお出かけですか、今回は何日ぐらいを予定しているのですか?」

「何日もかかるような外出はあんまりしないさ、今回は本当にちょっと色んなことを人と話してくるだけさ」

「戦争しちゃ駄目ですよ?」

「向こうが仕掛けて来なかったら考える」



 恵を少し安心させて出発の準備をする。

 準備するものは己の肉体と交渉のための脅し文句。

 あとはどんなことがあっても引かない度胸!



「じゃあ行ってくらー」

「ご主人、いってらっしゃい」


 それじゃ、転移して今回の話し相手のところに行きますか。



=========================================



「やっほー。しばらくぶりだな、元気だったか?」

「……また貴様か、今日は何の用だ?貴様のせいで今忙しいのだが」

「そのことについてなんだが……ちょうどいい機会だからな、引っ越そうと思うんだ」

「そうしてくれるならこっちとしては助かるのだが……どこに引っ越す気だ?」

「今日はそれについて話し合いに来たんだ」


 そう、俺はこの国のトップに再び会いに来たんだ。

 話し合いの内容は他国が来なかった理由とダンジョンの引っ越し先、あとはテレビに出てた俺の顔写真についてだ。



「俺としては太平洋の真ん中あたりに島を作ってそこに住もうと思っている。しかし何分どこに作ってよいものか迷っていてな、こういうのはそっちが詳しいだろう?」

「……島を作るってどういうつもりだ?現代の技術ではそんなものは不可能なだが……」

「俺ならできる」


 この言葉に向こうさんは呆れたような顔になる。


「いくら人間にはできないことができると言ったってこちらにもいろいろと都合がある。その方法が我々に危害を及ぼすようならば直ちに対処せざるをえないのだ」

「うーん、そういわれると微妙だな。まあその点は後で玉依さんと相談するか」

「少し前にネットで騒がれていた魔王がとある神社の娘さんを攫ったというのは本当だったのか?」


 相手がちょっと驚いた顔をして訊いてくる。

 こちらとしては今からでも帰ってくれたほうが楽なんだがな……


 そんな俺の心境を察してくれたのかちょっと同情したような顔になった。



「その、あの、大変なんだな」

「慰めてくれるな、泣きたくなるから」



 嫌われているはずの相手に同情されるって本当に惨めになるから。

 本当に惨めだから。



「…他の話に移ってもいいか?」

「お、おう。ある程度なら答えてやろう」



 意外とトップが優しい件。

 いい人なのか?

 まあ俺が嫌われているのは変わりはなさそうだが。


 だって地味に俺を狙っている奴らいるし。

 具体的に何を狙っているかというと俺の命を。



「俺の引っ越し先は後で話すとしてだ、今日は他にも話しておきたいことがあるんだ」

「一体それはなんだ?」

「決まっているだろう?テレビに出ていた俺の顔写真!なんでわざわざ写りが悪い物を選んだんだ!」

「それは自分の親に言ってくれ。提供してくれたのはそっちの親御さんなんだからな」



 …あんの馬鹿どもめが。

 俺が嫌いだからと言ってもあれはないだろうあれは。

 今度会ったら死なない程度に炙ってやる……


「そう怒るな、煙が体から出ているぞ」

「おっと、これは失礼。それじゃあ真面目な方の話をしようか。一回は他国の奴がダンジョンに来たんだがそれっきり来なかったんだが……何故だ?」

「来てほしかったのか?」

「たくさん人が来るのは喜ばしいことだ、なんて言ったってそのためにダンジョンを作ったんだから…な?」


 あれ?そういえば俺ってどうしてダンジョンを作ったんだっけ?

 確かニュクスに言われて理由を訊いたら……あれ?


 秘密って言われてそのまま何もわからないまま作り出して……本当にあれ?

 そもそも俺ダンジョンを作る理由を訊いたっけ?

 もういいや、考えるの面倒臭い。



「それで何故来てないんだ?」

「それに関してはこちらの都合だ。国と国との問題だからな」


 何となくは察しがついた。


 きっとダンジョンで死んだ奴らの死んだ理由とかを押し付けられたんだろう。

 俺が気にすることはないな。



「じゃあ詳しくは聞かんよ。それじゃあ俺の引っ越し先の話に話題を戻そうか。取りあえず場所を決めよう、そのあとはこっちが何とかする」

「じゃあこの辺ならいいんじゃないか?しかし陸地の規模が分からん以上は何ともいえない」

「一応町がいくつか入るぐらいを想定している、いろいろとやることもあるからな」


 具体的には町が七つは入るぐらい。

 七つの町のうち一つは俺らのダンジョンがある町、そのほかは魔族の種族ごとに町を一つずつ。

 一つや二つは人間の分も作っておきたいな。

 そう考えると余裕をもって九つぐらいは欲しいか。


 その町の規模を考えると結構大きくなるな。

 やはり大規模な出来事になるだろう。

 そうなるとなると場所も選ばないと大変なことになるだろう。


「ふむ…仮に大きさは四国ぐらいと仮定しておこう、ならばこの海域ならばどこの国にも属さないからちょうどよいのではないか?」

「ん?どこだ?って本当にど真ん中だな、でもここなら丁度いいか。じゃあひとまずここに島を作るという仮定で話を進めるぞ。それじゃあ今度はこの島での各国での規定だが―――」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ただいまー」

「ご主人、お帰りなさい。意外と早かったですね」

「ただ話をしに行っただけだからな。あ、みんなに発表があるから聞いてくれ。大事なことだから言っておかないと後々困るからな」


 一斉にこっちを向く。

 タマルも一緒にこっちを向いている。


 正直タマルには理解しきれない内容だと思うし害もないだろうから別に聞いていないくてもいいんだけどな。

 みんなに足並みをそろえようとしてくれているんだから好ましいことだが。


 みんな俺に注目したし話始めるとしよう。 



「近々ダンジョンの入り口の場所を変更しようと思うんだ。それでこれがその計画書、各々後で詳しく見ておいてくれ。特にフィーと恵とニュクス、お前ら三人にはやってもらうことがあるから内容を頭に叩き込んでおいてくれ」


 そう言って向こうで作成してきた計画書をいつも食事をしているテーブルの上に叩き付ける。

 みんなこっちに来てその計画書の内容を見始める。



「大切なところだけ掻い摘んで説明するぞ。良く聞いてくれ」


 再びみんながこっちに注目する。


「俺らはここ、日本を離れて太平洋の真ん中に島を作ってそこに住むことになった。島の作る方法は俺が考えてきたから後で計画書を読んでくれ。そして今回の計画には日本の政府がサポートをある程度はしてくれることになったがそれは無視してもらって構わない。なお、この計画を実行に移すのは一週間後だ。そこで今大事なのはこの地からお別れしなくてはいけなくなったと言うことだ、何かやりたいことややり残したことがあるのなら俺に言うか自分で外に出てやってくれて構わない。俺らが引っ越すまでの準備期間は向こうは俺らに手を出せないことになっている。以上だ、何か質問は?」


 玉依さんが手を挙げる。


「家の神社とその島を繫げたいのですが……可能ですか?」

「一度ダンジョンを経由すれば可能だ、時間はかかるがそれでもいいならやっておく」


 なんだかんだ言って玉依さん実家とつながりは保っていたいのな。

 繋がりを保っておきたいのは母親だけなのだろうが。

 まあいいよな。



「そういうのなら恵は何かあるか?いつでも社長と会えるようにすることも可能だぞ?」

「いえ、それはやめてください」

「どうしてだ?」

「実は普段はご主人と会ったときのように淡々としているのですが私には甘いのですよ、ですからいつでも私と会えるようにでもしたら……ああ恐ろしい」



 ああ、そういうことか。

 そういえば幼い時から育てていたやつとかいたもんな。

 さらに言えば簡単に遊園地なんかにただで入れてくれたこととか。

 あの人身内には優しいのな。



「フィーは……裏山に繫げておけばそれでいいな」

「はい!」


 フィーは何かあるとあの裏山に行っている。

 自分が生まれた場所でもあるしいろいろとあるのだろう。

 ちょっと前に聞いた話では新しいスキルの開発であの裏山に行っていたらしいし何か合うのかもしれないな。

 俺にはよくわからんが。


「タマルは特にはなさそうだしひとまずこの話題は終わりだ。さっき言った三人は計画書に書いてある自分の役割をしっかり憶えておいてくれ、じゃないと引っ越しできないからな。あと引っ越し先の場所までは政府が船を出してくれることになっているからそこの心配はしなくていい。それじゃ、各々自由にしていいぞ」

 ちなみにこの島を作る方法というのがなかなかぶっ飛んでいて……

 やっぱり焔君はやることの桁が違いますね。


 あ、トップが協力的なのは早いところ焔君を追い出さないと日本が危ないからです。

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