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第五十七話 お茶でも一緒に

 今回は再び新鳥さん登場です。

 何気に新鳥さんは顔が広いようで、下手すればニュクス以上の万能キャラになってしまうかも……


 <ピンポーン>


「誰だ?」

「焔、今の音はなんじゃ?」

「俺の家のインターホンの音。あっちでならしたらこっちでなるようになってるんだ」

「どうしてそのようなことを?」

「表じゃあ一応まだただの半不登校の学生なんだ、家に訪ねてくる奴もいるし出ないと不自然に思われるだろ」


 まだ俺が魔王だと外の世界だとばれていない…はず。

 もしも何かやっちまっているのならそろそろばれているかもしれないが。

 どちらにしてもまだ大丈夫なはず、もしばれていてもそれならなんかしらの反応があってもおかしくないはずだからな。


「それで誰が来たんだが……ってなんだ、この人か。ニュクス、ちょっと出かけてくるからいつも通りにしていろよ」

「誰が来たのじゃ?」

「それは…お前に教えると面倒臭いことになるからやめた」



 ニュクスが後ろの方で何か言っているが無視する。

 それじゃあちょっくら行ってくるか。




「……何の用だ?新鳥さん」

「あら、ダメもとだったのに。会うことができたのだからいいけれど」

「…どうせ話があるとかだろ?残念ながら俺はもうあんたのダンジョンに入る気にはなれないぞ」

「それは勿論承知しているわよ、今日は私の行きつけの店に行きましょう?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「それじゃあ焔君はどれにする?奢ってあげるからお金の心配なんてしなくてもいいわよ」

「そういうわけじゃあなくてだな……その…新鳥さんがこんな店を知っているなんでちょっと意外だったんだ」

「あら、心外ね。私はここの店長と仲良しなのよ?」


 新鳥さんが俺を連れてきたのはカフェだった。

 それこそいろんなところにあるありふれたカフェ。

 メニューも普通すぎて何にも面白みがない。

 つまり新鳥さんの行きつけにしては普通すぎ――いやなんでもない。



「えーと、それじゃあコーヒーを」

「種類は?」

「おすすめで」

「そう、じゃあ私はいつものでこの子にはコーヒーを」



 いつの間にかに隣にいたウエイトレスさんに新鳥さんがそう伝える。

 するとそそくさとウエイトレスさんは奥の方に引っ込んでしまった。

 てか今気が付いたけど俺らのほかに客いないし。



「あなたが威圧感を放っているせいよ」



 そういえばそうでした。



「さて、それじゃあちょっとお話しましょうか。取りあえずだけれど何か私に聞きたいことはあるかしら?」

「そうだな…取りあえず俺をここに呼んだ意味を教えてもらおうか」

「それを聞くの?意外ね。特に意味はないわよ、ただ魔神の事やこれからあなたたちがどうするかを聞きたいだけ」



 意味あるじゃん、と思っていても突っ込まない。

 この人怒らせたらいつまたあの狂気状態に入るかわからないからな。

 しかしこっちも聞いておきたいことはいくつかあるか。



「…あー、新鳥さん。これから話し合いを始める前に一つだけ聞いておきたいのだが」

「なぁに?出来ればさっきにそれを言ってくれればよかったのだけれど」

「嫌味を言ってくれるな……白川は今どうしている?きちんと日常に戻っているのか?」

「!」



 ちょっと迫力を出してみる。

 すると俺の狙い通り新鳥さんはちょっと怯んだ。

 がすぐに冷静さを取り戻す。


 むう、やっぱり簡単には喰えない相手だな。


「…大丈夫よ、あの子は今も元気に学校でバカやってるわ」

「ならいい。あんたがあいつを俺を誘い出すためだけに使ったのがいけないんだ」

「そうね、あの時はあなたをあそこに誘い出すのが最優先だったから。…私だって進んであんな手は使わないわ」


 嘘くさいな。

 常習犯としか思えない手際だっただけに信じられない。


 と、ここで頼んだコーヒーが来た。

 ウエイトレスさんは注文の品をテーブルに置くとそそくさと再び奥に引っ込んでいった。



「あの子怖がりなのよ」

「それに加えて、か」

「そうね。…私も質問してもいいかしら?」

「ああ、俺ばっかり質問して悪かったな」


 一言謝って新鳥さんの質問を待つ。

 質問の内容は俺が予想していたものの内の一つだった。



「“魔神”は今どうしているの?」

「今はダンジョンの中でゴロゴロ寝ているよ」

「そう、私の時は積極的に何かやっていたのだけれど……何なのかしらね」



 あの気分屋のことだ、そのぐらいは些細な違いだろう。



「…ちょっとお願いしたのだけれどいいかな?」

「ん?どうしたんだ?」

「ちょっと“魔神”に会ってみたいの、私最近彼に会っていないから」

「は?」

「え?」



 “彼”とはどういうことだ?

 あいつは幼女ではあるが男ではないはずだが。



「…一応一度だけ会っているはずだが、ちょっと確認していいか?」

「何を?」

「最初にあのダンジョンで対話した時、時間が止まっただろ?その時新鳥さんの意識と記憶ってあるのか?」

「あるわよ。仮にも元魔王よ?魔力に対抗するすべはある程度身についているわ」



 あの時に口を開けたまま叫んでいたのはある程度表現としては合っていたのか。



「じゃあ確実に見ているはずなんだが……」

「え?あの時にいたの?私が見たのはあなたとやけに口調がおかしい女の子だけだったわよ?“魔神”なんていなかったじゃない」

「えー……」



 やっぱりそうか。

 まさかとは思ったが……間違いないだろう。


「新鳥さん、その、“魔神”は新鳥さんの時はどんな姿をしていた?」

「姿って……“魔神”は見た目と体格が良い青年の姿でしょ?」



 ……………。


「なるほどな、納得した。そして誤解が生じていることを教えておく」

「え?え?」

「新鳥さんが見たという幼女、それが“魔神”だ」

「え?今なんて?」

「その気持ち悪い口調の幼女が魔神だと言ったんだ」



 新鳥さんの顔が驚きのそれに変わる。


「え?え?どういうこと?ちょっと詳しく説明願えないかしら」

「行った通りの意味だよ、新鳥さんが言っている姿と今の魔神の姿は一致していないと言うことだ」

「……へぇー、そうなんだー」



 あ、やばい。

 新鳥さんが壊れた。

 こういう時はどうすればいいんだっけ?

 そうだ、コーヒー飲んで落ち着けばいいんだ。



「それで俺に聞きたいことはそれだけか?それだけならまだやることが残っているからさっさと帰りたいのだが」

「ん?ああ、今日のところはそれだけよ」

「なら俺はもう帰るぞ。またな、馳走になった」


 俺はコーヒーを飲みほしてから席を立つ。

 そうして店を出ようとしたところで新鳥さんに止められる。


「待ちなさい。今日は付き合ってくれてありがとうね、お礼にあなたにとってすっごくいい情報を上げるわ」

「俺にとってすっごくいい情報?何だそれは」

「聞きたい?」

「もったいぶらないでくれ」

「はいはい、わかったわよ。ちょっとしたいたずら心じゃない」



 新鳥さんがやれやれと言った感じで手をぷらぷらと振る。

 …いらっと来た。


 しかしここで新鳥さんの顔つきが真剣そのものになる。



「あなたが必死になって探している“彼女”の事よ」

「!」


 一体どこでそのことを聞いたのだか。

 その言葉は俺を真剣に聞かせるのには十二分だった。


「…その話題を俺に振るということはどういうことかわかっているのか?」

「わかってるわよ。流石にその反応を見てやっちゃたと思ってしまった私もいるぐらいなんだから」

「なら冗談は言うなよ?このあたりを焼野原にしたいのなら話は別だが」

「わかっているわよ、あなたに喧嘩を売っても勝てる気がしないもの」


「いいからさっさと話せ」

「せっかちさんね、まあいいわ。彼女はこの世界にはいないわ、だからこの世界をいくら探しても見つからないわよ」

「どういうことだ?」

「彼女はこの世界とは別の世界にいるわ、あなたが“あいつ”と呼んでいる者の手によってね。あ、元気にやっているそうだから心配はいらないそうよ」


 元気にやっていたのか、ひとまず安心する。

 しかしすぐに気を引き締める。


「そんなに怖い顔しなくても大丈夫よ、彼女に手なんか出せないから。彼女には今とっても強くなっているんだから」

「強く?改造でもされたのか?」

「さあ?そこまではわからないわ。何せ違う世界の住人と情報交換しているのだから穴が多いのよ」



 この人何やっているんだよ……

 てか違う世界の住人!?

 もしかしたらぐらいには思っていたが本当にあるのか……


「……情報ありがとうな、じゃあな」

「ばいばい、頑張ってね。少しの間会えなさそうだからちょっと急いだのだけれど……この分なら大丈夫そうね」

「新鳥さん、俺はあんたの人脈の広さが分からないよ……」

「長い間生きているといろいろとあるのよ」


 そこで俺は店を出る。

 ちなみに俺が飲んだコーヒーは八百円だった。

 焔君が探している“彼女”。

 個人名こそ出していないものの実は作中のキャラ同士の会話の中なんかでは何回か出てきております。


 あ、別に今作でのキーキャラクターというわけではありません。

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