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第四十七話 山の民と森の民-3

 最初に言っておきます。焔君にはその場の雰囲気とノリででまかせや普段は表に出さない心からの本音を吐き出すことがあります。

 つまり焔君は激情に身を任せることがあります。


「以上です、どうですか?大義は私たちにあると思いますが」


 話の内容は確かに戦争をするには十分だ。

 話をしに行った族長が生首になって帰ってきたら誰だって怒り狂うだろう。


 だが妙だ、おかしな点がいくつかある。



「…聞いた限りだとそうだな。いくつか気になることがあるから質問してもいいか?憶えていないものは憶えてないでいい」


 重要な点を姫さんから引き出せるとは思えないが一応はな、物は試しだ。


「わかりました、私が覚えている範囲でのことなら何でもお話ししましょう」


 あっさり了承を、それでは質問攻めと行きましょうか。



「じゃあ一つ目の質問だ、森に火をつけに来たドワーフは何人ぐらいいた?」

「六~八人ぐらいだったと思います」


 ふむ、森を燃やすにしては随分と少人数で来たものだ。

 俺が結構エルフと会う前に彷徨ったことからこの森は結構広いということが分かる。

 それを八人でやろうなんて馬鹿げてるな、使っていたのがただの火じゃないことはさっきの話でわかったからその火なら少人数でも可能だったということか?


 とりあえず次。 

 ここからはちょっと頭をよぎった可能性を追求する。


「二つ目だ、火事の時に避難したエルフで大人がいないって話していたがそれは何人だ?」

「…それも六~八人だったと思います」

「三つめだ、火事で死んだ子供の中にいなかった奴らの子供はいたか?」

「……!」


 <ダン!>


 俺が三つめの質問をすると姫さんの顔色が急に変わった。

 それと同時に俺の後ろの方から何かを叩いだ音がしたので振り返る


 そこには俺からちょっと離れたところにいるさっき俺が脅した男性とはまた別のやつがそいつの近くにあった木を思いっきり殴っていた。

 そして口を開く。



「一体何を言いたいのですか?その人数の確認というのはつまりは我々の仲間がドワーフに化けてやったことだとでもいうのですか?」


 バカ一名発見。

 なんでこういう奴らはすぐにがあり得ないことを訊きに来るのかね?

 エルフ同士で仲間割れするならもっといい方法が山ほどあるじゃないか。

 この方法を選ぶ必要なんてないわけだ。



「んなことは俺は言ってねぇよ。そして俺が質問しているのは一体何が起きたのかを知るためだ、そしてまだそれはわからない」

「ですからドワーフが我らを殺すために森に火を放った。それが真実で、罰せられるべきもドワーフのはず。どうして姫様が辛い思いをしてそのような下らぬ問答に付き合わねばならぬのですか!」



 こいつも被害者面のやつか、うざってぇなまったく。

 イラッと来たのでブチ切れることにする。


「ああもううるせぇ!うるせぇ!やかましい!お前みたいなのがいるからこの世から戦争はなくならねぇんだよ!」

「なにをいきなり――」

「うるせぇっつってんだろ!被害者面してんじゃねぇよ腹立つなぁ。戦争なんて始めた時点でどっちが正義だなんて存在しねぇんだよ!戦争にあるのは勝つか負けるか、そして勝った方は自分たちのいいように歴史を作り替える。結果どっちが正義だかわかりゃしねぇ」

「「「……………」」」


 周りのやつらは全員黙って俺の言葉を聞いている。

 この辺はきちんとできる連中だな。

 さて、説教の続きだ。


「先にやられたから自分らが正義?まっとうな理由で敵を殺せる?先に何人も殺されたから自分らが被害者?ふざけんじゃねぇ!んなもん戦争が始まればどっちも同じようなもんだ。どっちがたくさん殺した?どっちがたくさん殺された?どっちだって殺したという事実は一緒だ、なのに自分らに罪はねぇって自分を正当化する奴なんてただのクズだ!やるんだったらやったことすべての罪を受け入れる覚悟で臨みやがれ!」

「………だからどうしろと?」


 ここで姫さんが再び口を開く。

 俺は振り向いて姫さんのほうに向く。

 姫さんは俯きながら泣いていた。


「父を殺されて!母も殺されて!それでも笑って相手を許せというのですか!」

「…俺はそんなことは言ってない。許せないのなら仕返しをすればいい、殺した相手が憎いのなら復讐すればいい、俺は止めはしない。」


 姫さんが顔を上げる。


「だが俺が言いたいのはやった後の責任を持て、ということだ。人を殺したのならきちんとその罪を背負え、自分を正当化して罪を認めないまま生きるんじゃない」


 姫さんはまた俯いた。

 しょうがない、ちょっとはこっちも妥協するか。


「………俺はとある女の子の目の前でその子の親友を殺した」

「……………」

「今はその女の子は笑顔で楽しそうに暮らしているが実際のところはわからない、俺は人の心は読めないからな。今でも胸の奥では俺のことを憎んでいて殺そうと企んでいるかもしれない」

「……………」

「それでも俺はその子がなるべく笑顔でいられるように努めようと思う、例えそのせいで俺が殺されたとしても、それは俺が自分の勝手で引き起こした出来事だからだ。それが俺の罪の償いになるとは思っていない、だがそれは俺がやるべきことでやらなければいけないことだ。お前には自分がしたことを一生背負う覚悟があるのかってことだ」

「……………」



 これでもまだだんまりか、ってあいつらの話してたら心配になってきたな。

 玉依さんもいるし大丈夫だとは思うが一度不安になると止まらないんだよな。

 早いところ終わらせて帰りたいがこいつらもちょっといろいろと教えてやらなければいけないみたいだし困ったものだ。



「だんまりなら俺から話すことはもうない、俺は確かめたいことがあるから山に行く。用が終わったら一度戻ってくるから俺が言ったことをよーく考えておいてくれよな。それじゃあな」

「……………」


 姫さんはまだだんまりだ。

 さよならもなしか、悲しいな。

 族長の娘が最低限の礼儀もできないと。


 最後にもう一度だけ姫さんを見てから俺は草原に転移する。

 魔族は気まぐれです。

 その気まぐれがいい方か悪い方かは誰にもわかりません。

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