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第三十九話 魔王としての仕事-2

「やあ、こんにちは。」

「君は誰だ?地元の人間ならここに来るはずがないのだが」


 最初っから敵意むき出しだな。初対面だというのに礼儀がなっていない奴だ。

 ん?もしかしてこれが魔王になった時に言われてた嫌われ者効果?人間には恐怖を抱かせるみたいだが人外には普通に通じるのか、なるほど。


「なあに、用が済んだらすぐに帰るさ。とりあえず君たちのボスに会わせてもらえないか?」

「まずこちらの質問に答えてもらおうか。君は誰だ?」

「俺が誰かなんてどうでもいい、大した問題じゃない。それよりもお前ら吸血鬼のボスに会わせろと言っているんだ」


 目の前の青年の目の色が変わる。比喩じゃなくて本当に、さっきまで青色だったのが金色に変わった。


「それを知っていて挑発してくるとはいい度胸だ、人間」

「おいおい、お前は馬鹿かちょっと考えればわかることをいちいち人に言ってもらわないとわからないのか?お前らが吸血鬼だと知っていても俺が晴れの日に来た意味がわからないのか?俺は雨の日に来ても良かったんだぞ?」


 ここまで言ってやっても目の前の青年の態度は変わらない。本当に馬鹿だこいつ。


「OK、わからないようだから説明してやる。俺はお前ら全員を相手しても勝てるって言ってるんだよ」


 言い切ると同時に青年が襲い掛かってくる。本性を現したな?


「【バーン】」

「うお!!!」


 襲い掛かってきた吸血鬼の攻撃をかわした後に吸血鬼に触れて唱えた。すると触れた部分が燃え出す、すさまじい勢いでだ。同じような内容のスキルでも一つ一つの強さが俺と恵とでは違う。これが魔王とその眷属の圧倒的な違いだ。


「まだやるのか?さっきので消し炭にしておくべきだったな」


 手加減してやったので青年はぎりぎり立つことができたみたいだ。


「貴様………たかが人間風情が我ら吸血鬼を愚弄するか!」

「吸血鬼が高等な種族というわけでもないし俺はただの人間でもない」

「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」


 また跳びかかってくる。右手を突き出して俺の喉をかっ切るつもりだろう。

 俺は今度は避けないで“劫火の鎧”を発動させる。


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「俺は人間じゃない、魔王だ。覚えておけこの吸血鬼風情が」


 まともに俺の“劫火の鎧”に飛び込んだ目の前の吸血鬼は右腕を完全に消し炭にされて呻いている。ざまぁみろだ、このままいたぶってやろうかな?

 と、ここで向こうの方から老人がやってくる。貫録もあるしあいつが族長かな?


「やあ、こんにちは。あんたが吸血鬼の族長か?」

「いかにも、私に話があるそうだな?」

「その通り、それで応じるか?」

「応じよう。その青年みたいになる者を増やしたくはないのでな」


 聞き分けの良いやつみたいだな、安心した。

 もし襲ってくるようならどうやってこの一族を屈服させようか考えあぐねていたところだ。


「いい判断だ、それでどこで話をする?」

「私の家に行こう」

「いいぞ」


 老人の後についていく。もし罠だとしてもこいつら程度なら五秒あれば全滅させられる。



 ==族長の家==


「それでは話を聞こうか、“焔の魔王”どの?」

「なんだ、俺の事を知っていたのか」

「メドゥーサどもが何やら騒いでいましたからね、ここから出られなくとも噂は自然と入ってくるものですから」

「なるほど、人の口に戸は立てられぬとよく言うしな」


 雑談を軽く交えながらの腹の探り合い。こういうのも状況的にはいいのだろうが俺個人としてはまっぴらごめんだね。


「それで単刀直入に聞こう。俺の配下に加わる気はあるか?」

「……本当にそのまま聞いてきましたね。……それは族長の私と言えど種族の者達に訊かねば答えることはできません」

「そうか、じゃあ訊いて来い。俺は今日のところは帰るからそうだな……今日中に答えを出せ、俺は明日に答えを聞きに来る。それとこれは俺の配下になった場合の吸血鬼の処遇について書いた紙だ、これも持って行ってゆっくりと今日話し合うといい。それじゃあな」


 紙を渡して管理人室に転移する。これで吸血鬼どもはどう反応するのかな?服従ならよし、反抗ならアルマの遊び相手程度にはなるだろうからなおよし。明日が楽しみだ。





「ナルシスト」

「かっこつけたがり」

「この変態」

「マスター、ひどい言われようですね」


 上から順に玉依さん、フィー、ニュクス、アルマのセリフだ。アルマ以外に俺を気遣ったセリフがない、当然か。

 で、だ。


「二人は設計はできたのか?」

「できましたよ」

「まだじゃ」


 まあそりゃあできるはずはな……え?


「だからできましたよ。これです」

「仕事が早いな。どれどれ、どんなものができあがったのかな?って案外親切設計だな」


 一撃死トラップがないのは当然だが一個一個のトラップや魔物がそこまできつくないものばかりだ。玉依さんらしくない。


「どこがですか?きちんと全体で見てください」


 全体?見直してみよう。

 ふむふむこの部屋に入ると天井が落ちてくるから急いで駆け抜ける、と先には――って


「何だこの心折設定!配置が悪意しかないぞこれ!」

「ふふふ、焔君みたいに要所要所に強い魔物を設置するだけが難しいダンジョンではないのですよ」


 本当にな。俺の設計は何個かの区分に分けて魔物や罠を設置しているが玉依さんのは一つ一つは大したことは無いが全体を見てみるといきなり化ける。

 本当に玉依さんは才能があるな、狂気さえ感じてくるほどだ。


「玉依さんのはこのままでいいな、後で適当なところに挟み込んでおく。ニュクスはまずはテーマを作ってみたらどうだ?それだけでだいぶ作りやすさが違うぞ」

「ぐぬぬ。テーマは決めてあるのじゃがどうにも活かしきれそに無いのじゃよ。魔物も新しく考えるのは大変でのう。そもそもわらわにダンジョンの設計を任せようなどという者は焔が初めてなのじゃ」


 今のはニュクスが俺以外も魔王にしたことがあるような口ぶりだな。もしそうならそいつらはどうなったのだろうか。

 ……単純に考えるのならニュクスが初期から言っているニュクスの本当の目的で犠牲になったという事だろう。そしてまだニュクスの目的は達成されていないという事は………そうすると俺はともかく恵たちは巻き添えにならないようにしないとな。


「そうか。じゃあ玉依さん、ニュクスのやつの手助けをしてやってくれ」

「わかりました」

「玉依に助けられるとは………屈辱じゃ」

「まだ嫌われているんですか?私」

「そういうわけではないのじゃが………玉依はわらわたちの中で一番弱いからの」

「そうなのですか?」


 いやいや、傍から見ると俺たちの中ではニュクスが一番弱いように見えるぞ。見た目の年齢的な意味で。


「ニュクス、玉依さんが俺たちの中で一番弱いわけじゃないぞ。ステータスを見てみろ、驚くから」

「?、焔がそこまで言うというのなら見てみるとしようかの」


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 神崎玉依(かんざきたまより)

 種族:焔の魔王の眷属

 性別:女

  性格は非常に腹黒。敵には容赦はせずに叩き潰し、そのためには手段を選ばないうえすごく賢いので目をつけた獲物は逃がさない。属性魔法としては光属性系が得意。

 スキル:癒しの光・無情なる裁き・ホーリーアロー・霊降ろし・烈火の鎧

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「…………」

「な?全然弱くないだろう?逆にオーバースペックと言ってもいいほどだぞこれは」


 絶句しているニュクスに俺は話しかける。


「さらに光属性ときた、これまともにやりあったらニュクス苦戦するんじゃないか?」


 ニュクスは俺の言葉が耳に入っていないように固まっている。

 と思ったら次は何かつぶやき始めた。


「………“無情の裁き”はとある神のスキルじゃ。つまりその神が玉依に加護を与えている……」

「あーそういえば玉依さんが巫女やってた神社の神様は“断罪者”とか言ってたな。裁きという内容にも一致するしそういう事か」


 ニュクスの顔つきが変わる。今度は聞こえたのか


「あやつが!まずいのう、非常にまずいことになってしもうた。あやつにはわらわでも勝てぬ」


 ニュクスは“断罪者”と呼ばれている神について心当たりがあるみたいだな。ただ今の“断罪者”かどうかは知らないが。


「“断罪者”の世代交代が行われたともその時に聞いたぞ。だからそこまで怯えなくてもいいんじゃないか?」

「お、おおお怯えてなどおらんぞ!断じて怯えてなとおらぬ!しかし世代交代という事はあやつは隠れたという事か、それはよかった」


 ニュクスは狙ってやっているのかはわからないが嘘がわかりやすいんだよな、こいつの性格的に素だと思うが。


「話は終わりましたか?それでは私が向こうの部屋で魔神さんのダンジョン設計について指南しましょう」

「むう。やむをえんお願いしようかの」

「お願いされましたー。それではテクニックをお教えいたしましょう」


 そう言って二人はニュクスの部屋に入って行った。玉依さんはいったいどんなテクニックをニュクスに仕組む気なのだろうか、気になるな。

 ニュクスに玉依さんのテクが使いこなせるとは到底思えないが。

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