第三十二話 恵の家出-4
目が覚めたところはベッドの上でした。
「う・・・」
「目が覚めましたか!!!」
ガルーが私の顔を覗き込んできます、娘さんも一緒です。
「いやー、なかなか苦しいですねこの呪い。」
おちゃらけてみます、空気が重いので。
「ごめんなさいお姉ちゃん、もっとメルが我慢していれば・・・。」
娘さんはメルという名前なのですね、かわいい名前です。
「気にしないでくださいなメルちゃん、私はこれからやることがあるからね。ねえガルー?」
ガルーに目で言いたいことを伝えます。メルちゃんをここから追い出してくれ、と。
「…メル、お父さんちょっとこのお姉さんと話があるから少し外に出ていなさい。あとでたくさん遊んであげるから。」
「はーい、じゃあまたね、お姉ちゃん!」
「……元気になりましたね、娘さん。」
「しかし君が呪いにかかってしまっては――。」
「ん?何か言いました?」
「え?」
「それじゃあまたおぶってくれませんか?それとも町まで行くのにこの体で歩けというのですか?」
ガルーは私の意図を理解したようですぐに私をおぶって走り出しました。さすが人狼速い速い
--とある島国の町--
<ピンポーン>
「×××××」
人が出てきました、あの子の親ですね。ガルー、うまくやってくださいよ。
「×××××××」
「×××××××××」
「×××××××」
「××××××××××」
……何言っているのかわからない会話って聞いていても暇ですね、眠くなってきました。
「×××××××××」
「××××××」
「××××××××!」
「××××」
ぐー。
「×××××××××××?」
「×××××」
「××××××××」
「×××××××」
ようやく親がどこかに行きました、きっと娘を呼びに行ったんですね。お手柄ですガルー。
「これからメルに呪いをかけた子が表れます、通訳は必要ですか?」
「いいえ、いりません。いままで忘れていましたが魔族ですから言葉など簡単に翻訳できるのでした。」
そういえばそうでした。ご主人がこの間ダンジョン内の看板を魔力を使って日本語以外にも対応させていましたから間違いはないでしょう。
「誰?私に用だなんて。この島で一番美少女の私と話せることを誇りにしなさいよね。」
いかにもみたいな高飛車な子が出てきました。いきなりですが殴り飛ばしてやりたいです。
「こんにちわ。」
にこやかにあいさつします。ガルーには引っ込んでもらいました、警戒されるのはよろしくないので。
「誰よあんた。」
「あなたは私がわからないでしょうね、だけど私はあなたをよく知っていますよ。」
「な、なにを言っているのあなたは。」
「わかりませんか?あの子をあんなに苦しませたのに。…私に見覚えがなくともこの斑点には見覚えがあるでしょう?」
私は黒い笑みと隠していた黒い斑点を見せます。この子の表情が変わります。
「だとするとあなたはなんでここに居るのよ!早くあの子を殺しに戻りなさい!」
「馬鹿ですかあなたは、なぜ私がここに居るのだと思います?」
「なぜって・・・。」
表情がこわばります、察したのでしょう。ここまで言わないと気づかないなんてなんて馬鹿な子。
「気づきました?私は返されたのですよ、あの子からあなたに。呪い返しというものです。」
「え・・・そ、そんな・・・。」
「人を呪わば穴二つ、呪った罪を受けなさい。」
「いやだ!ママ!!」
「もう遅い。」
私にあった斑点は目の前にいるこの子に移りました。この子は魔力が少ないので比較的楽に呪いを渡すことができました。ふう、だいぶ楽になりましたね、肩が軽いです。
「どうしたの!!!あなた!この子に何をしたんですか!!!」
「何もしてません、それがその子に帰るのを見に来たんです。」
「帰る?何を言っているんですか!!!早くこの子を元に戻して!!!」
「無理ですよ、その子は人を呪ったんですから。そしてその呪いがその子に帰って来たのですから。」
「ならばまた返します。」
「無駄です、私が返せないように呪いを強化しましたから。人間じゃ不可能です、人外でもまあ無理でしょうが。」
「この子が誰を呪ったというのです!!!」
あら意外。娘さんがメルちゃんを呪ったことを知らなかったんですね。放任主義ということでしょうか?……そんなことはなさそうですが。
「さっきの人の娘さん、メルちゃんです。その子はメルちゃんの容姿を妬んで死んでしまうような呪いをかけたのですよ。」
「だったら呪いをかけられたその子が死ねばいいんです!!!」
「やれやれ、子が子なら親も親ですか。信賞必罰いう言葉がありましてね。いいことをすれば褒美がもらえる、悪いことをすれば罰が当たる。この子は人を呪うという罪を犯した、だから罰を与えたというわけです。」
日本以外でもこの言葉が通じるのか不安でしたが通じたようです。よかった。
「罰を与えるなど人のしていいことじゃない!!!」
「やっとまともなことを言ってくれましたね、その通りです、人が人に罰を与えるだなんてふざけてる。だから私が与えたのです。人ならざる私がね。」
「な、何を言って・・・。」
「私はここより北の地に降臨した焔の魔王の眷属、人よりかは神に近いものです。」
呪いの子の親は当然、近くにいた人や隠れているガルーも固まっています。
「私がその気になればこの島などすぐに氷に包むことができるのですよ。」
「そ、そんなのハッタリに決まってます!!!」
「あらあら、しょうがない、証拠を見せましょう。」
そう言いつつ道を歩いていた人の一人を氷漬けにします。
「これでも信じませんか?まだまだ行けますよ?」
そう言いながらどんどん道行く人を凍らせてゆきます。
「ひ!」
「理解できました?ちなみにいま凍らせた人たちは罪のない人達ですから警察を呼ぶなりなんなりしてください。それではさようなら。」
ガルーがいる方向を一瞬見た後一人でその場を離れました。
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恵・・・もう恵が主人公でいいんじゃないのかな?
「何を卑屈になっておる、現主人公は焔ではないか。」
「いや、だってさ俺より恵のほうが主人公っぽいぜ、行動とか言動とか。さらに俺より魔王らしいし。」
「しかし主人公は焔じゃ、それは変わりない。主もこの物語は焔が主人公で終わらせるつもりじゃし、さらに別の作品すら考えておるんじゃぞ?つまり・・どういうことかわかるかの?」
「さっぱりわからん。」
ニュクスのメタ発言はよくわかる時とわからない時がある。今回のはさっぱりわからない。
「はぁ、つまり別の主人公象はすでにできていて、主はこのストーリーとも関連性を作るつもりじゃからこれから焔の輝くシーンがきっと来るという事じゃ。」
「なるほど、わからん。とりあえずそろそろ闘技場作ってくる。闘技場は結構作るのに時間がかかりそうだから早めに行動しておいたほうがいいだろう」
「魔力は使い切らんようにするのじゃぞ。」
「わかってる、行ってきます。」
「行ってらっしゃいです、マスター。」
そもそも闘技場をどこに作るのかもすら決めずに俺はダンジョンの外にでた。かっこつけていたのがかえってかっこ悪い。




