第三十一話 恵の家出-3
「嫌です、私は慈善活動家ではないので。」
「しかし!!!」
「……と、思いましたが。」
「!?」
「あなたの必死さに免じて診るだけ見てあげます。ただし治せた場合等価交換として何かもらっていきますよ?」
「あの子の命と引き換えなら喜んで私の命でもなんでも差し出しましょう、こっちです。」
人狼は私の前で道案内をしてくれます。早いです、早すぎます。
「ちょっと待ってくださーい!!!」
そうしてあの時と同じように私はおぶられる羽目になるのでした。
--とある島国の人狼の村--
「この家の中です。」
そう言って案内された家の中には全身黒い斑点が出て苦しそうな少女がいました。
「うう、あぁぁぁぁううううう」
その少女はかなり苦しそうです。まだ幼いというのに可哀想に。顔もよく見たら可愛いですし。
さて、この少女が苦しんでいる原因を人狼に教えましょうか。
「人狼さん」
「この辺りでは私はガルーと呼ばれています、それでなんでしょう」
「この子の症状は病ではありません、呪いです」
それを聞いて人狼さん、あーでもこの村の住民はたぶん全員人狼でしょうね、人狼じゃ区別ができません。とりあえずガルーと呼びましょう。ガルーは表情を硬くしました。
「心当たりがおありで?」
「はい、あります。それもこいつしかいないだろうと断言できるほどのやつが。」
「どんな人ですか?」
「先ほどの私たちがいた村に最近引っ越してきたという家の娘です。私の娘とは一度顔を合わせており、その時に向こうが娘に嫉妬したのですよ。」
「娘さんお綺麗ですもんね、それで続きを。」
「あなたが褒めてくださったように娘はこの島では一番の美少女と言われております、その娘の顔に嫉妬したのですよ、あの娘は。あの娘はここに来る前は町一番の美少女だったそうで容姿も悪くありません、しかし娘に比べると・・・・。」
くだらないプライドですか、後で地獄に行くよりも酷い目にあわせてあげましょう。
「この子は被害者というわけですね。わかりました、治しましょう。」
「しかし先ほどは――」
「私は病でなく呪いと言っただけで治せないとは言ってません。むしろ呪いの方が楽でいいです、より強い呪力で吹き飛ばせばいいだけですから。【コンタクト】」
この子の呪いは強いですからね。私だけの魔力じゃあ対抗できません。ですから連絡を入れて力を貸してもらえるように頼んでみましょう。
『そっちから連絡してくれるとは驚きだぞ、恵。』
「そうですね、ただこの子を救うにはご主人の力が必要ですので。でもご主人のことですから全て最初から見ていたのでしょう?」
『バレテーラ。』
「当然です、あんなにも強い魔物が監視しているのですから。」
ご主人が作って外にはなっているドール型の魔物だと思われる魔力が常に背中にまとわりついているのですよ。正直プレッシャーがすごいです。
『まあいいや。で、要件は?』
「魔力をいただきますね、私の魔力じゃ足りませんから。」
『そんなに強い呪力なのか?』
「呪力は思いの強さですから。人間の嫉妬の強さはとんでもないですよ、特に女性の。」
『あっはっはっはっは。わかった、自由に使え。あとこっちにいつ戻ってきてもいいぞ、こっちは恵を再び迎える準備はできたからな。今恵は悩んでいるがその結果俺と一緒にいることを選んでも何も躊躇うことは無い。当然逆でも、だ。俺は恵の意見を尊重するよ。じゃな、Good luck!!!』
私は勝手に出てきてしまったというのにご主人は優しいですね。もしかしたらただ適当なだけかもしれませんが。
「誰と話していたんだい?」
ガルーさんが質問してきます。
「私のご主人です、この件のために魔力を貸してくれるそうです。」
「君の魔力だけでも足りないほどの呪いなのかい?」
「そうですよ、女の妬み舐めたらだめです。さて、呪術返しを行いますからガルーは出て行ってください。それとも娘さんの今以上に苦しむ姿が見たいですか?」
脅しではありません。呪いは弾こうとすると反発して暴れだしますからね。もう一度言います、脅しではありません。
「……お願いします、娘を救ってください。失礼します。」
「あ、相手のところになんて行ったらだめですよ、相手の子は私が地獄を見せる予定なので大人しく外で待っていてください。」
ガルーが大人しく出ていったのを見て私はさっそくこの娘さんの服を脱がせまて全裸にします。
「ごめんね、これから苦しくなるけどそれを超えれば楽になるから。」
<こくっ>
力なくですが頷いてくれました。それを確認して呪術返しを始めます。
まずは全身を覆う黒い斑点の中でも一番黒く一番禍々しいのをみつけます。これが呪いの核でしょう。次にその斑点に触れ魔力でそれを吸い取り始めます。
「ううううああああああ!!!」
娘さんが絶叫します、家の周りがだいぶ騒がしくなりましたが気にしている暇はありません。次です。
「あなたはこの呪いが憎いか?この呪いをかけた奴が憎いか?」
娘さんに話しかけます。呪いの力は心の強さ、呪いを弾くには呪いをかけたもの以上の強さを持つ心ではね返さないといけません。
「う、ううううに、くい。」
苦しそうな声が聞こえてきます
「憎い、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!私はなぜ苦しまないといけないの!!!なんで私がこんな目に合うの!!私は何も悪くない!!!悪いのはあいつだ!!!私とお父さんの時間を奪ったあいつだ!!!」
うーん、予想以上に迫力がありますね。感情が暴発しています。
「では、“あいつ”に苦しんでほしいと望みますか?」
「願います!!!今は何よりも強く!!!強く強く強く強く願う!!!」
「では“あいつ”に呪いを受け渡しなさい、そうすれば“あいつ”にこの苦しみが何倍にもなっていくだろう。それこそ死ぬまで。」
初めてここで娘さんの目に戸惑いが見えます。ここで拒否されてしまうとすっごく困るのですが。
「あいつは・・・死ぬまでこの苦しみを味わうの?」
「あなたが望むなら。」
「死ぬまでなんて・・・・ひどすぎるよ・・・。」
心清い娘さんです、思わず泣きそうになっていまいました。口調も柔らかくなりましたし。
「今のあなたも、“あいつ”に受け渡さなければ死ぬまで苦しむのですよ?」
「それでも・・・・い、い・・・・・。」
「“あいつ”が憎くはないのですか?」
「憎い、だけど・・・仲良く、なりたかった・・・・・・」
ああ、わかりました。この子は自分で他人を苦しめることができないのです。今のご時世でこれほどの優しさを持ったものがいたとは・・・・しょうがありません、やりたくはなかったのですがやるしかないでしょう。
「………わかりました。この呪い、一時私が貰い受けましょう、そのあとどうするかは私が決めます。」
ここで娘さんが決断しなければ呪いは娘さんに根づいてしまいます。さあ、どうなるか・・・・・!
「あり・・が・・・とう・・・・」
娘さんから黒い斑点が消えます。そして元の綺麗な姿に戻り・・まし・・・・た。
「大丈夫ですか!!!」
意識が飛ぶ直前にこっちに走ってくるガルーと家のすぐ外で不安そうな顔をしているこの村の人たちが見えました。




