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第三十話 恵の家出-2

「アルマ、恵は見つかったか?」

「はい、マスター。日本より南に位置する小さな島にいるようです。迎えに行かせますか?」


 巫女さんのアイデアが出た後俺はすぐに外のドール型に恵を捜索させた。結果はすぐに恵は見つかった、優秀な指揮官もいたし当然と言えば当然だろう。


「どんな様子だった?」

「なにか考え事をしているようです。」


 恵は社長にすら外出場所を教えずに出ていったことが社長に連絡したことで判明した。痴話げんかだと冷やかしてきたが軽く流してやった。


「考え事ねぇ。……少し様子を見よう、恵が答えを出すまで恵には基本干渉はしない。」

「かしこまりました、では監視は継続させるように伝えます。」

「様子は逐一報告するように、緊急時は判断は全てアルマに任せる。行け。」 

「承知しました、失礼します。」


 恵は意外と賢い。そう、意外と。だからその恵が何か悩むようなことがあるのならばそれは恵自身が結論を見つけることができるだろう。もしかしたら恵自身が結論を見つけなければいけない問題かもしれないしな。


「考えてるところ悪いのじゃが焔よ、フィーは何処へ行ったのじゃ?」


 ……あ。


「お仕置き部屋に閉じ込めたままだ・・・」

「ひどいの、それで何時からじゃ?」

「ニュクス達が俺の部屋から出てくる前。」

「はよ出してやれ!フィーが発狂してるやもしれんぞ!」


 それは危ないな。今すぐ出そう。



「…………………」<ガチガチガチガチ>


 フィーを出してやった、予想通りすごく震えている。


「……これに懲りたら二度とあれみたいなことはしないようにな。」


 <こくっこくっこく>

 すごい勢いで頷いている、そんなに怖いのか?お仕置き部屋。


「そういえばフィーには頼みたいことがある、聞いてくれるか?」

「わ、わかりました。何なりと・・・。」


 話してる間も体がすごい震えている、マナーモードですか?


「……第二階層のボスの一体にフィーがなれ、という話だ。」


 一瞬謝るべきか悩んだがやめておく。今謝ったら後々大変なことになりそうだからな、フラグ回避だ。


「ボスの一体とはどういうことじゃ?ボスは一フロアに一体、それが基本じゃろう。」

「それはもっともな疑問だなニュクス。第二階層は四つのエリアに分断されていて四つのエリア全てにボスをセットしている。」


 第二階層は上から見ると円形になっていてスタート地点は円の中心にある。そこから四つのエリア全てに行ける、自分でどのエリアに行くかは選べる。


「なぜ分ける必要があったのじゃ?」

「面白くするためだよ。四つのエリアは全て雑魚キャラの強さを変えてある、雑魚が強いところも弱いとこもある。」

「それでは雑魚が弱いエリアに集中するのでは?」

「ボスの強さをその逆に設定してある。雑魚が弱ければボスが強い、雑魚が強ければボスが弱い。ボスと言うだけの力はあるがな。」


 中継ポイントはボスの前に設定してある。ちなみにボス部屋は転移式だ、あるところに行くとボスへ続く門があってくぐるとボス部屋に飛ぶ。ありふれた方法だな。


「それで一番強いボスにフィーを入れたい。フィーは風属性でフィールドは森、一番実力が出せるだろう。」

「今ある階層の内容ではそうですね。わかりました、頑張ります。」


 いい返事だ。フィーを倒せる奴なんかいないだろうからボス部屋に居る時のフィーのステータスに制限を掛ける。これで向こうにも勝ち目はあるはず。


「今度の準備はこれでいいな、じゃあ今日は解散でいいぞ。」







 --とある島国の森--



 恵です。現在森に入って化け物を探しています。見つからないものですね、探し物って。


「お嬢ちゃん、本気で化け物を見る気なのか?怖いもの見たさで死ぬ気か?」

「死ぬ気かと聞いているあたり大丈夫なのでしょう?」

「なぜだ?意味が―――。」

「そんなに危険ならば普通ついてきません。所詮今日偶然会っただけの人間、仮にこの森で死んでもあなたが言った通りなら死んだことも誰にも分らないですしね、あなたが言うには『この島の人間は誰もこの森には入らない』そうですから。さらにあなたは影しか見られていないはずの化け物の影だけじゃわからない特徴を知っている。」

「……何が言いたい?」

「しらばっくれる気ですか?私はあなたが“化け物”だと言っているのですよ。」


 影しか見られていないはずの詳しい化け物の特徴を知っている。何人も犠牲になっている化け物がいると言う森に入ってきている、しかもあまり怯えた様子はない。つまり自分は襲われる心配がないと確信している証拠。


「………しょうがない、あまり人は殺したくないのだがね。」

「何人も殺しといて今更ですか。」

「俺が殺した人間は全て俺の正体を知ってそれで俺を脅してきた人間だ、好きでやったんじゃない。」

「人殺しが本能でしょうに、この“ライカンスロープ”が。」


 ライカンスロープ、ワーウルフとも言いますかね。簡単に言うとオオカミ人間です。なんとなくライカンスロープのほうが響きが良いのでそう呼ぶことにします。


「…この姿はトテモミニクイカラキライナンダ。」


 そういいながら変身していきました、今のライカンスロープは満月を見なくても変身できますし昔の伝承通り銀の弾丸で死ぬという事もないそうです。ニュクスちゃんに教えてもらいました。ニュクスちゃんはどうしてあんなにも物知りなんでしょうかね?


「そうですか、なら氷漬けでそのまま冷凍保存というのだけは勘弁してあげましょう。」

「ぐるるるるる・・・ガアアアアア!!!」


 “咆哮”です、ニュクスちゃんから聞いた話だと“咆哮”は相手をひるませるスキルだそうです。これはスキルに分類してもいいのかは不明ですが、なんにせよ私には通用しません。


「効きませんよ、【アイス】」


 咆哮を無視して氷塊を私とライカンスロープの間に作り出します。


「ガルア!!!」


 氷塊を避けてライカンスロープが私に突っ込んできます。


「グルアアア!!!」


 近くまで来た瞬間ライカンスロープの・・・ライカンスロープってさすがに長いですね、人狼でいいですね、人狼の爪が私に振り下ろされます。


「遅いです。」


 それを私は人狼の懐に跳びこむことで回避、そのまま攻撃に転じます。


「【フリーズ】」


 私の手が人狼に触れます、とその瞬間私が触れたところから人狼の体が凍り付き始めます。


「ガラア!!グル、グラアアアアアアアア!!!」


 人狼は驚いていましたが原因が私だと気づくとすぐに私に攻撃してきます。それを私は後ろへと跳ぶことで回避、一気に片を付けるべくスキルを唱えます。


「【アイス・ブラスト】」


 先ほど出した氷塊が破裂します、氷塊の近くにいた人狼にはもろに当たり、バックステップで離れていた私は近くの木に隠れて防ぎます。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 人狼を見ると瀕死状態で地面に倒れていました。なんというタフさでしょう、今の技は不意打ちではなったし威力も私のスキルの中でも三番目ぐらいの威力ですのに。


「ひどい生命力ですね、あきれました。」


 そう言いながら木の陰から出ていきます。


「グルルルルル‥‥‥‥。」

「ああ、怖い怖い。そんなに唸らないでくださいな、元はと言えばあなたが私に襲い掛かってきたのがいけないのでしょう?」

「…………君が俺らの生活を脅かすと感じたからだ。」


 人型に戻りました。


「今の平穏の暮らしを、ですか?」

「そうだ、種族の歴史の中でも珍しい種族間の戦争がない状態、それがいまだ。それを君が台無しにすると本能が警鐘を叩いたのさ。」

「私は考え事をしに来ただけと言ったでしょう?私は襲われなければ何もしませんよ、あなたの傷も癒してあげますし。」


 そう言って私は人狼に手をかざします、人狼の怪我がすぐに、すごい速度で塞がっていきます。

 治癒スキル【気まぐれの慈悲】、私がご主人に教えていないスキルの一つです。ご主人に秘密を作るのはいけないことですがこの考え事の結果次第ではご主人と敵対するかもしれませんので、勝率は0,1%でも上げておいた方が良いですから。


「な・・・。」

「治癒スキルというスキルの一種ですよ、驚くこともありません。」


 人狼は何かを急に考え始めました。やれやれ、怪我を癒した礼はなしですか。私がつけた傷が全てでしたから文句は言いませんが。


「すまない、襲ったことは謝る。しかし一つ頼まれごとをされてくれないか?君ならできるかもしれない。」

「都合がいいですね、なんですか?」

「この先にある村に死にそうな子がいる、その子を助けてほしい。」

 焔は最初以外恵ちゃんのステータスを見ていません。よって恵ちゃんが焔に教えたスキル以外焔は知りません。

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