第十八話 ダンジョン攻略隊‐1
「アルマ、とりあえずこれについての言い訳を聞こうか。」
これというのは当然港襲撃の件だ。
「マスターが宣戦布告して来いというので、外国と取引しているのにその取引のためのものを壊せば相手も本気だとわかってくれると思ったのです。そうすればこの国の信頼は落ちますからね。すべてはマスターの指令通りに。」
今年一番の深い溜息をつく。アルマは俺の命令を完璧にこなそうとしてオーバーキルをしてしまったみたいだ、かなり高い知能を与えたのが裏目に出たな・・・・しかし恵奪還の時はこの高い能力でいち早くゴミどもが行くであろうところを突き止められたのだから少しは目をつぶるべきか・・。
「今回の事は許してやる。しかし次からは俺に一度連絡を入れろ。わかったな?」
「はい、申し訳ありませんでした。以後気を付けます。」
「わかったらもういい。もうフリーでいいぞ。」
「ありがとうございます。それでは失礼しました。」
そう言ってアルマは管理人室から出ていく。有能だが危ない奴だ。気を付けて制御しないと大変なことになるな、怖い怖い。
「なかなかうまくまとめたではないか。アルマは今のところ魔物の中では最強じゃし肉弾戦では焔でも勝てるかどうか・・、アルマに不満をさせるどころか心の広いやつとして再認識させるとは・・・・さすがじゃの。」
こいつは本当に・・・・やめた。こいつには何を言っても暖簾に腕押しだろうからな。
「わかって言っているだろうからそれについては何も言わないぞ。それよりも人間の攻略者どもはまだなのか?新しい罠の試作をしたいのだが・・・。」
これだけ盛大にやったんだ。すぐにでも討伐に来てもおかしくはないのだが・・・・。
「…焔よ、まさか忘れておるのか?」
「何をだ?」
なにか忘れていたことあったか?
「本当に忘れておるようじゃな。入口を隠したままじゃろう、新しい罠を設置しておる間に人が来たら困るとか言ってじゃ。」
「……ああ、そういえば直してなかったな。すぐに入口を出そう。」
入口は自由に隠すことが可能だ。ダンジョンを作り変えている間に人が着たら困るからな、ダンジョンクリスタルに機能を追加したんだ。ダンジョンクリスタルはこのダンジョンの要だからな、そういう操作は基本的にダンジョンクリスタルでできるようにしてある。当然俺しかダンジョンの設定の変更はできないようにしてある、ニュクスにいじられたらどんなことになるか想像はつくだろう?それの防止だ。
「……よし、これで入口は見えるようになったはずだ。さて、どんな奴が最初に来るのかな?」
そういってダンジョンクリスタルのモニターに入り口前と第一階層を映し出す。入り口前には軍人らしき人たちが四十、五十ぐらいはたむろっている。
『なんだこれは!なぜこのようなところにいきなりふすまが・・・。』
『隊長!これがダンジョンの入口だと思われます!』
驚いてる驚いてる。えっ?また向こうの誰かに視点が変わると思った?そんな配慮すぐにやられてしまうモブキャラには必要ないでしょ。眷属にしようと思う奴なんかこの中にいないし。むさいおっさんとかまじ勘弁。眷属にするならかわいい子がいいよね、俺男なんだし。
……だからニュクスよそんなすごい目でこっちを睨まないでくれ。
『……突入準備!今よりダンジョンを攻略する!まずは俺と一番、五番、六番で突入する、ほかのやつらはここで待機だ。わかったな。』
『『『『『了解!!!御武運を!』』』』』
そういって隊長ら四人はダンジョンに入ってきた。なんというか、その、暑苦しすぎるだろ、ただでさえむさいのに。
「それが軍人というものじゃろう。ほれ、続きを見ようぞ。」
『隊長!この看板に情報が書かれています。』
『よし、その情報をひとまず上の隊に教えてやれ。そのあと進軍する。』
ダンジョンについてはいちいち俺が出て説明するのはめんどくさいので看板にすべて書いておいた。モンスターのステータスについても、あの時話したことはすべて書いてある。
『なるほど・・・これで一度はいったら中々出られないという意味が分かったな。それでは行くぞ!』
そういって進み始めた。なかなかの統率力だ、きちんと訓練されてるな。
「これでは蛇口には引っかかりそうにはないな。やれやれだ。」
新しい罠に行ってくれるのはありがたいが。このフロアには新しく罠と第二階層にいくためには必ず通らないといけない部屋、いわゆるボス部屋に強くなったスライムを設置した。それ以外はあの時と同じだ。
「蛇口がなくとも十分鬼畜ではないか、むりげーは嫌いと言っておったのはだれじゃろうな。」
ニュクスの言うことは無視する。言い合うと敗けるからな。
『なんだここは・・まるで学校じゃないか。窓や教室がないがそれ以外はそっくりだ。…蛇口が気になるが。』
『まず間違いなく罠でしょう。これほど蒸し暑いのがその証拠です、この暑さでのどを乾かせて蛇口をひねらせるのが狙いでしょう。』
うん、やっぱりばれた。
『そうだな、上の隊に伝えておけ。今後は何かあったごとに上に報告するぞ、俺らが死んでも後のやつらが攻略できるようにな。』
『そうですね、俺らが死んでも国民が助かるために・・・しかし隊長、そんな悲しいことは言わずに生きて帰りましょう!仕事終わりのお酒ぐらいはおごりますから!』
『……そうだな、野郎ども!生きて帰るぞ!!』
『『『おーーーーー!!!』』』
死亡フラグだな。こいつらはそこまで有効なスキルは持っていないだろうからスライムにも勝てないだろう。中間ポイントに行くにはスライムがいるところは避けて通れないし、てか中間ポイント設置してないし、こいつらができることはせめてスライムに物理攻撃が効かないことだけだろう。しばらくは何もないだろうし待機組でも見てるか。ニュクスは先頭隊にくぎ付けだが・・・。
『隊長たち・・大丈夫ですかねぇ。』
『隊長は俺たちなんかよりも多く死線を超えてきている。少なくとも無駄死にだけはしないお方だ。』
ほう、そうなのか。じゃあ殺した後は死兵にして第三階層に放っておくか。
こないだ気づいたことだが実際にあるものを媒介にして魔物を作れるらしい。作るための魔力量が少ないのだが媒介によって魔物の強さが変わるのであまり使えるものじゃない。だから鍛えられた軍人の体なら期待は持てそうだ。
『しかし今回ばかりはきついかもな。』
『どうしてですか?経験豊富なので大丈夫と言ったのは先輩ですよ?』
『あの人は人間相手なら無敗を誇るが今回は化け物が相手だ。いくら相手の特性がわかるからってなぁ・・・・・。』
こいつらはきっと俺が聞いているとは夢にも思わないだろうな。相手に筒抜けな間抜けな作戦会議は続く。
『とりあえず次の報告を待つべきだろう。隊長が連れて行ったあの三人のスキルの組み合わせはバランスがいい。』
『えっスキルって何ですか?現実にそんなものがあるなんて聞いたことないんですが・・・。』
……おいおい、こんなのが居て本当に大丈夫かよ。スキルはダンジョン攻略には必須だぞ。そういう風に作ったんだから間違いない。
『自分のステータスを見てみろ。書いてあるはずだ、この隊は全員がスキル持ちで構成されているはずだからな。』
『【ステータスオープン】、・・・あっ本当に書いてありました。なになに・・【ファイアボール】って書いてあります。』
その瞬間火の玉が表れて本棚に・・・あーあ、間抜け。
『うわー!!!本棚に火が、火が!!!』
『落ちつけ新人!みんな離れてろ。【スプラッシュ】』
水の散弾が本棚にぶち当たる。おお、見事。本棚の火を鎮火させた。




