第一話 始まりはいつも突然に
「おぬしにはダンジョンを作ってもらう。」
「はあ!?」
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その時俺は普通に学校から帰る途中で、石ころを蹴飛ばしながら友達と談笑していた。
「いやー、お前はいつ見ても不愛想だな。」
「ほっといてくれ、これは俺のアイデンティティの一つだといつもお前には言ってるだろう。」
俺は学校でも有名な頑固である。これは自他ともに認める事実であり、なぜか俺のアイアンティティの一つとなっている。
それをこいつ、白川智樹はいつも直そうとしてくる。俗にいう『ありがた迷惑』というものなんだけども……。
「いやだってもったいないって! お前その性格さえなければモテるに!」
「いい迷惑だ! 自分がモテないからと言って俺に押し付けるな!」
白川はモテない。容姿は悪くないのだが全然モテない。これは学校七不思議に入れてもいいと思う。理由はあるから別にそうでもないか。
まあそのぐらいの……いいや、可哀想だからやめた。
うんまあ、それ故に俺に彼女を作らせようとする。
えっ理由がわからないと? つまりだな俺に彼女を作らせて、その彼女から白川はいいやつだと広めて、女の子の好感度を稼ごうというわけだ。
こいつがモテないのはその器の小ささのせいになる。まあいい奴なんだが、深く関わらないとわからないんだよな。
「そんな風に器の小さいことをやってるから彼女が出来ないんじゃないのか?」
「なっ、まさかお前に彼女を作らせてその彼女を横取りする計画がばれていたと!」
……呆れて物も言えん。どうやら、俺の想像以上にこいつは器の小さい男だったらしい。
「どうした?溜息なんかついて」
「なぜ俺はお前なんかとつるんでるんだろうか…」
「ちょっと待った!それひどい!」
「今の俺の心からの本音だ」
「……泣いていいですか」
「別にいいけれども、俺から10m以上離れてからな。知り合いと思われたくないからな」
「…………」
落ち込んだふりをしているが、別段いつもと変わりないなので無視する。
「おい、そこのお前!」
「なんだ?」
いったい誰だよ。やかましいなぁ。
背後から声がしたので振り返る。少女がいた。
「そうだ、そこの頑固そうなやつだ」
「……えっと、なんだこの偉そうなガキは」
俺を呼び止めたのは小学生4年生ぐらいの身長で銀髪青眼の少女だった。
「えっ何この子、お前の知り合い?あっそういうことか。つまりこの子がお前の恋び・・・痛い!」
「殺すぞ、人をロリコン扱いするな」
「そうだぞ、だれがこんな子供と」
小学生に子供と言われちゃいましたよおい。
「でっ何の用なんだお嬢ちゃん」
「最初に言っておくがわらわはお前よりも年上なのだからな。敬語をつかえ敬語を」
うわ、一人称わらわのやつ初めて見た。
てかこの見た目の癖にやけに日本語流暢だな。日本生まれってのなら納得するが、それにしては可愛げがない。
「まあいい、とにかくついてこい」
「はぁ? ちょっとま……おい腕を引っ張るな。てか力強いなお前!」
「ゆっくりデートしてこいよー!」
「おい、白川こっちに来い。ぶっ殺してやるから」
「そんなのは後にしろ。とにかくひとまずついて来い」
「お前はいいかげんに……!」
* * *
「で結局お前は何の用事で俺をこんなとこまで連れてきたんだよ」
結局、俺は趣味が悪い置物が多々置いてあったり、なんか全体的に黒い部屋に連れてこられた。
暗い路地裏とかを通ったり、身に覚えのない道を通った気がするが、本当に一体なんだんだと。
「むっふっふ、ようやく見つけたぞ。資質があるものを」
シカトですかそうですか。ならばこっそり帰ってしまおう……!
体が動かん。これはあれか、俗に言う金縛り状態と言う奴だな。
「ああ、せっかくの≪適合者≫に逃げられては困るからな」
適合者? 何言ってんだこいつ。新手の中二病か?
最近多いらしいな、こういうの。先生がホームルームの時に言ってた気がする。
「誰が中二病だ! 失礼な!」
……考えをヨマレタ。
「お前程度の考えを読むことぐらい、わらわにとっては簡単なことである」
無い胸を張って何言ってんだこいつ……
「失礼な、多少はあるわい」
「……とりあえずその話は置いといてだな。もう一度聞く、なぜ俺をこんなところへ連れてきた。」
「おお! その言葉を待っていた」
さっき同じことを言ったんだけどな……
「いやー苦節367年、ようやく≪適合者≫の資質のあるものを見つけたのだ。それがお前なのだよ。」
「さっきからお前が言っている≪適合者≫ってなんだよ。」
367年には突っ込まないでおく。何、中二病患者にはよくあることだ。
「というわけでお前には“魔王”になってもらう」
「は?――」
一体何が何だか、理解が追いつかない。しかし、そんな暇も貰えはしなかった。
俺の意識は、ここで途切れた。
6/14 読みやすいように改行しました。