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オマケ

ウレの手が私の肩に触れた。カッと体温が上がる。ずっと触れたいと思ってた。触れられたいと思っていた。ウレの手が私に触れている・・・。嬉しいけど、嫌だ。なんでだろう?ウレの冷たい目が私を射るように見つめる。

「早く、降りてくんないかな?お母さんの非難が痛いんだけど。」

「ウ・・・ウレが止めてくんないと、抜け出せないの知ってて言ってるの?」

「当たり前じゃん。けど、愛らしい妹に3日も夕食を抜かさせるのは忍びないからね。」

そうだ。私は今になって空腹に気付いた。だいたい『愛らしい妹』って・・・。恥ずかしいセリフをさらっと吐くんだから。好きなんだ。ウレは私にないものをいっぱい持っている。

「ウレ兄ちゃん!!今日の晩御飯、何?」

ロンが無邪気に聞いている。


あぁ。そうだ。ウレも昔はこんな子だった。妹の私から見ても、素直で優しいお兄ちゃんだった。だけど、それは兄が4歳の時に幕を下ろした。燃え盛る赤い目から光が消え、優しさが消え、冷ややかな鋭い目になっていた。自分がすべてを知らないと安心できない。そんな人に様変わりした。

一度、ウレに対して詰ったことがある。『そんなにも、何もかも知らないと気がすまなのか!!そんなに、優位に立ちたいのかっ!!』ウレは静かに答えた。『お前に、この辛さが分かってたまるか・・・。そうだよ。俺は優位に、頂点に立ちたいんだ。』こんな人、知らない。私の第6感は危険を知らせた。

私の愛した兄は、もういない。

変わってしまったのだ。

けど、好きだ。私は自分の気持ちに震えが走った。まだ好きだった。前より好きだった。

だって彼を変えたのは、この私。

私だもの・・・。


ひいお爺ちゃんの、お葬式の次の日だった。あれは。ひいおじいちゃんは、ライフコンピューターの創生者で、この星で初めてライフコンピューターを使った人で、短く編集したライフコンピューターをお披露目することになったので、私たちは、披露宴の席に座らされた。

「ねぇ。おにーちゃん。なにがはじまるのぉ?」

「ウル。静かに。今からね、面白いものが見れるんだよ。」

「おもしろい?ホント?ウル、楽しみぃ!!」

「黙って、画面を見るんだよ。」

ひいお爺ちゃんのライフコンピューターは、普通に面白くなかった。すると、耳につく鳴き声が聞こえた。ふっと振り向くと、泣いていたのは兄だった。

「ママーっ!!ママーっ!!ママーっ!!ママーっ!!ママーっ!!ママーっ!!うあわぁぁあぁあああぁあああん。うわぁぁぁぁん。戻ってぇよぉ!!マぁマーっ!!」

「あらら。どうしたの?ライフコンピューターが怖かったのかしら。」

私はなんでだろう、と思った。初めて兄が泣いているとこを見たが、泣く理由が分からなかった。そこで、お兄ちゃんに聞いてみることにした。

「ねぇ、おにーちゃん。なんでないているの?あんなのがこわかったの。へんなおにーちゃん。」

私は、悪意などなかった。お兄ちゃんに恥をかかせるつもりなど、3歳の子にはないに決まっている。けど、悪乗りしたいとこが叫んだ。

「ホントだよ!!ポリウレタンは、ビビりだな!!ダッセぇ~。」

「気持ちわりぃ!!『ママァ』だってさぁ。」

いとこや、はとこがそろってポリウレタンを馬鹿にした。

それを黙って見ている親たちでは幸い無かったので、兄は救い出された。そして、出る寸前に私のことを鋭くにらんだ。それは、今のような冷ややかな目だった。

あぁ。変わってしまった。変えてしまった。変わるきっかけを作ってしまった。


「おい、ウル。また、ライフコンピューターに入りこんじまったのか?」

「ウレ・・・。入り込まないタイプは、面白い?」

「なんだ?嫌味か?それは。後にしてくれよ。今日は、オムライスだぞ。」

そう、後で分かった。ウレはまれにみる、入り込めない人だったのだ。それで、皆が『あんなの普通じゃん』と言っている時『あんなの』が分からず、分からない恐怖に苛まれていたのだ。それで、彼は巷で『情報屋』名を馳せる人になってしまったのだ。情報はすべての上に立つと、情報を持っている者こそがこの世を征すると・・・。


私が変えてしまった。


ならば私がその罪を負い、私はこの人を好きでいつづける。


それが私の罪滅ぼしだから。

ウレ君が変人なのはこんなわけがあったのです。二人とも思いつめちゃうタイプですから。次回はちゃんと本編ですから、ご安心を。

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