表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

ドラキュラ城に遠足だ

「今日から一か月間、よろしくお願いします。ガイドを務めます、ライと申します。」

ライは、片方だけ羽の生えた頭を、深々と下げた。そして、みんなの疑問の視線から必死に耐えた。何しろ、ライはまだ1~2歳の子供の様に見えたからだ。ただし、実際のところ彼女は17歳で会って、1,2歳など侮辱するにも程があるというものである。しかし吸血鬼という者は悲しい生き物で、なかなか老けない。そのせいで17歳の若く麗らかな彼女は、1,2歳に見えるという屈辱に戦っているのだ。

「レイウッド隊長様!!銀河警察は、ガイドを雇う金がそんなにも無いのですか!?」

「ふん。自分のみぐらい自分で守りたまえ、ジャック君。」

思いっきり皮肉で返したレイウッドだが、この小娘だと道案内も出来ないのではないかと、本気で頭を抱えていた。だって歩くのも不安定なのだ!!どうして安心できよう?

何よりも、ライはちゃんとした吸血鬼じゃないのだ。混血の吸血鬼。人間と吸血鬼の間にできた、忌子なのである。その為か、右半分に影響が出ている。右目は何があったのか眼帯が巻かれ、頭に生えているはずの羽は左のみだ。牙も左のみ。

「五月蠅い!!進むぞ!!」


それから約9日間かけてドラキュラ城に向かって歩いた。(この間ウレは早送りをしていた。)


そして、10日目。彼らは無事に中間地点『寿園』についた。寿園は、いつもは修学旅行生を泊めている人間用・・・の施設だ。今まで野宿寸前だったエルたちにとってはまるで天国だった。

そして夜(ウレは早送りをした)。

エルは猛烈な渇きと共に目が覚めた。何しろ、出て来る物出てくる物、すべて赤っぽかったので、怖くて水分が取れなかったのだ。エルは周りの人を起こさないようにそろりと起き上がって、部屋から出て行った。自動販売機求めて。あれならさすがに水ぐらいあるだろう。

「ポリ・・テル・・・あると・・・無いのです!!」

話し声が聞こえてきて、エルは不思議に思った。なんたって、今は夜中。エルが起きているのはまだとして、喋るほどの時間ではない。好奇心旺盛なエルは、話を聞こうと壁に耳を寄せた。

「フフフ。あなたは外見しか見てないのよ。確かに、あの子は力がないように見えるわ。でもね、青になったあの子はすごいのよ。笑えるわ。すごい変わり方をするんだから。」

「私は外見で判断なんかしません!!キチンと、論理に導いた考え方をしていますっ!!」

「じゃぁ、そんなにキンキン叫ばないで、笑えるものも笑えなくなってしまうわ。」

「お願いします。見捨てないでくださいっ!!あなたしか、頼める人いないんです。」

「ふん、見捨てたりしないわ。フフフ。面白い。あなたの血筋をわざわざ見捨てるほど私はバカじゃないわ。ヴァンパイアの混血ちゃん。」

エルは息をのんだ。片方の声の主が分かったのだ。この鈴を転がしたような美しい声。エルは一人しか知らなかった。ベラ。ミュージック・イザベラその人ではないか。しかも、赤バージョン。

ベラは厄介な性格だった。二重人格、一人の人に二つ以上の性格が一緒くたになって表れてしまう性格。

厄介な事この上ない。ベラは、耳にかかっている愛らしいメガネをはずすと、目が真っ赤に(まるでエルだ)になってしまい、どこまでも『笑い』を求め、『喜び』を求める冷酷人間になってしまうのだ!!(え?前後のつながりが見えない?知るか、本当の事なんだもん。)さて、ここでエルの好奇心はもっと掻き立てられた。ベラと話しているのは誰なんだろう?そう思い、勇気を出して小窓から覗いてみた。(エルは小窓の近くで聞いていた)

ベラはやはり赤だった。問題はそこではない。ベラの話し相手は、15歳くらいの少女だった。いくらエルが鈍くてもわかった。ライだ、と。もちろん身長は違う。年も違う。顔つきは微妙なところだ。でも、吸血鬼の混血なんて、ライしか知らない。少なくとも、ここにはライしかいない。さっき見てた人と同じ人とは思えないぐらい、神の色が変わっていた。腰まで伸びる黒のかかった茶色の髪。眼帯で隠していた右目は、美しく光っている。(ヴァンパイアの目は光を吸い込み、反射しない)牙も、心なしか引っ込んでいる気がする。けど、服は同じだ。大きさが違うが。

「さて、今何時だと思っているの?早く寝ましょ、あなたと違って私は昼型なのよ・・・。眠かったら、笑う気力もなくなるわ。」

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバ男ヤバ沢ヤバ子じゃんか!!

出て来るっ!!エルはそう思い、脱兎のごとく逃げ出した。自動販売機の方へ。幸いにもベラにも見つからず、自動反売機にも『ミネラルウォーター』らしきものがあった。


何回も、何回もベラに聞こうとした。さりげなく『昨日の夜、どこ行ってたの?』って聞いてみようと口を開きかけたが『ライと話してたの』と、答えられるのが怖くて・・・。

ベラには、友達がいなかった。その綺麗な顔立ちにの横に並んだら見劣ってしまうからだと思う。私にも友達がいなかった。ここ、銀河警察(神の家)では、神の色は茶色が通流で、黒なんてありえないっつうか、前例が無い状態なのだ。それで、怖がられ人格を無視した、外見だけの拒否を2人ともうけていた。ベラは私の唯一無二の存在。たった一人の親友。幼い独占欲だろうが、私はベラに友達ができるのが嫌だった。私に向かってだけ笑ってほしかった。2人の時は少し滑らかになる話し方も、すべて大好きだった。赤の時も怖くはあるけど、好きだった。信念のある感じに憧れもしたものだ。


ヴァンパイア城についた時、ライは赤いスカーフを付けていた。礼儀正しく別れを告げた。

「今日限りで、ガイドを終了させていただきます。今までありがとうございました。」

けど、エルはライの声も隊長の声も聞いてはいなかった。赤いスカーフ。あれは『サーベルの破』。ベラとお揃いだ。ベラと!!あれは、ベラがお父さんから3歳の誕生日にもらったもので、家庭科を滅亡の危機に突き落とす、危険なものだった。あれは世の中に50個程度しかなく、ほとんどベラのお父さんが所有していた。使い方は、自由。頭の中で思い浮かべたものが、若干の魔力と引き換えに真野が出て来る便利なものだ。しかし、それを生業としている家庭科からすれば、面白くないのは必然だ。ベラにおふざけで言ってみたことがある。『それ、可愛いなァ。頂戴よォ。ベラ。』けど、ベラは真剣な表情で返した。『お、大人になったら・・・ぜ、絶対あげるわ。』と答えられた。それを、ライは首につけている。ベラは胸元でリボン結びをしている。


ベラは歩みだしていた。ヴァンパイア城に。足を踏み入れていた。もう、守る必要はない。前みたいに、『エルちゃん。ここ、怖いよ。』とすがりついてくれない。


エルは、誰も守るでもなく、誰に守られるわけでもなく、一人で足を踏み出した。


彼女自身も、一人で歩もうとしたのだ。すがっていたのは彼女だったのかもしれない。


「ポー君。お願い。今日は、外出許可するから。」

「ママ。僕は今日、外出したくないんだけど。」

「明日の分。許可するから。ウル達を呼んで頂戴。」

「行きます。ママ。もちろん。」

ウレは意気揚々と立ち上がると二階へ上がって行った。

読んでいただき、ありがとうございます。たぶん、次はオマケになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ