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隊長様は頭の悪い生徒に優しく教え続けた。

「・・・以下。おい、エル分かってねぇだろう?」

「えぇ!!レイウッド隊長っ!!まさかテレパシーまで使えるようになっちゃったんですかっ。」

レイウッドの美しい女顔は、極限まで歪んだ。そりゃぁ。分かるだろ。窓の外を一心不乱に眺めてたら誰だって。そんな思いを隠して、もう一度エルのためだけにかみ砕いた説明をする。

「あのな。吸血鬼という、生物が、今回の、獲物だ。ここまでは分かるだろ?」

「あの。吸血鬼ってなんですか?」

レイウッド含め、第一群の者は肩を落とした。その中には、レーサーなどの仲良し組もいるのだから、エルの見方などいるはずもない。

「あのな、吸血鬼というのはだなァ。人の、血を、通じて、生命エネルギーを、取ることによって、生きながらえている、動物だ。」

噛み砕く口調に、幼稚園を想像した者は少なくない。エルは真剣に頷くが、レイウッドはハカセに対して『後で、マジに教えとけ。敗因がコイツになるとか最低だから。』と囁くほどの知識しか渡していない。

「いいか?次、行くぞ。で、名前は、エド―ワード。エドワードだ。分かったか?」

「えどーうど。ですね。はい!!メモしましたっ!!」

「するな。エドワードだっ!!誰がえどーうどなんて怪奇な名前をあげろと言った!!」

誰もが、やな役を押し付けられた青年レイウッドの身を案じながらも、ドアの方へ体を動かす。

「あ、エドワーズでしたか。済みません。きっと略称はエドでしょうね。」

「もういい。エドワードだなんて言ってもわからんだろう。そうだな。エドワードでも、エドワーズでも略称はエドだもんな・・・。」

見かねたハカセが、応戦しようと身を乗り出した。

「ちなみにエドワードの略称は、エディですけど、関係ありません。話の本題は名前ではありませんから。それに、レイウッド隊長。関係ない我々は、帰ってよろしいでしょうか。」

応戦なのか、レイウッドを追い詰めているのか、どっちともとれるような話を切り出すと、ハカセは周りの隊員とともに、去ろうとした。質問は、形式なものだからだ。と、思っていたのだが。

「ああ。帰っていいぞ。オメェら。だが、ハカセとレーサーは残りやがれ。応戦しろこのバカのために。」

ほかの隊員たちは、飛ぶように帰って行った。しかし、ベラは帰り損ねていた。それを見かねたかのように、レイウッドが声をかける。

「ごめんな、イザベラ。あの約束はまた今度にしてくれないか?明後日とか。どうだ?」

「あ、あさって・・・なら空いてます・・・すみません。では・・・ま、また。」

しどろもどろになりながら帰ってゆくベラが面白いのか、レイウッドは少し笑うと本題を切り出した。・・・もちろん、二人の関係についての揶揄は眼力で治めたのだ。

「この、エド・・・エディは、悔しくも、王家なんだ、細かく言うと、王子、なんだ。で、この人には、捕まえて、いいか?と、言う、許可が、必要なんだ、ここまでは、分かるだろ?いや、分かるな。次行くぞ。」

質問をしようとしたエルを、レーサーが力ずくで抑える。そこに、ハカセが加担する。

「だから今度。王家に王様の許可をもらいに行くんだよ。エル。」

「なんで、バカ一人捕まえんのに、王家の許可がいるんですか」

エルはレーサーをよけながら、必死に尋ねる。だけど、レイウッドは軽く無視して次に進めた。

「許可が取れたら、エド・・・エディを、探し出して、捕まえるんだ。了解?」

「えぇ!!場所分かってないんですかぁ。」

甘ったれた口調にレイウッドが、軽く眉をひそめた。

「なんなら、お前に探す権利をやってもいいぞ。被害届が出てから4日・・・これでどの惑星にいるかもわかんないヤロー相手に。」

「でも、せめてどの惑星かぐらいは分かりますよねェ。4日なら。それに、エドと隊長はお友達じゃないんですかぁ?」

イラついたためか粗い口調になったレイウッドを、逆なでするようにエルの言葉は無遠慮に発される。

「それをどこで聞いた。ハリー・ポリエステル。場合によっては吊るす。答えよ。」

「ちょ、こわっ!!ベラ!!ベラだよ。あ、ベラですよ!!なんか、エルちゃんだけに教えるけど・・・とか、言ってたような気がしますね。自分的には、そんなので私の口が封じられるわけもないことを知っての確信犯だろうと心得てますが。」

急に饒舌になったエルは、自分を庇うよりいつも完璧優等生として名をはばからせている、ベラを攻撃することが楽しくなったのか、調子に乗って喋り始めた。

「何か、すんごい話の合う仲だったとか聞いてますよ。私一人で抱えるのは重すぎて・・・なーんてほざいてましたよ。アイツは。」

かなりレイウッドの傷をえぐったようだ――とエル以外の2人は察して顔を青くした。何せ、そのイザベラとの約束を蹴ってまで、教えてやろうとしたのだぞ?あのベラを!!蹴って!こんなバカのために!!そして、そのバカに蹴った相手を馬鹿にされている・・・最悪だ。なんてことは、エルじゃなかったら誰でも分かることだ。

しかも、本当に仲が良いならレイウッドは今回の逮捕を、喜んでやってはいないだろう。そこを突くなんて。そんな空気を読んだのか、エルはさっさと帰ろうとした。

「あ。分かりました。今回の件は分からないたびに、ハカセに聞きますから。これで。」

「吊るし決定。屋上に行け。レーサーコイツをおさえろ。ハカセ縄は納戸にある。取ってきてくれ。」


レイウッドか。確か七宝・レイウッドだったか。ミュージック家の親戚、いや側近だったはずだ。

しかも、このころは第一隊長らしいが今ではトップクラスの狩人になっており、74歳とは思えない手腕でメッチャ元気だとか聞いた。別名『天のギロチン』。殺す時、無駄無く首を刎ねるからだそうだ。

美しいと思ったことを覚えている。俺が、この世で美しいと思っているのはあの人と、クレスだけだ。

あの人を見て、なんで『みんなは俺を世界で一番きれいだ』とかいうんだ?この人の前ではいらない自信がついただけじゃないか。と、悲観的になったのを覚えている。老いていても美しかったレイウッドさんは、スクリーンの中で光り輝いていた。


「あいつら昨日もだったけど、今日も夕飯抜く気か?厳しいダイエットだなァ。」

「ねぇ、ポー君。ウルたちどうしたの?ホントにダイエット?」

「お母さん。ポー君と呼ぶのはやめてくれないかな?」

ポー君・・・失礼、ウレは微笑みながら答えた。答えにはなってないが。

「ウル達は、まだ二階にいるの?いいえ。ウルはいいわ。リルだけでも一緒に食べたいんだけど。ママ、悲しいわ。」

「お母さん。今日僕は出かけなくちゃいけないんだ。チビちゃんを読んだら解放してくれる?」

「ママって呼んでくれるなら解放するけど。」

ウレは頭を抱えた。この馬鹿っぷりは、おばぁちゃん譲りだったのか・・・。

「ママ。解放してくれるかい?」

「心がこもってないわ。あぁ。今日はずっとこの家にいてくれるのね。ママは嬉しいわ。ポリー。」

心の中で『呼び名を統一してくれ!!』と叫びながら、いろんな女を虜にしてきた笑みを浮かべて、粘り強く交渉した。

「ママ。好きだよ。今日家を抜けることを許してくれない?」

そんなウレを見ながらお父さんは、これでいいのか?と思っていたのであった。

そうなんです。この家のパピーは無口なんです。あ、パパです。パパ。そして、エルはバカなんです。後で思い知りますよ。

エルの馬鹿っぷりが気になっても気にならなくても続きをどうぞ。

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