厄日改め祭日
彼女、ポリエステルは人の気配に目を覚ました。
「なんでいかねぇんだよ!!エル。」
いきなり飛んできた怒涛が誰のものか分かるのに数分かかったえるは、寝ぼけナマコで聞き返した。
「はぁ・・・?何言ってんの。レーサー?」
言いながら、四方八方にはねた艶やかな黒髪をなでつける。仕草だけは色っぽいのだが、可愛らしい・・・というか、子供っぽい羊のパジャマが台無しにしている。
「おまっ・・・!!今日何の日か分かってんのか?」
エルは目の前に迫ってくるツンツンとした金髪を避けながら考える。ちなみに、レーサー・・・ゥレィザァーは茶色っ気のかかった金髪が、上にとがっていることを利用した攻撃を得意とする。
「あ、今日はカルトドゥヴーか。」
やっと思い出したエルの目は、もう完全に起きた真っ赤に燃える目になっていた。
その眼を見て、少なからず怯えたレーサーは曖昧に苦笑いした。カルトドゥヴーとは、元日とか、日の始まりなどの意味がある。銀河警察独自の言葉だ。
「ともかく行くぞ。エル。」
その言葉に、エルの表情が崩れる。苦々しけな顔で、皮肉る。
「レーサー。4年前に呼ばれちゃったおまえには、2年間呼ばれてない私の気持ちは分からないだろうね。」
「何僻んでんだよ。2年間呼ばれないぐらい、世間一般範囲だぞ。」
エルは悲しそうに笑うと、立ち上がった。
「分かった・・・行くよ。行くから、レディーの着替えまで覗くつもりかぁい?」
途端に真っ赤になるレーサー。そして、さっさと退散する。
「お待たせぇ~!!ベーラッ!!」
ベーラッとふざけたように呼ばれたイザベラは、超絶美麗な顔をほころばせる。
「エ、エルちゃん・・・。き、来てくれたんだ。よ、良かった。」
艶やかな金髪は、可愛らしくウエーブしてレーサーを魅了する。そんな様子を一人微笑んでみている男――スタディが、ゆっくりと口を開く。
「そろそろ入らないとヤバいよ。みんな。始っちゃうよ。」
その声に3人は慌てて講堂に入る。
「では、今から銀河警察員発表会を行うっ!!」
レイウッド第一軍隊体長は高らかに叫んだ。彼の茶色っ気のかかった金髪がふんわりと定位置に収まると同時に、歓声が上がった。何しろみんなが入りたがってる銀河警察なのだ。
銀河警察とは、銀河系から次々に送られてくる被害届などをもとに、銀河の平和を守る警察組織だ。1軍から10軍までにわかれている銀河警察は、組織長(イザベラのお父さん)によってまとめ上げられており、新入りは1軍に入れられるのが通例だ。魔法を使った警護は、なんと隊員一人一人が『殺傷許可証』なんて言う物騒なものを持ってるほどだ。
「名前を呼ばれたものは、速やかに立ち上がりステージへ順に並びたまえ。」
その言葉に回りの雰囲気が引き締まる。
「まず、今年は推薦入隊があるぞ。ホーム・ポリエステル。」
推薦入隊とは、組織長(ベラのお父さん)が、条件を満たしていないものなどを、ムリに入れることだ。
さて、ちなみに呼ばれたホーム・ポリエステル・・・エルは、物思いにふけっていた。
――これって、なんで条件なんてあるんだろ。生涯試験10級なんて、40歳まで私ムリだと思うなァ。ソーヤー推薦入隊てさ、レイウッド隊長もそうなんだよね。てか、噂ではあの女顔にファントム組織長が惚れたんじゃないか、って話もあるよねぇ。じゃ、ベラのお父さんてホモ?・・・無いな。確かにレイウッド隊長は、ベラと互角の超絶美麗だけどさ、そんなのに惑わされないと思うんだよねェ。なんつったて、ベラに似たあの美しさ!!ホント、ミュージック家はいいよねェ。や。けどホントレイウッド隊長、美しいよね。なんで男に生まれちゃったんだろ。あの女顔は、見るものを射抜いちゃうよぉ。腰まで降りる長い髪も、そのうえオールバックした前髪も、美しいんだよなァ。男に妬いても仕方がないけど、妬いちゃうよねぇ?
もう、何の話か分からなくなってきたとき、そのレイウッド隊長の怒涛が飛んだ。
「おい!!ホームポリエステルはいないのか!!」
「はい!!おります!!スイマセンした!!先生!!」
エルが、自分が呼ばれたことに気づいて、いつも居眠りして怒られてる時を思い出して・・・先生っとか言っちゃった。なんて、どうでもいいんだが。とりあえず、美しい顔をしかめてレイウッド隊長はエルに静かに怒った。つもりだが、ほかの人には皮肉ったようにしか聞こえなかったりした。
「速やかに、ステージに上りたまえ。誰が先生だって?まったく。俺は隊長だ。覚えとけ。」
笑いが起こる。エルは、真っ赤になりながらステージに上がった。エルは茫然んとしていた。いや、恥ずかしくもあったのだが。推薦なんて、エリート中のエリートの証じゃないか。だって、過去推薦入隊したレイウッド隊長は、今第2位の地位だぞ。シーザー第2軍隊長だって、推薦入隊だし・・・。
「夕食よ~降りてきなさぁい。」
一人だけのめり込めず、ただ見るモードにしていたウレは母親の声に、にやついた。
そして呆けたように画面を凝視している兄弟を見ると外用の声音で、話しかけた。
「ごめんね、僕。入り込めないんだ。だから君たちの分まで、夕飯食べてあげるね。」
町の女の子をたぶらかす、甘い声で呟いたウレはその日、ハンバーグを4人分食べたとさ。
ただ、ただエルはバカなんですよ?別に。変な思惑なんてありませんから。
ちなみに、ウレ君は、めっちゃカッコいいです。レイウッド隊長に勝ります。や、レイウッド君は、可愛いからなんですけど。とりあえず、次行きまひょか。