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逮捕その後

「エドワードへの対処はケイト王と相談した通り1ヵ月間のお説教ということだそうだ。」

「異議あり。その程度じゃ済まされないんじゃないんですか?こっちも死人出てますし。」

「俺に聞くな。ケイト様がそうしろってんだから・・・。しょうがないだろう。」

若い隊員を嫌がるようにレイウッドは顔をそむけて会議の終わりを宣言した。


「最低!!こっちは死人も出たし重傷者も多いしッ。もうちょっと長くてもいいでしょ!なんで1ヵ月なのよォ。意味わかんないレイウッド隊長それでもお前は男かーッ。」

「うるせーな。エル。レイウッド隊長のせいじゃねェンだからさぁ。」

「レーサー!!あんたは叔父だからってレイウッド隊長に優しすぎるのよ。」

「け、けど・・・。レ、レイウッド隊長も・・・かなり異議したって・・・・言ってたよ?」

「しょうがないよ。これは建前だけの逮捕だし。ずーと問題にはなってたんだけどね。吸血鬼連盟がもみ消していたんだ。」

ここはエルの部屋。4人仲良く談話をしに来ているのだが、愚痴大会になっている。あんなに頑張ったというのにたった1ヶ月で自由の身になる奴がいるとなれば怒りたいのも道理である。

「建前って何っ!?」

「だって一日で何人も殺したんだよ。問題にならない訳ないじゃん。けど、あれは市民のためとかなんとかぬかすからなかなか捕まえられなかったんだ。」

「し、市民のため?へ?人を殺すのが市民のため?」

「そっか。エル寝てたもんなー。知らないよな。PTTだよ。PTT。」

レーサーはPTTの内容をかいつまんで話した。レイウッドから説明を受けていたのである。

「なんじゃそりゃーっ!!いい奴じゃんかっ。エドワード。市民のためにお縄にかかるなんてッ。」

「いや、お縄にかけたのこっちだし。」

ハカセの冷静な突込みはエルの耳に届いていない。エドワードの苦労(?)に感動してしまったようだ。

「健気なエドワード!!市民のためだったなんてッ!!」

「手のひらを返した様とはこのことだな。」

「気、けど・・・。レ、レイウッド隊長を噛んだのは・・・じ、自分のためだと思うヨ?」

イザベラがおずおずとあげた意見に対してエルはポカーンとイザベラを見つめた。

「・・・・・・あ。レイウッド隊長どうなったの!?噛まれたんだっけ!?私そこら辺の記憶が曖昧で・・・。」

「噛まれたな。しかも純血サンに。」

エルは必死に習ったことを思い出そうとする。確か、純血に噛まれたら吸血鬼化するんじゃなかったっけ?

「大丈夫だよ。あの人は免疫あるから。」

ハカセは落ち着いてエルに説明した・・・内容は大雑把に書くとこんな感じだ。

レイウッドは一度エドワードに噛まれたことがあるが、彼はケイト王の必死の対応によって吸血鬼化をまぬがれる。そして二度目の噛まれでは免疫ができておりただ吸われただけとなった。ということだそうだ。

「えぇ!?噛まれたら最期じゃないの!?教科書では対処法は無いって・・・。」

「一つだけあるんだよね。教科書にも載っていたよ。」

ハカセはあきれたようにエルに教えた。こんなことも知らないのか、という口調だったのだがレーサーも知らなかったりする。

「純血に噛まれた1日以内に違う純血に噛まれること。」

エルは頭の中でハカセが行ったことを反芻した。レイウッドはエドワードに噛まれた。で、ケイト王の必死の対応によってということは・・・ケイト王がレイウッドを噛んだ?

「ウソーンッ!!そういう仲だったの!?」

「遅いよ。みんな気づいてたよ。」

ハカセはまたまた冷ややかに言ったがレーサーも心の中で『ウソーンッ』と言っていたりした。何しろ吸血鬼が吸血する人間というのは愛している人だとかそのような意味が含まれるのだ。通りがかり吸血するわけでは無い。

ベラは知っていたもののもう一度聞くと胸が痛んだ。ケイトとは父親とともに何回かあったことがあってちゃらけているが誠実な人ということは分かった。その人が吸血行為をしたということは本当にレイウッドのことを・・・。と、聞かされた当初から考え込んでいるのだ。

「ケ、ケイト王は・・・ほ、本気かしら・・・?」

「まっさかぁ!!あの感じじゃぁ、しょうがなく・・・って事じゃない?」

軽ーくエルに言われたのがまた刺さるベラ。誰もケイト王のことを分かってあげれない・・・。


「レイチェル・・・。」

綺麗に整った顔が儚げにしかめられる。苦しげに喘いだのちまた呟いた。

「僕は君の血を・・・戴いちゃったのかなぁ・・・・。」

誰もいない牢獄の一室でそれは虚しく響いた。エドワードの中ではレイウッドはいつまでもレイチェルでありレイチェルとは自分が壊した美しい女の子であるのだ。

「違う・・・僕が食べたのは男だった。・・・血の味は一緒だったけど。」

さんざん詰問にあったが、内容はほとんど同じだった。

『誰かに命令されてやっていたのか。』だが答えもいつも一緒だった。『自分の意思でやっています。』と。すベての答えに眉をひそめられ激しい口調で同じことを繰り返し聞かれる。そこも同じだ。僕も同じことを繰り返す。しかし今日の詰問は違った。最後に『レイウッド隊長様を噛んだのも飢えのせいか?』と聞かれた。僕はそんな覚えなどない。『僕はレイウッドなどという男知りません。』すると詰問してた人が怒った。そして『お前は偉大なレイウッド隊長様のことを知らないのか!?しかもお前は2度も吸血行為を働いているじゃないか!!』そう吐いて彼はドスドスと音を立て出て行った。

「けど、2度噛んだ人なんて・・・。僕に噛まれて生き残った人なんて・・・。」

エドワードはそう呟くと頭の中で壊した女の子を思い浮かべた。

「けど・・・彼女を2度も噛んだっけ・・・?」


後でエドワードの体から薬物が検出された。渋々参加したエドワードの自由気ままぶりに怒った吸血鬼が薬物を飲ませたのでは、という見解がほとんどだった。エドワード自身は『あまり覚えていない。』としか言わなかったため捜査が進まなかった。が、エドワードは最初の話し合いの通り1ヶ月経つと釈放され自国で休養することになった。彼は薬物が検出されたためPTTから外された。薬物服用の罪には問われず彼は薬物の副作用で記憶が曖昧らしい。


それは、

「皆さん。占ってあげましょうか。」

「え?人魚。」

人魚通りを愚痴大会の後フラフラとみんなで歩いていた時だった。

占い装束で分かりづらかったがどう考えても人魚だった。周りに水が張ってあるのである。ゼリー状の水が円状にまとわりついている。まぁ、別に人魚通りなんだから人魚がいて人魚が占いをしていてもおかしくなんかない。

「あなた。そこの、ずっと嗤ってるお方。こっちに来て目を開けてごらんなさいな。」

ハカセはふらりと人魚の前に来た。エルはそのことが意外だった。まずハカセが目を開けるなんて・・・。

そして、その眼が、開かれ、た。


そこに立っていたのはハカセと人魚とベラだった。ほかの人は地面に突っ伏していた。いや、ハカセに土下座していた。そこに広がる風景にハカセは呟いた。

「嬉しいけど悲しいよ。僕はなんでこんな目で生まれてきたのかな。」

ベラは美しい赤い目を煌めかせ嗤った。

「笑うためよ。」


これで1話完結となります。くそ長い話に付き合ってくれて感謝しまくってます。けど2話もあっちゃったりもします。ごめんなさい。

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