パートナーとの出会い
マリアは美しく蒼い目を鏡で何回も見た。
信じられない。眼が光っている。これでもう吸血鬼の国には戻れないわね。嬉しいかもしれない。ずっと出たいと思っていた。私ももう56歳だ。修行に行ってもおかしくないよね。
「マリア。目ェ覚めた?フフフ。やっぱり弱いわねぇ。吸血鬼の魔力って物は。」
「あなた。イザベラだったっけ。ごめんねぇ。倒れちゃったでしょー私。」
にっこり笑うとイザベラはすっと10メートルぐらい横にずれた。後ろから轟音が聞こえてくる理由をマリアは知らない。まず10メートルも幅がある部屋って広すぎないか?
「マリアァァァァァァァァァァッ!」
「ギャァッ!キモイッ!」
エルだった。エルが走ってきた。走るほど長い廊下って長すぎないか?
「私マリアが倒れたって聞いてもう心配してたんだよッ!」
「・・・ありがとう。けどあなたも倒れたんでしょ?」
「エルでいいよっ!うん。倒れたけどすぐ立ち直ったし、マリア2日も倒れてたんだよ。」
なぜだか馬鹿にされた気分になるマリア。さっきも言っていたけど吸血鬼はもともと生まれ持つ能力が多いので魔力が少ないのだ。それで急に魔力の多いモノと繋がったので倒れたわけだ。
「いろいろ説明しにフローラがすぐ来るわ。」
「フローラ?誰それ。私は仕組みなんか知らなくてもいいわ。」
「私は知りたいっ。」
しばらしくしてフローラが来た。フローラは妖精だ。きらびやかに光る七色の羽を背中に背負い人間の10分の1程度の大きさを誇る妖精だ。
「よろしく~。ベラのパートナーだヨ。」
「こちらこそ。エルのパートナーよ。」
ほほえましく握手を(厳密にはマリアの出した小指をフローラがつかん)だ。
「私はそんなに詳しくないんだけどね。ま、説明するよ。」
「パートナーとは、一用よりそう相手の事よ。二人は目があった瞬間繋がるの。パートナーは人間同士の時の方が多いんだけど、まれに動物の場合があるの。動物にも人間にも生まれながらパートナーが決められてるのよ。」
「はいはいっ。質問。なんで生まれながらにパートナーが決められているの?」
「知らないわ。神様がそう決めたって聞くけど。」
「私からも質問していいかしら?動物って言ったけど、その中に吸血鬼も入ってたわけ?」
「うん。人魚だってユニコーンにだってあるヨ。もちろん妖精にも。」
フローラは机の上でピッと胸を張り宣言した。
「終わりよッ!!」
「終わり?フフフ。まだあるよねェ。フローラ。」
「ばれてた?そうだけどねぇ。マリアの目が赤くなったのはエルちゃんの目の色が写ったものなんだけど。ま、普通に魔力が強い方の目が写るからいいんだけど。」
「は?私の目は赤色だよ。」
エルは不機嫌そうに言った。しかしマリアの目の色は青色である。
「けど、フローラだって赤よねェ。私だって普段は青なんだけど。」
ベラはコロコロと笑った。
「だけど、それ以外はいたって普通だヨ。」
「パ-トナーの説明それだけ?」
マリアが乞うような視線をしてみせるがフローラは取り合わない。
その時、扉が乱暴に開いて美しい女顔でお馴染みのレイウッドが出てきた。
「マリアちゃん?気分はどうかな。勝手に倒れてくれてありがとうね。ここは寿壮地球支部だよ。」
「いいえ。悪魔ちゃんこそ運んでくれたのかしら。見事に私を入れられて嬉しいでしょね。寝込み襲われる準備しときなさいよ。」
「すまないが犯罪と間違えられるから5歳程度の女とやる気にはならないな。」
「56歳よ。それとも自分より年上は嫌かしら?」
「大歓迎だね。刃物を持って寝込みを襲う年上の女。・・・そそられるヨ。」
永遠に終わりそうにない笑顔での喧嘩をイザベラが微笑みながら止めに入る。
「レイウッド。マリアも疲れてるのよぉ。話しすぎ。帰りなさい。バカ。」
「怒ってる?イザベラ。」
「私が?怒るって。バカじゃない?フフ。私は怒らない。」
イザベラは赤い目を鋭く細めると顎で帰れという風に表した。
「ごめんけど、まだ帰れない。マリアに用がある。」
つかつかとマリアに近づいたレイウッドはおもむろにマリアの服を脱がし始めた。ボタン式の服を器用に胸元寸止めで開けて肩を見る。エルとベラと当の本人のマリアでさえもポカーンとしている中、レイウッドは肩にあった紋様を見て微笑んだ。
「あった、純血マーク。これでエドワードを捕らえることができるな。」
マリアはハッとした様子で飛びのいた。
「これはダメだよッ。お兄ちゃんの、お兄ちゃんに怒られるッ。」
混乱してさっきまでの大人っぽい雰囲気を殴り捨てて悲鳴を上げるマリア。王家は一度も人間ともその他雑食達と血を繋いでない。そのため誇りとして純血マークを付け、お互いと反応することにしたのだ。こらが墓穴を掘ることになろうとは夢にも思わなかったであろう。反応はマ-クが光るため他の人にもばれてしまうのだ。
「怒られないさ。すぐ牢屋に入れるから。」
「い、1ヵ月で出て来ること知ってるもん。怒られる・・・。やだ。レイチェルさんはなんでうちの国家機密を知ってるの!?」
「エドワードの裸見たことあるもん。で、何そのマークって聞いたらいろいろ教えてくれたよ。」
「はっ・・・裸?なんですってェ!!格式高きお兄様の裸を覗いた!?レイチェル時代ッ!?」
「うん。レイチェル時代。あ、下半身は見てないよ。目線そらしたし。」
完全にベラとエルは蚊帳の外である。そこで急に引き締まった顔になったレイウッドは飛びのいたまま固まっていたマリアの手首を優しく掴んだ。
「クリストファー=マリア=ド=ケイティ125世。この七宝・レイウッドの名に懸けて協力を要する。・・・のパートナーであるホームメイキング=ポリエステルにも。」
「うわ、なに急に。私も関係あるの?」
「もちろん。いいか?二人とも。」
「いやぁッ!!殺されるよッ。そんなこと・・・!!」
「いいよー。私は全然。」
対照的な反応をする二人を尻目にレイウッドは微笑む。
「じゃ、協力してくれるね。マリア。こういう時は人間側の意見を採用することに法律で決まってるんだ。」
「この悪魔・・・。嘘でしょ!?当事者じゃなくて人間重視!?歪んでるわ。そんな法律ッ」
マリアは服を正すのも忘れ絶叫した。
「うん。歪んでるね。けど使える法律は使うモノさ。」
「悪魔ちゃんなんか嫌いよ。」
「嫌いで結構。熟女趣味は無いんでね。」
「若いもん。ピチピチだもん。」
「ロリコン趣味もない。」
さっきとは違って余裕のない喧嘩に完全に置いてけぼりにされたベラが仲裁した。
「レイウッド帰って。マリアも胸見えてきてるわ。」
「はいはい。帰りますよ、イザベラごめんね。」
にっこり笑いながらレイウッドは寿壮『201号室』厳密にはエルトベラとマリアの三人部屋から去って行った。
「おいしい?ポー君。眼が赤いよ。」
「おいしいよ。母さん。眼は赤くないと信じている。」
「きょうはハンバーグなのよ。喜んで。ポー君。」
「嬉しいよ。母さん。ところで、今日の夜・・・。」
「喜び方が足りないからダメ。」
「メッチャ嬉しぃ―――――ッ!!・・・行っていい?ママ。」
「ま、いいわよ。」
ポリウレタンは食べかけのハンバーグを残して夜の街へと去って行った。
最後らへん適当ですみません。レイウッドとマリアの喧嘩に力を入れた結果です。
今回はハカセもレーサーも出てきませんでした。本当にすみません。レイウッドとマリア・・・(以下略)