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マッチングアプリで出会ったイキリ陰キャ弁護士を、三年後に好きになってしまった話の回想  作者: 絵夢


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回想2

今の穏やかな時間の中で、

ふと思い出す夜がある。


相変わらず野元さんは理屈っぽいし、

話も長い。


それでも、

あの頃よりずっと落ち着いた空気になった。


そんなとき、たまに思い出すのだ。



23歳。



マッチングアプリで初めて会った、あの夜のことを。


場所は銀座のフレンチだった。

ちょっと背伸びした感じの店。


現れた野元さんを見た瞬間、私は思った。


(……あー)



「……あ、どうも。野元です」


声が小さい。

なのに、少し横柄な立ち姿。


手には、ゴテゴテしたシルバーリング。


そのアンバランスさに、

三秒で結論が出た。


(あ、これは外したな)




席についてすぐ、

その予感は裏切られなかった。


野元さんはメニューを開くと、

注文する前から語り始めた。


「ワインってさ、値段だけで選ぶ人多いけど」


「実はその店の姿勢が出るのって、グラスワインのラインナップなんだよ」


(……うわぁ)


(もう黙って注文してくれないかな)


私は笑顔で頷きながら、

心の中で完全に引いていた。


しかも声が小さい。


聞き取るために、

こっちが少し身を乗り出す。


それがまるで

「興味あります」みたいな構図になるのも

なんだか腹が立つ。


極めつけは、彼の自信だった。


「俺さ、女性の気持ちってわりと分かるんだよね」


「表情かたいもん」


「遥香ちゃん、今ちょっと緊張してるでしょ」


「俺が緊張させちゃってる?」


(……は?)


(緊張じゃなくてイライラしてるだけなんだけど)




正直、

途中で「お化粧室に」とか言って

そのまま帰りたいレベルだった。


生理的に無理。


ギリギリ手前。


それでも、

私は席を立たなかった。


理由は二つだけ。


一つは、料理だった。


こんなに雰囲気のいい店に来たのも初めてだったし、

運ばれてきた料理が美しすぎた。

口に入れた瞬間、


(……あ)


(これ、めちゃくちゃ美味しい)


怒りとは別の場所で、

脳が冷静に判断した。


(だめだ、もっと食べてみたい)


そしてもう一つは――


(……顔なんだよね)


ふとした瞬間、

ワイングラスを見つめている横顔。


ダサいのに。


喋らなければ。


そしてあのアクセサリーを全部外せば。


普通に整った顔だった。


むしろ

すらっとしたスーツを着てるから

わりとちゃんとした大人の男に見える。


(……まぁ、顔は嫌いじゃない)


それに――


会計のとき。


彼は慣れた手つきでカードを出して、

さっと支払いを済ませた。


動きだけは妙にスマートだった。


そして帰り際、

小さなショップバッグを渡された。


「これ」


「仕事のついでに見つけたから」


「まぁ、君に似合いそうだったし」


中身は、

私がSNSで「可愛い」と書いていた

ブランドの限定リップだった。


(……あー)


(言い方)


(ほんと一言多い)




「今日は楽しかったよ」


「次は俺の馴染みの店、連れてくよ」


タクシーの前でそう言った野元さんを

振り返らずに乗車する。

私はショップバッグを見下ろし、

野元さんに向かって軽く会釈だけした。



「……マジで外れだ」


小さく呟く。


でも、そのあとで思った。


(美味しいご飯)


(このプレゼント)


(……それに、まあ見た目も)


全部を天秤にかける。


そして私は結論を出した。


「……まぁ」


「もう一回くらいなら、付き合ってあげてもいいかな」


それが三年前。


私のスマホの連絡先が、

まだ


「野元(アプリ・銀座)」


と登録されていた頃の話。


完全に「暇つぶし枠」。


最悪で――


ほんの少しだけ、

続きが気になってしまった夜だった。

異世界転生チートよりファンタジー。

お読みいただきありがとうございました!

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