残っていた運命は
「えっ。残っているのこれだけですか?」
やってきた魂の言葉に女神さまは頷いた。
「ええ。他の運命はもう残っていないの」
「えぇ……僕、選べるって聞いていたんですけれど」
「ええ。実際選べていたの。あなたの前の人まではね」
実のところ、あまり知られていないが人の運命というのは予め決まっている。
そして人は生まれる前にどのような人生を生きるかを選択が出来るのだ。
――と、言うのは建前だ。
実際のところは今回やって来た魂のように事実上の選択肢0というのは発生しうる。
「女神様。何とかならないんですか」
「何ともならないです。だって、運命ですもの」
「でも、この運命は滅茶苦茶過酷じゃないですか。だって、生まれた時に故郷を滅ぼされるし、友達や恋人は次々に死んでいくし……」
「それでも挫けずに夢を叶えられる運命ですよ」
物は言いようだ。
確かにこの運命は夢を叶えることが出来る。
実際、夢を叶えることができる運命を歩ける者は少ない。
だが、実際のところ普通の運命における夢なんてのは例えば『パン屋さんになりたい』だとか『お花屋さんになりたい』なんていう元も子もない言い方をすれば達成しようがしまいがあまり関係ないものでもある。
多くの人間は折り合いをつけて生きていくものなのだ。
だからこそ、この運命が残ったのだろうが。
「僕だって叶うなら普通の運命を生きたいです」
「皆、そう思ったから普通の運命がもうないの」
「なんとかならないんですか。こんな過酷な運命を生きるなんて――」
「どうにもなりません。あなたはもうこの運命を生きるしかないのよ」
女神さまの言葉を受けて魂は遂に諦めて運命を受け入れるしかなかった。
「安心しなさい。ここで悩みとか嫌だなぁって気持ちは消してあげるから」
女神さまの言葉がどこか遠くに響くの聞きながら魂は、今、勇者として生を受けた。
誰もやりたがらない苦難に満ちた運命を生きるために――。




