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5.秘密

まだ太陽は沈みきっていないものの、時刻はすでに遅めだった。

斜めに差し込む夕陽が、田んぼ道を歩く六人の影を長く引き伸ばしている。


――ただし、その中には一人、

ピンクの猫柄レース付きメイド服を着た少年が混じっていた。


頭には猫耳のカチューシャ、足元には猫柄のニーハイソックス。

客観的に見れば、確かに少し可愛らしい。


「はははは! 小圭、なんでそんなに歩きにくそうなんだよ!

ほらほら、大叔父さんみたいに大股で歩けって!」


魅音はそう言って、酒に酔って二次会へ向かうおっさんのような誇張した歩き方をしてみせる。


「うぅ……!」


圭一は顔を真っ赤にして、嘲笑う魅音を悔しそうに睨み、喉の奥から情けない呻き声を漏らした。


「パンツ履いてない圭一、ちょこちょこ歩いてて可愛い~!

お持ち帰り~!」


レナは圭一の歩き方を見て、身体をくねくねさせ始める。

次の瞬間に飛びかかってもおかしくない勢いだ。


「ほら圭一! いつも私の額ばっかり弾いてるじゃない!

来なさいよ! 今回は追いつけたら、思う存分弾かせてあげますわ!」


沙都子は圭一の前を行ったり来たりしながら変顔を連発する。

走れない圭一は、まさにまな板の上の鯉だった。


「みー……」


梨花は特に何も言わず、満足そうに皆の様子を眺めている。


「うあああああ!!」


羞恥心と怒りがついに限界に達した圭一は、

スカートを押さえていた手を思い切って離し、雄叫びとともに一歩踏み出した。


――全員に思い知らせてやる、そう思ったその瞬間。


突風が吹き抜け、抑えを失ったスカートがふわりと持ち上がる。

上がっていくにつれ、魅音たちの歓声はどんどん大きくなった。


「「おおおおおお!!」」


――次の瞬間。


ランドセルが一つ、圭一のスカートに直撃し、

これから起きるはずだった18禁事故を見事に阻止した。


「えぇ~」


魅音たちは一斉に残念そうな声を上げ、

圭一を救い、同時にこの地獄を作り出した張本人――公由玥を見る。


「いやぁ、危うく汚いものを見るところだった。

僕の目のためにも、圭一、もう少し頑張ってね」


玥は相変わらず笑顔だったが、内心では確かに安堵していた。


「はぁ……ありがとう……

……いや……くそ……ありがとう!」


圭一は礼を言うべきか怒るべきか分からなくなり、

感謝と憤怒が思考回路を焼き切っていた。


そのもじもじした姿を見て、玥の中の小悪魔がぴくりと尻尾を振る。


「……何か、言い忘れてない?」


「うっ……!

あ、ありがとうございま……主、ご主人様……!」


圭一は耳まで真っ赤になり、感動は一瞬で消え去り、残ったのは羞恥だけだった。


その様子に、魅音は腹を抱えて地面を転げ回る。


自分に不利な話題だと悟ったのか、圭一は慌てて話題を変えた。


「そ、そういえば!

もうすぐ村長の家じゃないか?」


「たぶんね。

この先を少し行けば着くと思う」


玥はそう答えるしかなかった。

まだ来て一日目。朝の記憶を頼りに帰っているだけだ。


「その通り!

村長の家は学校から一番近いんだよ」


魅音の言葉で、玥はようやく皆が「送っていく」と言ってくれた理由を理解した。


他の皆は、もう少し先で別れるらしい。


やがて、見慣れた二階建ての家が見えてきた。

――村長、公由喜一郎の家だ。


だが、意外なことに、喜一郎は家の外を行き来していた。

明らかに、誰かを待っている様子だ。


「あれ、村長じゃない?

完全に小玥待ちだね。これは大ピンチだよ~」


魅音は状況を即座に察する。

連絡もなく部活に参加した玥を心配して、待っていたのだろう。


「……うん。急ごう」


玥の声に、わずかな緊張が滲む。

歩調を早めると、他の皆も自然とついてくる――

ただし、大股で歩けない圭一を除いて。


「ちょ、待てよ! 置いていくな!」


案の定、玥は門口で喜一郎に呼び止められた。

怒りはない。

だが、無表情な冷淡さは、怒鳴られるよりもずっと怖い。


「……やっと帰ってきたか」


ただの確認の言葉。

それでも、圧迫感は想像以上だった。


「……ごめんなさい」


玥は少し考え、まず謝った。

何も言わないよりは、ずっといい。


「遅くなると、どれだけ心配されるか分かっているのか」


喜一郎の声は平坦で、玥は俯くしかない。


他に人がいることを考え、喜一郎は玥に先に家へ入るよう命じた。

玥が離れた後、喜一郎は魅音たちに向き直る。


「見苦しいところを見せてすまない。

君たちも早く帰りなさい。遅くなると、家族が心配する」


魅音たちは冗談をやめ、帰ろうとした。

――その時。


梨花が、喜一郎にまっすぐ問いかけた。


「……喜一郎。

公由玥って、いったい誰なのですか?」


「……梨花様。

彼は私の外孫です。それ以上は……

もう遅い、早くお帰りなさい」


誰の目にも、何かを隠しているのは明らかだった。


だが、梨花は引かなかった。


「どうして、突然雛見沢に来たのですか?」


「それは……

あまりに私的なことだ。これ以上は話せない。帰りなさい!」


「……私は――」


魅音が慌てて梨花の口を塞ぎ、

喜一郎に一礼すると、皆を引き連れてその場を離れた。


少し歩いたところで、魅音はようやく手を離す。

梨花が不満げに口を開こうとした、その前に魅音が言った。


「さっきはごめんね、梨花。

あれ以上聞くのは、誰にとっても良くなかった」


一拍置いて、続ける。


「ねえ梨花。

今日、小玥はあなたに何かした?」


「……みー。

“何か”って、どういう意味なのです?」


「いや……

あんなに食いついたから、何かあったのかと思って」


魅音は、梨花の反応に少し戸惑った。

さっきの様子は、明らかに普通ではなかったからだ。


その会話は圭一たちの好奇心も刺激した。

隠し通せないと悟り、魅音は皆を呼び寄せる。


「……あんたたちも来な。

小玥に一番近いのは、もうあんたたちなんだから」


円になった一同に、魅音は声を落として言う。


「これから話すのは、私が偶然聞いた話。

本当かどうかは分からないし、雛見沢でも知ってる人はほとんどいない。

絶対に他言しないこと。

明日も、小玥の前では触れないこと。

いいね?」


真剣な声音に、誰も冗談を言わず、静かに頷いた。


「……まず結論から言うね」


魅音は一度息を吸い、


「小玥は――危険人物だよ。」

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