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第31話 クズな彼女と迷路に入る

 パンフレットを眺めていると、右隣に男子生徒が並んで声を掛けてくる。


 どうやら宣伝担当なのだろう。

 首から『最果て迷宮・一年二組』と書かれたダンボールをぶら下げている。


「迷宮? それ、どんな出し物ですか?」


「ダンボールで作った大迷宮です! LL教室をぶち抜いて作った迷路で、脱出タイムに応じて豪華景品もありますよ~。今ならすげえ空いているので、良かったらぜひ!」


 開幕直後に閑古鳥が鳴いている時点で、単に不人気な気もするが。

 俺は気乗りしなかったため曖昧に首を傾げるが、名雲さんは。


「いいじゃないか、空見君。遊戯系の出し物で文化祭の雰囲気を味わおう」


 どうやら気になるみたいで、それを聞いた男子生徒は嬉しそうに頭を下げる。


「あざす! LL教室はあっちの角を曲がって、少し歩いた先にあるので! あ、もし気に入ったらパンフレットに挟まっている投票用紙に、一年二組って書いて受付の集計箱に入れてくれると助かります! よろしく頼みます!」


 男子生徒は客引きが成功して気を良くしたのか、そのまま別の来場者に声を掛け始めた。


「普通こういうのって、場所案内までするものだろ」


「まあまあ。高校生の仕事ぶりなんて、こんなものだよ。それじゃあ迷宮とやらに行ってみようじゃないか」


 名雲さんは俺の前を歩いて、少し足早にLL教室へと向かう。

 言われた通り場所はすぐに分かった。二人揃って受付で簡単な説明を受けて、教室に入ると……。


「なるほど。這って進むタイプか」


 ダンボールで作られた小さな洞窟が、一面に広がっていた。

 立った状態で眺めていると、雑な配線のように入り組んでいるのが分かる。


「人の背丈に合わせて壁を作ると、それだけで大量の段ボールが必要になるからね。制作時間もコストも削減出来る。一年生の出し物としては上出来だよ」


「文化祭評論家の方ですか? 名雲さん、先に入るか?」


「……いや、これは私が先に入ったら良くないでしょ」


 名雲さんは不満げな視線を俺にぶつけてから、入り口を指差す。

 どういうことかと思ったが、すぐに理解した。


「そっか。四つん這いで進むタイプだから、俺が後ろだと……」


「そういうこと。まあ、今時の女子は対策としてショートパンツやスパッツ……男子に分かりやすく言うと、見せパンを穿いているから問題は無いけど」


「そうなのか。じゃあ、別に先に入ってもいいと思うけど」


「あのね、空見君? そういう問題じゃなくてね? 見せパンだから見せていいとか、その男子的で安直な発想は止めた方がいいよ。万が一の対策であって、ご自由にどうぞというわけじゃないのさ。私の見せパンは君専用のフリーパンツじゃありません」


「フリーハグみたいな表現をするな。分かった、分かった。俺が悪かったから先に入らせていただきますよ」


 女子の気持ちは良く分からないな。

 そもそも、名雲さんは制服のスカートを極端に短くするタイプじゃないし、仮に四つん這いでも見えないと思うけど。


 洞窟、もといダンボールの中に入ると意外と薄暗くて進行方向が分かりづらい。

 しかしテストプレイを重ねた結果なのか、天井部分の一部が採光用に切り取られたりしていて、中々凝っている。


「さて、普通に考えればLL教室の出口側に進めばゴールだと思うけど」


「空見君? 早く進んでくれない? 君は私にフリーお尻を見せつけたいのかな? 小さくて引き締まっていそうで、女子を嫉妬させる良いお尻だね。九十五点☆」


「ひ、人の尻に点数を付けるな! そもそも見ないでくれ!」


「先に入って言われた私の気持ちが分かったかな? ほらほら、ゆっくりしているとその間にも私は君のお尻を観察し続けるよ」


 名雲さんは顔こそ見えないが、実に楽しそうだ。

 なるほど……異性からいやらしい視線をぶつけられる女子の気持ちが分かった。

 無自覚でもさっきの発言は反省しよう。


 それから俺と名雲さんは直感で道を選んで進んだけど、ほぼ一本道の構造だったため、迷宮の名に泥を塗るようなクソ迷路だった。

 そりゃ閑古鳥も鳴くし、入ってきた生徒はつまらなさすぎて泣くわ。


「文化祭評論家の名雲さん、この迷宮はどうだった?」


 俺は出口で景品パインアメを貰って、名雲さんに感想を尋ねる。


「迷路は五点くらいかな。でも空見君のお尻につけた点数と合算して、百点だよ」


「じゃあもう、ここはいっそ迷路を潰して俺が四つん這いになっていればいいのでは?」


「迷路は迷路でも、制作過程そのものが迷子になった結果……というオチを含めて、何だか現代アートみたいでいいね。私は嫌いじゃないけど、だが他の生徒はどうかな?」


 LL教室に入ったら四つん這いの俺が鎮座している光景、シュールすぎる。

 名雲さんも似たようなことを思ったのか、俺を見てから小さく噴き出した。


「人の尻を笑うな」


「あはは、ごめんって。怒らないで、別の出し物を見に行こうよ」


 一発目の出し物は割と酷かったけど、退屈はしなかったな。


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