第34話 クズな彼女と他校訪問
「ちなみに、どこの高校に行く予定なんだ? この辺りは全然知らないんだが」
「鷹森高校だよ。ここからバスに乗って十分くらい」
聞いたことはある。確か、普通の公立高校だ。
偏差値が極めて高いわけではないが、立地と制服デザインが優秀で、高校受験では人気校の一つ。
ちなみに俺たちの学校も似たようなもので、校風や通っている生徒の感じは割と近いかもしれない。
停留所には既にバスが停まっていて、俺たちは発車前に何とか乗り込む。
文化祭の影響だろうか、様々な制服を着た高校生が乗っている。
人が多すぎて座ることも出来ず、俺たちはただ黙って目的地まで揺られるばかり。
それから名雲さんの言う通り、十分ほどで市街地の外れにある高校へと到着する。
「無事に到着だね、空見君」
バスを降りると目の前に、鷹森高校の正門が見えた。
正門には派手な装飾がされており、高さ二メートルほどの入場門が出来ていた。
中央には看板が設置され、達筆な文字で【清風祭】と書かれている。
「俺たちの高校も文化祭には気合入れている方だけど、こっちも中々すごいな」
「うん。私たちの文化祭に相応しい雰囲気じゃないか」
「俺たちの文化祭ではないよ? あ、そうだ。入る前にさ、今回のゲームを教えてくれよ。ただ文化祭を満喫して帰るだけになったら、主旨がズレるだろ」
「おっと、忘れていたよ。今回のゲームはすごく簡単なものでね。私が事前に設定したNGワードを、君が口にしたら負け。同伴料金を頂きます」
「いよいよ本職のレンタル彼女みたいになってきたな……で? そのNGワードは最終的にどうやって確認する気だ? やり方次第だとイカサマ出来るぞ」
名雲さんは「そう言うと思った」と言ってから、ブレザーの内ポケットを探る。
そこから小さな封筒を取り出し、俺に手渡した。
「その中にNGワードが書いてある紙が入っているから、帰る時に一緒に開けよう。紙には私のサインが入っているから、逆に言えば空見君も偽装は出来ないよ?」
「そんなことするかよ。だけどNGワードって言っても、せめてどういう類か分からないと俺に不利すぎるだろ。それこそ『名雲さん』とかだったら瞬殺だし」
「もちろん、そのヒントもあげる。NGワードは【文化祭で男の子が女子に言いそうなこと】だよ。ここまで具体的なヒントだし、文句は無いよね? 全文一致じゃなくて、似たような言い回しでもアウト……これでどうかな?」
単語というより、台詞に近いみたいだな。
これなら俺にも勝ち目がありそうだ。
「分かった。じゃあこの封筒は俺が預かるから、帰りに駅前で答え合わせだ」
「交渉成立……ということで、そのゲームのことは一旦忘れてさ」
名雲さんは俺の腕を掴んで、軽い足取りで正門へと走り出す。
「今は文化祭を楽しもうよ。せっかくの休日だし、ね!」
この返答でも一発アウトになりそうだし、そんなに気を抜くことも出来ないが。
「そうだな。俺たちにとって、人生初めての文化祭だし」
バカなクラスメイトたちによって、台無しにされた文化祭は無かったことにして。
俺たちは他校の文化祭を、楽しむことに決めたのだった。
***
「空見君、まずは何から見る?」
下駄箱の前で受付を済ませて、俺たちはパンフレットを片手に校内へ入った。
当然、どこに何があるのか分からない。校内に漂う雰囲気は既視感があるのに、全く知らない場所だなんて不思議だ。異世界に迷い込んだみたいで、冒険心がくすぐられる。
「軽食系はまだ早いよな。近くでやっているのは縁日とかだけど」
「お兄さんたち、迷宮に興味無いっすか?」




