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第25話 クズな彼女は後方腕組み彼女ヅラをする

「このお店が出来た頃から、夏菜ちゃんはずっと私の練習に付き合ってくれているもんね」


「そうなんですか? どういうきっかけで?」


「インスタで募集をかけたんだけど、お店のフォロワーが少なすぎて応募者が夏菜ちゃんだけだったの……でも夏菜ちゃんの写真を掲載してから予約がすごく伸びてね! やっぱり可愛い子にカットモデルをやってもらえると、効果抜群! って感じ!」


 タブレットでもう一度ページを見てみると、確かに名雲さんの写真がある。

 俯瞰や背後から取った写真がメインなので、顔はあんまり見えないけど。


「空見君。家に帰って私の写真を保存する気かな?」


「しないよ。保存したところで使い道が無いだろ」


「どうかな? 私をスマホのロック画面に設定すると、金運がめちゃくちゃ上がるよ」


「これ以上金運を上げても仕方ない気がするけど……そして何なんだ、そのオカルトは。俺が知らないだけで特殊な宗教の宗主なのか?」


 学校での人気を考えたら、確かにあってもおかしくないけど。


「……いいなあ、二人とも。ちゃんと青春ど真ん中の高校生って感じ」


 小金さんは感慨深そうに頷き、それから小さく溜息を漏らす。


「私が女子高生だった時も、君たちみたいに楽しそうなやりとりをしている女子グループがあったんだけど、ちょっと羨ましかった。当時の私は恋愛脳だったから、友達との時間よりも彼氏との時間ばっかり優先しちゃったの」


 もう戻らない時間を振り返って、小金さんは切ない笑みを浮かべる。

 そしてすぐに、「そうだ」と思い出したように俺たちに尋ねた。


「二人は付き合っているの?」


 すぐに名雲さんが否定すると思ったが、何故か彼女は真顔で黙ったままだ。

 え? これ俺が説明しないといけないの? 

『金だけの関係です』って言ったら、このお姉さんどういう気持ちになるんだろうか。


「まだ……仲良くなり始め、と言いますか。そんな感じです」


 友達でも恋人でもない。実に歯切れの悪い言葉だったけど。


「そうなんだ! でもでも、そういう時期が一番楽しいよね~! 少女漫画でも付き合うまでがピークで、それより後は別のカップルとかの話が始まっちゃうパターンあるけど、私としては邪道っていうか蛇足っていうか……あ、そろそろカットの準備しようか!」


 小金さんは俺を席に座らせて、カット用のクロスを被せてくれる。

 普段は安いメンズカットを利用しているから、今更になって緊張してきた。


「小金さん。私も後ろで見ていていいかな?」


「いいよー。夏菜ちゃんも意見があったら教えてね!」


 許可を貰った名雲さんは小さな腰掛椅子を引っ張ってきて、少し離れた位置に座る。

 そんな後方腕組み彼氏面ポジションで眺めないで欲しい。


「さて、それじゃあ始めよう! 基本的にはカットだけで済ませる予定だけど、パーマやカラーも入れちゃう?」


「ええっと……男子は校則で染色とパーマは禁止だったはずなので、カットだけで」


「かしこまり! 夏菜ちゃんはどういうスタイルがいいと思う?」


「そうですね。彼はやや癖毛っぽいので、それを活かしたスタイルにしましょう。髪色は元々黒よりは薄い茶色系統なので、ある程度長さがあっても重めの印象にはならないはずです」


 俺の保護者ですか? ただ、俺よりも俺の髪に詳しそうだし、余計な反論はしないで任せてしまった方がいいだろう。


「じゃあルーズ感のあるマッシュスタイルで、ハードワックスで軽い分け目と髪のアクティブ感を演出すればいい感じになるかな。癖毛があるから上手くまとまりそう! 男子高校生がこれやると、本気でモテちゃうやつだよ~、空見君」


 ほぼ何を言っているのか理解出来ないが、とりあえずモテるらしい。助かる。

 でもまあ、こんなのは分かりやすいお世辞だ。


 三十点の男が髪を変えたくらいで、八十点になれるわけが――。


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