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第24話 クズな彼女はモデル(?)さん

 

「はぁ、ダルいわぁ……まあ、そこまで言うなら試してあげてもいいけど?」


「あれ、気乗りじゃないみたいだね? それならこの話は無かったことにするよ。それじゃあ空見君、また明日ね」


「すみません! 普通に興味あります! 気怠さ演出してごめんなさい!」


「反省の速度が早い。素晴らしいね。あと、今時の男子って『ダルぅ』とか『おもんなっ』みたいに『ラフでイケている俺』を演出するけど、あれ女子から一番嫌われるから今後は二度とやらないでね。あと関東出身のくせに博多弁使う奴とか」


 後半は明らかに私情が混じっていそうだが、言いたいことは分かる。

 ダルいならさっさと帰れって思うし、インフルエンサーを模倣した方言使っている奴って男から見てもかなりキツいし。


「それじゃあ、今から君を『クラスで一番ではないけど、四番目くらいには格好良くて、一部の女子をメロらせる隠れ人気男子』程度にはしてあげよう!」


「……要するに、万人受けする素質は無いってこと……かぁ」


「勉強と同じだよ。八十点くらいなら一夜漬けで取れても、百点を取りたいならその何倍も時間がかかるし難しくなるだろう? とりあえず君は八十点の男になればいいんだよ」


 確かにその通りか。

 どんな分野であっても、一番になることは相当な努力が必要だということは、小学生だって分かる。


「それに忘れちゃいけないよ、空見君」


 名雲さんは俺に人差し指を突き出して、胸元の辺りを軽く叩く、


「自分を磨き続けて八十点の男にしかなれなくても、誰かにとっては百点の男なんだから。ニ十点オマケしてくれる女の子と出会えばいいだけさ」


「……何か、今日の名雲さんっていつもより楽しそうだな」


「楽しいよ。君と居る時は、大体愉快な気分になっているとも」


 俺と遊ぶだけでお金が増えるんだから、そりゃそうだろう……と、それを口にしたらまた機嫌を悪くしそうなので、あえて黙っておく。


「それじゃあ行こうか、空見君。君の知らない世界に、私が連れて行ってあげる」


 ***


「夏菜ちゃん、来てくれてありがとう!」


 名雲さんが案内してくれたのは、駅の近くにあるヘアサロンだった。

 大通りの裏、その更に奥まったところにあるお店で、マンション一階のテナントに入居してあるタイプ。

 男子が一人で入るには緊張感のある、お洒落な雰囲気の店だ。


「お忙しい中、急に来ちゃってすみません。小金さん」


「ううん、大丈夫だよ。平日の夕方って、どうしても予約が埋まらないから大歓迎って感じだし。今日は夏菜ちゃんじゃなくて、そっちの彼がモデルになってくれるのかな?」


 モカブラウンの大人びたロングヘアの女性……小金さんが俺に尋ねてくる。


「モデル? どういうことですか?」


「あれ、夏菜ちゃんから聞いていないの? カットモデルって言ってね、私たちスタイリストの練習をさせてくれるお客さんを、定期的に募集することがあるの。上手く仕上がったらサロンの予約ページに仕上がりの参考として掲載することもあるよ」


 小金さんは慣れた手つきでお店の備品らしいタブレットを操作し、サロンの予約ページを見せてくれる。教えてくれた通り、男女いくつかのパターンに分けてカット後の仕上がり写真が掲載されている。

 それより気になるのは……。


「ここの店名が【レモンココア】という店名なのは、何か由来があるんですか?」


「店長である私の名前が心愛なの。レモンは学生時代の面白い思い出に由来しているんだけど、話すと長くなるからカットしている途中に教えてあげるね。ふふっ」


「はあ……そうですか。カットモデルでも料金は発生しますよね? 財布にお金を入れてきていないので、電子マネーで支払い出来たら助かるんですけど」


「カットモデルは無料だから大丈夫だよー? 写真掲載が必須なのと、ある程度のスタイリングは私に任せてもらう形になっちゃうけど、それで良ければ!」


 つまり無料で髪を切ってもらえるのか。こういう所でカットすると、高校生でも料金が五千円くらいするって聞くし、めちゃくちゃお得に感じるな。


「ちなみに私もここの専属カットモデルだよ、空見君」


 顔を後ろに向けると、名雲さんがドヤ顔で腕を組んでいた。何で誇らしげなんだ?


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