第14話 クズな彼女のおすそわけ-1
「……何か、しんみりしちゃったな」
店の外でブタメンが出来上がるのを待つ間、俺たちは沈黙を避けるように話をする。
「そうだね。偶然だったけど、ここに来られて良かった」
「ああ。残念ながら名雲さんの魔法は見られなかったけどな」
「君のことだから、そう言うと思った。だからこれを買ったのさ」
名雲さんはレジ袋から、最後に買った『おとくでっせ』を取り出して、俺に一つ渡す。
「最後に運試しをしない? 当たりを引いた方が勝ちっていう、シンプルなやつさ」
「面白いな。言っておくけど、俺は結構運が良い男だぞ?」
「私もそうだよ? さっきは幸運の女神が不在だっただけ。コンビニでファミチキとか買って帰ってきたはずだから、今度は負けない」
「それくらい俗っぽい女神の方が駄菓子の当たりを引き寄せてくれそうだな……」
俺たちはカップを足元に置いて、『おとくでっせ』の当たりを確認する。
台紙に書かれた文字を見て、勝利を確信した。やっぱり俺は運がいい。
「当たったぞ、しかも百円だ」
「私も当たりだよ! 百円ゲット!」
思わぬ展開に、俺たちはそれぞれの当たりを見て噴き出してしまう。
なるほど。確かに幸運の女神はご帰宅していたようだ。
名雲さんが選んだ物が、二つとも高額当選するなんて。
「残念だけど勝負は引き分けだね」
「最後に魔法を拝見出来たな。でも……この当たり、今更引き換えるか?」
「ちょっと気まずいよね。惜しいけど思い出に取っておくとか……あ、空見君」
俺たちの隣に、小さな自転車が二台停まる。
小学校低学年くらいの、男の子と女の子。
二人はそれぞれ首から小さな財布をぶら下げて、楽しそうに店内に入ろうとする。
「ねえ、君たち」
名雲さんが声をかけると、二人は「こんにちは!」とやけに大きな声で挨拶をする。
これ不審者遭遇時のマニュアル行動じゃないよな?
「はい、こんにちは。二人で買い物?」
「うん! お母さんにお小遣いをもらったから、リカちゃんにお菓子買ってあげるの!」
男の子の方が答えて、女の子は恥ずかしそうにその裏に隠れて頷く。
「そっか。じゃあそんな君たちに、良い物をあげる」
俺は名雲さんに当たり券を渡すと、彼女は二人に一枚ずつそれをあげた。
「当たり券だよ、使い方分かる?」
「え……! い、いいの? あ。でもお母さんに人からお金やお菓子を貰っちゃダメって」
「だったら大丈夫。それは駄菓子と引き換えられるだけで、お金でもお菓子でも無いから。使い方が分からなかったらお婆ちゃんに聞いてみるといいよ。リカちゃんと二人で、好きなお菓子を選ぶといい」
二人はちょっとだけ困惑していたけど、すぐに満面の笑みで「ありがとう!」と大きく頭を下げた。
その反動で首から下げた財布が大きく跳ねて、ちょっと微笑ましい。
「ちゃんと仲良く買い物をするんだよ、少年少女たち」
名雲さんの言葉に二人は「はーい!」と叫んで店内へ駆け込んだ。




