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幕間2 名雲夏菜は彼のモテ度を考える

 

 空見君は、実はモテるんじゃないかと私は思う。

 もちろん、彼は友達が居なくて恋人も居ない孤高の男子だけど、同じ教室、学び舎で時間を過ごしていると数えるほどには女子と交流する瞬間を見ることが出来る。


 例えば私の幼馴染、海瀬美波(うみせみなみ)と軽い小競り合いをする時。

 空見君は見た目が怖い美波ちゃんに対しても、どこか上から目線で接する。

 傍から見たら本気で口喧嘩をしているかのように、二人とも語気が強い。

 だけどそのやり取りには遠慮が無くて、成熟した関係のようにも見えてしまう。


 だから一部のクラスメイトからは、熱愛疑惑を向けられるんだろうね。


「……私にも、もう少しラフな感じで接してくれていいのに」


 当たり前だけど、空見君は私に対して一線を引いている。

 貯金を狙う女子に対する態度としては、実に正しい。正しいけど、面白くない!

 せっかく遊んであげているんだから、彼はもう少し親密になる努力をすべきだ。


「で、お次は年上の女子と親しげじゃないか」


 図書室に入ると、カウンターで先輩と談笑している彼を見つける。

 利用者が入ってきたのに、こっちに目線を向けることはない。

 いや、いいんだよ? 時給が発生するバイトでもないし、徹底した仕事ぶりを見せろとは言わない。


 だけど私がやってきたのに気付かないまま、会釈の一つも無いのは違くない!?


「……何を喋っているのかな?」


 カウンター近くの新刊コーナーで、物色する振りをして会話を盗み聞く。

 ギャルが好きとかどうとか。ギャルが好きなの!? 

 もしかして美波ちゃんの見た目がツボだったりするのかな……?


 空見君が先輩としている会話は、美波ちゃんとのそれとは違って朗らかな雰囲気だ。

 私からすれば、こっちの方がよっぽど熱愛疑惑が浮かびそうな関係だと思う。

 三十分ほど様子を見ていたけど、途中で先輩の方は帰ってしまった。

 幸せそうな顔で、まるで()()()()()()()()()頬を染めながら。


「むぅ……実は付き合っているとか、無いよね」


 きっと、空見君は恋人が居たら二億円を注ぎ込むタイプだと思う。

 それは実に良くない。私の計画が破綻してしまう。


 それに……付き合っている人が居るなら、付き纏うのも悪いし。

 空見君には貯金を全て吐き出すまで独り身で居て欲しい。


「おっと、私もそろそろ勉強をしないとだ」


 自習スペースに確保した自席に戻って、参考書を広げてみるけど中々頭に入らない。

 夏休み明けの時点で二年生までの範囲は全て終わっているから、焦る必要は無いけど。


 手持無沙汰になって、クリアファイルに入ったプリントの整理を始めていると。


「……こっちもまだ、先の話か」


 行きたいオープンキャンパスの候補をまとめたルーズリーフと、先週参加したとある説明会で貰ったプリント。本来ならどっちも、高校一年の段階では考えなくていいはずだけど。

 将来設計はしっかりしておかないと、どこかで痛い目を見るだろうから。


「はぁ……つまんないなあ」


 人が殆ど居ない自習スペースの隅で、存分に独り言を呟いて机に腕と顎を乗せる。

 気乗りしないから断ったけど、友達と買い物にでも行けば良かったな。

 行ったら行ったで、時間を無駄に使っている後悔が押し寄せて来るんだけど。


 ふと、数日前に空見君に夕食を食べさせてもらったことを思い出す。

 どれもおいしくて、作り手の真心を感じる料理たち。

 男子は料理が出来ないと思っていたけど、私より上手に出来ちゃうなんて本当にずるいよね。


「ふふっ。今度はどうやって彼からお金を巻き上げようかな」


 頭の中で色んなことを妄想していると、脳がリラックスしていく。

 瞼の重みを感じながら、微睡の中で曖昧な夢を見た。


 空見君と私が、二人で並んで雪の降る夜道を歩く夢。

 黄金色のイルミネーションが、街灯がわりに私たちの足元を照らしてくれる。


「まだ秋、なのにね……」


 現実になる可能性は殆どないかもしれない。

 この夢に至るまでは時間も、関係値も、まだまだ積み重ねないといけない。

 それでも、どうしてだろう。


 頭の中いっぱいに広がるこの夢を見ていると、安心した気持ちになるのは――?


 そして私は、図書室の静寂に負けて寝落ちしてしまったのだった。


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