表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月の影に隠れて

作者: れい
掲載日:2025/11/04

2016年7月20日 午前0時0分


気づいたら、満月を見ていた。


寝ていたはずなのに、気づけばそこにいた。


きっと最悪な夢を見たからだろう。


そう、大好きな君が死ぬ夢を。



2016年11月20日 午前7時35分


なんだか、ものすごく眠たい。

昨日は確か22時には眠りについてしまったいた気がする。きっと部活の疲れだろう。


なのに、なぜか満月を見ていた。


月明かりで目が覚めてしまったのかわからないが、あれのせいで寝不足だ。

僕は大きなあくびをしながら登校する。


「おはよう、さく。」


後ろから声がした。いつもの聞き馴染みのある声だ。

真宵まよいか…おはよ…」

「相変わらず眠そうだね。朔が朝ちゃんと目を開けてるとこ、見た事ないよ。」

「こっちだって忙しいからしかたねーんだよ。」

「あはは、それもそうだね。」


なんて、他愛もない会話をして歩く。


この時間が、幸せだった。


まだ付き合ってはないが、真宵はきっと僕にとって特別な人だ。


───こんな日々がつづけばいいのに


 



そんな理想は、瞬時に砕かれた。

大きな音と共に、目の前には大型トラックがよぎる。

正確には、もう通り過ぎていた。

僕の隣の真宵を、轢きながら。


「……………は?」


生きているか死んでいるかなんてわからない。

でも、生きていて欲しい。

でも、確実に死んでいるだろう。

それでも現実を受け止めきらず、その場に立ち竦んでしまった。


「ま…真宵っ!」


体が動いたのはもしかしたら数秒後かもしれない。

とにかく体が向かったのは、トラックの先。

そしてそこには、残酷な現実を叩きつけるような、真宵の体。


「あぁ…………あぁ……!!!!!」


僕はおそらく意識を失ったのだろうか。

記憶が曖昧になる。

目の前が真っ暗になってゆく………………。




2016年7月20日 午前0時0分


「っはぁ…!!!!はぁ…はぁ…………夢……か……」


とても受け入れ難い現実のような夢。

あれが現実なわけがない。

暗い顔の自分とは裏腹に、満月が明るく僕を照らす。


夢…なのか…?


2016年7月20日 午前7時35分

きっと夢に違いない。そうだ、夢なんだ。

そう思い、夢と同じ通学路を辿る。

夢と同じ声がする。

「おはよう、朔。」

「…おはよう、真宵。」

涙が溢れそうになった。夢だった。

そうだ、夢だっ───





また、だ。

夢じゃなかった。

また同じ時間。同じ場所。同じトラック。


真宵が死んだ。


2016年7月20日 午前0時0分

「っはぁ!!!!…………また………まただ。」


頭が混乱している。息が荒くて、視界が揺れる。

でもわかった、これは夢じゃない。


「時間が…戻ってる…。」


真宵が死ぬたび、満月の夜に戻される。

なぜか満月を見ている僕に、戻ってくる。

理由はわからない。が、やるべき事は一つ。


「真宵を絶対に死なせない。」


僕の中で、決意がみなぎった。




2016年7月20日 午前7時25分


「あれ?朔?」

「おはよう真宵。」

作戦は簡単。登校ルートを変えればいい。

あんなことがあって正気を保っていられる自分もおかしいと思うが、だがやるしかないのだ。


すでに何度か死んだ真宵を見た。

戻っているとわからず、苦しい現実を何度か過ごした。

そこで気がついたことがある。

それは、【全て同じ現実ではない】と言うこと。

僕の行動次第で現実は大きく変わる。

だから変えなきゃならない。

今日は、死なせない。絶対に。


「珍しいね、朔のほうが私を待ってるなんて。」

「まぁそう言う時もあるでしょ。」

「そう言う時ってなによ〜素直にいいなよ〜?」

時間を見る。すでに死んだ時刻は過ぎていた。

「よかった…」

僕はほっと胸を撫で下ろす。

「ん?なにがよかったの〜?」

真宵の言葉を無視して申し訳ないが、僕は小さくガッツポーズをする。

なんだ、こんな単純なことでよかったんだ。

これで、真宵は生きていられ─────




大きな音が後ろから聞こえる。

嫌な気配が背中に伝わる。


「……………もう……やめてくれよ………!」


僕は振り向いた。


そこには、軽自動車と真宵の体があった。



2016年7月20日 午前0時0分


「…………またか。」

嫌な話ではあるが、慣れてしまったのかもしれない。

真宵が死ぬことに。


「また守れなかった…」


いや違う。慣れたなんて使いたくない。

数えきれないほど繰り返してきた。

どうして?トラックは回避をした。

そうしたら軽自動車と事故。


どうにかして真宵を生きさせなきゃならない。

そう誓った。


トラックとの交通事故。

軽自動車と交通事故。

バイクとの交通事故。

通り魔による殺害。

信号無視をした自動車と交通事故。


何度か真宵に学校に行かないことを説得してみた。

ただ、学校に行かなかった場合、確実に家で火事が起きた。


せめても、このループのことを知っている僕が近くで守るしかなかった。


2016年7月20日 午前8時0分


なんとか真宵を学校まで生かすことができた。

なぜかあんなに苦労した道のりも、今回はすんなり行ってしまった。

「じゃあ、またね」

真宵とはクラスが違う。なのでここでお別れした。


授業なんてまともに聞いていられなかった。

時間が戻る?ループする?そんなの誰も信じてくれないだろうし、なにより僕が一番信じられない。


「やっぱり…ひどい夢なのかな…」


そんなわけないと思いつつ、そう思うしかなかった。



2016年7月20日 午前11時50分


先生が言う。今日は日食らしい。

12時ぴったりに日食が起こるらしく、授業を早めに切り上げてくれた。

今までのことで日食なんて気が気じゃなかったが、せっかくだしと思いふと窓の外に目をやる。


ガタンと椅子を倒し、僕は立ち上がった。


「真宵……!?」


真宵が屋上にいる。そして、今にも飛び降りそうな場所に。


僕は咄嗟に体が動いた。

気づけば屋上のドアに突っ込んでいた。


「何してんだよ真宵!!!!!!」


「朔…ごめんね、こうするしかないんだ。」


満ちた太陽が、欠け始めていた。


2016年7月20日 午前11時58分


真宵が飛び降りた。



そして、気づけば──────



あの満月の夜に戻っていた。



2016年7月20日 午前11時50分


僕は、真宵のいる屋上へ向かう。


落ち着いて、冷静に諭そうとしたが、僕の口から出た言葉は真逆であった。


「…どうしてっ!どうして死のうとするんだよ!?」


真宵が静かに話す。


「…私も死ねたらどんなに幸運かわかんないよ。」


「え…?」


「私は死にたいのに死ねなくて、生きたいのに生きられないの!」


「ど、どういうことだよ真宵…。」


「朝起きて自分が生きていることに絶望した。台所から包丁を取って首を切ってみた。海に身を投げてみた。家に火をつけてみた。何をしても!あの満月の夜に!戻ってきちゃうの!死んでも死んでも死にきれなくって、生きたくても生きたくても生きれない!!

そんなの………………あんまりだよ……!」



「真宵…………」


僕は言葉が出なかった。


「だから私は試しているの。君が生きて、私が死ねる方法を。」


真宵は飛び降りようとする。


その瞬間、僕は体を乗り出して───


真宵を屋上側に突き飛ばし、代わりに自分が身を投げていた。


「朔っ!!!!!!」


12時。日食の瞬間。




2016年7月20日 午前0時0分


また満月の夜。涙が止まらない。

また、あの日、あの空。

同じ日─7月20日。

「また、私は死ねなかったんだね。」


いつもの朝、朔は私を守ってくれている。

私が死ななように頑張っているんだね。

ありがとう、朔。

大好きだよ。


朔が死んだ瞬間を見た。


それでも世界は前に進まなかった。


何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も私は朔が死ぬところを見た。


交通事故なんて当たり前。不幸なことで、どれだけ守っても、彼は死んでゆく。


なら、私が死ねばいいのかな。


私はとにかく死んでみた。


死んで死んで死んでみた。


前の記憶はないけれど、確かに死の感触だけ残ってる。それが私の中の、唯一の記憶。


朔が死ねば、私は生きる。


私が生きれば、朔は死ぬ。


「私たちは…共存…できないのかな…。」


どちらかしか生きれないなら、迷う理由はない。


屋上へ向かう。


「ねえ、今度は私の番だよ。」


その言葉を残し、真宵は空に身を投げた。




2016年7月20日 午前0時0分


また僕は満月の夜に目が覚めた。


そして、あの記憶が蘇る。


僕は死んだ。だけどこうして記憶が残っている。


答えはきっと見つかった。



2016年7月20日 午前11時58分


真宵はこちらをみて、驚いた顔をしている。

すでに飛び降りる寸前だ。


「どうして私を死なせてくれないの…?」


そんな真宵とは対照的に、僕はとても穏やかな表情だった。


「ど、どうしてそんなに笑っていられるの…?朔ももう知っているんでしょ!?どちらかしか生きられないことを…!」


「うん、知ってるよ。だから、君は死なせないよ。」


「どうしてなの!?私は死にたいの!朔が生きて欲しいの…!なんでわかってくれないの!?」


「ごめんね、真宵。僕が今からすることを許してね。」


「な、何言ってるの朔!やめて!朔が死んだら…私…!!!」


「2人で生きる方法。それはこれしかないよ。」


朔は思いっきり走る。

真宵はその行動に反応できなかった。


朔は真宵の手を握り


同時に屋上から飛び降りた。



12時0分。日食の時間。


時間は止まり、世界は静かに反転する。



2016年7月21日 午前0時0分


気づいたら、欠けた月を見ていた。


寝ていたはずなのに、気づけばそこにいた。


きっと最悪な夢を見たからだろう。


そう、大好きな君と死ぬ夢を。


考えてた設定を残します


朔が死ぬと真宵は生きる

真宵が死ぬと朔は生きる


それでいて、最初のループ者は真宵。

真宵がループをして、朔が死ぬ現場を何度も目撃する。


そこで、自分が死ねば朔が生きれることを知る。


そのため、死に方をとにかく試してみるが全て失敗。

朔が寝ている間に死んでいたため、ループは起こったが朔自身に記憶はない(あるが薄い)


死ぬと記憶はなくなり、生きた方は記憶が引き継がれる。

しかし、日食の瞬間に死ぬとその効果は反転し、死んだ方に記憶が引き継がれる。


そのため、最終場面で朔は死んだ記憶が残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ