表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿吽  作者: 北天の護人
PR
15/22

第十四章 六道

六道りくどうとは、生まれ変わる6つの世界。

都を離れ、快慶は津々浦々を巡る。


その永い長い旅路の途中、快慶は一人の老婆に出会う。

彼女は、焼け落ちた庵の前で、灰の中から焦げた木片を拾っていた。

「息子が戦で死にました。仏壇も焼けました。」

老婆は木片を胸に抱き、涙を流した。快慶は黙ってその木片を受け取り、地蔵をそれに刻んだ。

「この仏には、あなたの祈りが届くかもしれません」

老婆は何も言わず仏像を握りしめ、深く深く頭を下げるのであった。


またある村では、疫病が流行り、子を亡くした母が快慶に語った。

「この子のために、仏さまを彫ってください。面影も思い出も忘れてしまいそうで怖いのです」

快慶はその母の手を取り、言った。

「祈りは残ります。形にしてみましょう」

そして、母の記憶の断片から小さな地蔵菩薩を彫った。それは、母の胸に残る痛みを、静かに包む姿だった。

快慶がその地蔵を母に持たせると、母は深く深く頭を下げるのであった。


焼け跡の家々、病に伏す人々、飢えに耐える村々。

名もなき人々が、名もなき祈りを持っていた。


ある村で、快慶は小さな地蔵堂に出会う。そこには、腕の欠けた石仏があり、子供たちがその足元に花を供えていた。

「この仏さまは、泣いてる子を抱いてくれるんだよ」

その言葉に、快慶は胸を打たれた。


その夜、快慶は地蔵菩薩を彫った。膝を折り、目を伏せ、手を差し伸べる姿。それは、怒りでも守りでもない。ただ、寄り添う祈りの形だった。


快慶はその後も、庶民の祈りの場に仏を作って置いていった。

あぜ道に地蔵、産屋に阿弥陀、井戸端に観音、地方の寺々に仏を作っていった。

そのどれもが、語らず、ただ「在る」仏だった。


後年、重源は快慶の仏像を見て言った。

「これは、寺のための仏ではない。辻々に生きる人々のための仏。それこそが阿弥陀の業」

快慶は微笑み、答えなかった。

その沈黙こそが、彼の祈りだった。

六道りくどうは、人が生まれ変わる6つの世界のこと。

仏教では、業によって死後にこの6つのどこかに生まれ変わるとされている。


天道 楽しい世界。神様みたいな存在になるけど、悟りはひらけない。

人間界 今の私たちの世界。苦しみもあるけど、修行して悟りを目指せる。

修羅道 ケンカと争いばかりの世界。怒りに満ちている。

畜生道 動物の世界。本能だけで生きる、弱肉強食の世界。

餓鬼道 欲ばかりで、食べたくても食べられない世界。

地獄道 罪の報いを受ける、とても苦しい世界。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ