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幸せな恋


「り、理人さん…」

「んー?」

「映画、集中できないんだけど…」


すみれはおずおずと、後ろから抱きしめる理人に声をかけた。


嫌ではないが、飲み物を取ったり身動きは取りづらい。


「理人さんって、意外と甘えたい方?」


膝に乗せられたまま見上げると、らしくなく、視線を泳がせる。


「あー…」


無言の視線に堪忍して、理人はすみれの肩に頭を預けた。


「…引く?」


触れたところから、照れと気まずさが伝わってくる。


すみれは、思わずふふふと笑ってしまった。

いつものクールで隙のない理人とはかけ離れていて。


「かわいいなって」

「それ、」

「褒めてます」

「………そう」


不服そうな表情も、最近見せてくれるようになった。


かわいい。


「すみれを甘やかしたい気持ちもある」

「たくさん甘やかしてもらってるよ」


ちょっと落ち込んでいる。

かわいい。


頼りになるかっこいい理人ももちろん大好きだ。


でも。


「甘えてくれるの、わたしだけなら、嬉しい」

「それは…もちろん」


いつもきっちりの理人が、すみれといるときだけオフモードで接してくれるのは、とても嬉しい。

すみれが一方的に与えられているわけではないと思えるから。


「ふふ。あざみがくれたお菓子食べます?」


最近、あざみはすみれにお菓子をくれる。

元々すみれの好きなものはよく買ってきてくれた。でも、最近は決まって、休日の朝出掛けようとしているタイミングで。


冷静になったら理人に悪いと思ったのか、姉をよろしくお願いしますの気持ちなのか、聞いても「もらっただけ」との回答だが。


「うん。あざみくんとも、仲良くなれるといいんだけど」


ぎゅうと抱きしめられて、すみれは理人の柔らかい髪を撫でた。


「お茶淹れるよ」

「うん、でも先週会えなかったから」

「甘えんぼさん」

「すみれ限定でね。」


これは、しばらく離してもらえなさそうだ。


こういうすみれしか知らないかわいい一面を見られるのは、とても幸せなことだ。


「理人さん、幸せな恋を教えてくれて、ありがとう」


すみれは、大好きな恋人を抱きしめ返した。







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