付き合ってるの?
「わっ、初詣ってこんなに混んでるのね…」
「ほんと。寒いだけだけど。あとで甘酒飲もうね」
人がごった返す中、理人と2人で初詣に来た。
普段ならすみれも理人も人混みには来ないが、すみれが行ったことないという話から、来てみることになったのだ。
「今年もよろしくね、すみれ」
「はい!今年もよろしくお願いします!」
寒い中身を寄せ合って並び、理人の手を握り返した。
◇◆◇
「ねねっ!荻原さんって理人くんと付き合ってるの!?」
「へっ!?」
新年の挨拶もそこそこに、声をかけてきた同僚は目を輝かせている。
初詣に行ったところを見られていたらしい。
大きな神社へ行ったので、それもそうか。
「えっと…」
すみれは冷や汗をかく。
理人とは暗黙の了解で会社では内緒だった。言っても怒らないだろうけど。
忘れていた、恋心を知られるのが怖いという気持ちがムクムクと膨らんできてしまった。
どう思われるかとか、理人に迷惑かけないかとか、すみれなんか理人の隣には合わないと言われないか…この人はもしかして理人のことが…
でも、初詣に2人で行ったなんて誤魔化しようもない。
「あーあ、バレちゃった」
肯定も否定もできずにいると、後ろからよく聞き慣れた声が聞こえた。
「やっぱりそうよね!?彼女できたっぽいのに全然口割らないから荻原さんに聞いちゃった!」
意外にも、彼女はあっけらかんとしていて、
「やだー!お似合いすぎるんだけどー!!」
「ごめんね、ようやく口説き落としたから、独り占めしたくて」
「ふーん?理人くんからなんだ?」
「そうだよ。内緒にしてくれる?」
「もっちろん!任せて!」
グッと親指を立てて早速と去っていく同僚に、拍子抜けした。
「ごめんね、油断してた。そりゃあれだけ人いたらねぇ…」
「いえ…アリガトウゴザイマス…」
一応聞いておくけど、と理人は前置きした。
「秘密にしておきたい?」
「ええっと…いえ…その、でも、仕事に私情は持ち込まないので!」
「うん、そうだね。じゃあ、情報解禁」
「えっ」
「聞かれたら答える、ってことで。」
「う、うん」
「これで堂々とすみれ狙いの男を牽制できるね」
「いっ、いないよっそんなの!」
「どうかな」
何を言ってるのか。
理人こそ。
女友達と言っているうちの誰かは、本当は理人に想いを寄せているのではと…よくない。これじゃあ理人を信頼してないみたいじゃない。
同僚の彼女は任せてと言っていたわりに、噂が瞬く間に広がったのは言わずもがな。
若菜は「水臭いなぁ。」と唇を尖らせ、仕事終わりに待ち合わせて美保と2人がかりで根掘り葉掘り聞かれた。
頼んだ食事を食べる暇もないほどの質問攻め。
好きな人のことは伏せたが、2人が聞きたかったところはそこではなかったらしく、スルーされた。
「わーそっかそっかぁ。理人くんよかったねぇ。ずっと好きだったもんねぇ」
「せっせとお菓子あげて、いじらしかったわよねぇ。」
「すみれちゃんも満更でもなさそうだったからすぐ付き合うと思ってたのに、かかったわねぇ」
2人には、お見通しだったらしい。
「4年?えっ、4年!?すみれちゃん入ってもうそんななる?やだー歳取るわけだわー」
「ほんとだねーアタシたちもうおばちゃんよ」
「すみれちゃんたちからトキメキ分けてもらうしかないねー」
あはははと豪快に笑って、酒を煽る彼女たち。
理人の気持ちをとっくに知っていた若菜と美保は、さほど驚きもせず、否定もされず、むしろ応援してくれた。
いつもこうだ。
すみれが困ったときも、仕事をお願いしたときも、すぐ助けてくれて、すみれよりもすみれのことを考えてくれる。
「いい職場です…いつもありがとうございます」
「ええー?何急に」
「若菜さんと美保さんがいる部署で働けて幸せです」
やだー可愛いーと、2人にぎゅうぎゅう抱きしめられた。
ほんとに、いい職場。




