クリスマスパーティ
「クリスマス、すみれさえよければなんだけど」
理人はすみれを膝に乗せたまま口を開いた。
両想いになってからというもの、ここが定位置になった。
「姉たちの家でホームパーティするんだけど、一緒にどう?って、美香姉が」
「えっ」
「姉たちだけじゃなくて、甥っ子と姪っ子が大騒ぎだから、たぶん話す間もないけど」
「…部外者が、お邪魔じゃないかな…」
「部外者とは聞き捨てならないな」
理人は苦笑いですみれを抱きしめた。
◇◆◇
美香がケーキを焼き、友香がチキンを用意し、理人はサンタクロースのカッコをさせられている。
美香の子ども2人、友香の子ども3人と、旦那さんたち。理人のご両親。
そこに理人とすみれも加わって、大人数でのクリスマスパーティーとなった。
大きなクリスマスツリーや、子ども向けの遊具があり、理人もこうやって育ったのだろうなと想像できた。
ミニスカサンタの服も用意されていたが、固辞してトナカイの被り物で許してもらった。
「えーっ!すみれちゃん似合うと思って用意したのにザンネーン。」
などと唇を尖らせて、友香が着ていた。美女が着るとサンタさんも美しい。
ご両親に挨拶しようとしたら、
「あら挨拶なんていいのいいの!娘達から聞いてるわ。騒がしいけど楽しんでいってね。ほらポテト揚げたてが美味しいからあったかいうちに食べてね」
で終わり、キッチンのお手伝いは全くさせてもらえなかった。
初めて来たのに、当たり前のように受け入れられて歓迎されている不思議な空間だ。
人懐っこい子どもたちに囲まれ、ごっこ遊びに付き合った。
理人は甥っ子姪っ子に懐かれていて、抱っこや遊びをせがまれていた。
「すみれちゃん、ありがとうね」
「いえっ、こちらこそ!とっても楽しいです!」
「よかった。」
2歳の女の子がすみれを気に入り、ソファでだっこして絵本を読んでいるうちにその子は眠ってしまった。
長女の美香がすみれの隣に立って、眠っている子を抱き上げた。
「チビたちのこともだけど、りっくんも」
「えっ?」
「仕事一筋というか、不器用な子なのよ。姉たちのワガママに付き合ってくれるいい弟なんだけど、その分ワガママ言わなくて。」
この姉たちにしてあの弟あり。
すみれはふふっと笑ってしまった。
「けど、あれで結構甘えんぼだから」
「そ、そうなんですか」
「すみれちゃんには甘えられるんだろうなってこの前思ったのよ」
「そんな…甘えているのはわたしの方で…」
思いがけない言葉に、すみれは首を振る。
思い返すと、仕事でも頼りっぱなしだし、真紘のことも甘えてばかりだった。
「あらそう?じゃあいい関係ってことね。」
美香がウインクしてくれた。
美女は何をやってもサマになる。
甥っ子姪っ子は笑って泣いて、でも何をやっても楽しそうだった。
理人の育った家が見れて、とても幸せそうで、来れてよかった。
片付けもほぼさせてもらえず、理人が駅まで送ってくれた。
「疲れたんじゃない?相手してくれてありがとう。チビたちほんと元気で」
「みんな可愛かった。子どもの頃、…気を遣われてたんだと思うんだけど…こういうパーティ行ったことなくて。…ほんとは憧れてたの。すごく楽しかった」
「ならよかった」
そう言って理人はすみれの肩を抱き寄せた。
「またいつでもおいで」
◇◆◇
家に帰ってくると、あざみがお風呂から上がったところだった。
タオルを頭にかぶっている。
「おかえり」
「ただいま。あざみ家にいたの?」
「ん。彼女仕事だからクリスマスは先週やった。…姉ちゃんはデート?」
あざみは冷蔵庫から牛乳を出してコップに注いでいる。
小さい頃からの習慣だ。それでも、あざみもそんなに、身長は伸びなかったのだけれど。
「理人さんのご実家で、クリスマスパーティーしてきた」
「ふぅん」
グビグビと牛乳を飲んでいる後ろ姿からは感情は読み取れない。
「…楽しかったの?」
「う、うん!すごく!甥っ子と姪っ子たちがすごく可愛くてね、理人さんのお姉さんとお母さんがケーキとか用意してくれて、それで」
ハタと、話しすぎたことに気がついた。あざみは、理人のことをよく思っていないのに。
あざみはコップを洗っている。
「そう」
ぽそりとつぶやいて、あざみはワシャワシャとタオルで髪を拭いている。
表情は見えない。
「よかったじゃん」
あざみはそれだけ言い残して、自室に入って行った。
あれ。それって。
もしかして。
うふふふと、1人でニヤニヤしてしまった。
今日は、いい夢見れそう。




