好奇心に負けた
「すみません、弟が…失礼な態度取って」
「いや、まともな反応だと思うよ」
「でも」
「仲良しでいいじゃない」
翌日出勤して謝罪すると、理人の反応は思っていたのと違ってあっけらかんとしていた。
「おれ以外に着いてっちゃダメだからね。今回みたいなことがあったら、弟くんかおれに連絡するんだよ。」
小さい子どもに言い含めるような口調。
ちょっと背が小さいからって、みんなしてすみれを子ども扱いしすぎではないか。
ムッとしたが、理人はこれ以上この話をするつもりはないらしい。
「そうそう、よかったら週末DVD観に来ない?」
「み、観たいです」
「うん、本棚も好きに見てくれていいし」
「えっ、いいんですか?」
あまり、会社の人に知られたくないというのと、すみれがインドア派というのもあって、ちょうどいいように思えた。
「どうかな?」
本や映画の話ももっとしたい。
おすすめを教えてほしい。
おすすめを読んでほしい。
むくむくと沸いてきた好奇心に負けた。
◇◆◇
「おはよう」
「おはようございます」
理人の家の最寄駅で待ち合わせた。
何観よう、何食べようと話しながら歩いているのは不思議な気持ちだ。
「買っていってもいいけど、何か作るのもいいね」
のんびり日光浴をしながら河原を歩き、長閑な休日という感じだ。
「ここの河原、春は桜がいい感じだよ。ピクニックもいいね」
「…いいですね」
桜が咲いたら、ここはきっとすごく綺麗だろう。
桜の季節は、出会いの季節であり、別れの季節。
すみれにとって恋の始まりと終わりだった。
言葉に詰まってしまったことに、理人は気づいただろうか。
こんなこと考えていたら理人にも失礼だ。
すみれは首を振って思考を追い払った。




