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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
四話:正義と復讐と
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翌日、私は墓地の中にいた。

ここは、コスモポリタンの郊外にある集団墓地だ。

この墓地は、帝国軍人を弔う特別な場所。


パパもママも眠るこの場所に私は、ずっと帰れなかった。

里帰りさえ許されない私は、とても弱かった。

強くならないと、両親に合わせる顔がなかった。

両親の墓は、帝国軍の墓地の片隅にあった。


(戻ってまいりました、私は)

コスモポリタンに、パパもママも眠っていた。

長かったし、遠回りもした。


だけど私はようやく、仇であるロブ・ロイを殺すことが出来た。

ようやく、私は胸を張って墓参りができた。


そんな私の後ろには、パラライカ。パラライカの隣にはニコラシカ。

ニコラシカの左隣でアオサクラが、なぜか赤ん坊ブリギットを抱きかかえていた。

カミカゼも、一緒に手を合わせて目をつぶった。


「いいのか?」声をかけたのはパラライカ。

「うん、報告はできた」

背中を向けて、私は前を向いた。

水色の着物を着たアオサクラは、ブリギットを抱きかかえていた。


「サラマンドルは、これからどうなるのだ?」

「絶対的な権力を持ったレックスが消滅し、コスモポリタンは混乱するだろう。

この町は、いい意味でも悪い意味でも支配に飢えている」

「だから、私たちが動くしかない」

コスモポリタンを支配したレックスは、ロブ・ロイの死により大きく力を失った。

レックスが追い出したバレンシア帝国も、街の外から静観したままだ。

だからこそ、ここにいるギルドの選択がコスモポリタンの未来を決めるのだ。


「ねえ、この子は本当にテールレスの研究なの?」

「間違いない、ブリギットはテールレス最後の研究だ。

彼女が持っている能力は、微量の魔力。危険性はさほどない」

「だけど、なぜレックスはブリギットの誕生を計画したのか?」

「ブリギットの魔力は、テールレス以上の魔力に成長するとガルサが言っていた」

アオサクラが、魔術師ギルドでブリギットの調査をした。

現状としては、脅威はない。

テールレスが生涯最後の研究として生み出したモノが、自分と別の生命だった。

復讐と殺すことだけを生きがいにした私の腕の中に、ブリギットがいるのはなんとも皮肉な話だ。


「ソノラ、この子はどうするの?」

「私たちが面倒を、見るしかないだろう」

赤い髪の赤ん坊ブリギットを、私が抱きかかえた。

この赤ん坊を抱いていると、殺意が抑えられる。

自分が人間である事を、再認識させてくれる赤ん坊のゴーレムだ。

唯一、分かったことは……パラライカが近づくと、赤ん坊の顔が泣き出しそうな顔になること。


「パラライカが近づくだけで、ブリギットはかなり怯えるからね」

「自分はそこまで怖いですか?」

「ほら、怖がっているわよ」

ブリギットは、なぜかパラライカを警戒していた。

大きな体だし、小さい子に好かれないのは仕方ない。

だけど、このブリギットはなぜか私を母親のように見ていた。


「ママ」

「ママ、じゃないけど」

「ママ」

ブリギットは、なぜか私を「ママ」と言い放っていた。

未成年の私には、子供がいるはずもない。

だけどブリギットは、なぜか私をママ呼びしていた。


「よかったですわね、ママ」

「う、うるさい!」

私はからかうニコラシカを、睨んでいた。

アオサクラも、ブリギットをかわいがっていた。


「だが、殺すことばかりのおぬしが子供を育ててみてはどうだ?」

「私に、そんなことができるの?」

「大丈夫よ、みんなで育てればいいですわ。

それに、サラマンドルの新しいマスコットに」

「あなた、サラマンドルじゃないじゃない」

私が、詰めてく睨む。

ニコラシカは、胸を張って私を見ていた。


「わたくしも、ギルドに入ることにしましたわ。

元々わたくしは、ギルドには入っていませんでしたので」

「ニコラシカ、ちょっと!」

「まあ、加入の条件はなかったしな」

パラライカに言われて、私は不貞腐れた。

アオサクラが、私をなだめていた。


「まあ、認めるけど」

「まあ、ありがとうですわ」

「その代わり、あなたには馬車馬のごとくしっかり働いてもらうわよ。

これから、この町は大きく変わるのだから」

悪戯っぽくニコラシカに言い、私は前を向いていた。


そのまま私たちは、歩き出していた。

ニコラシカと、アオサクラ、カミカゼと……相棒のパラライカ。


そして私のそばで浮いているブリギットとともに、前を向いて進んでいた。

見える前には、コスモポリタンの鉄の町並みが見えたのだから。


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