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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
一話: 氷の魔剣士と焔の鎖と
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005

(PARARAIKA‘S EYES)

――コスモポリタン中地区・集合住宅街――

自分は、いつも正しく生きようと思っていた。

正義の騎士は、間違えたことをしない。

たとえ正義を真っ向することが、難しかったとしても。


自分は久しぶりに、コスモポリタンに帰ってきた。

ここは、コスモポリタンの中地区。

大通りに、集合住宅の棟がいくつも建っていた。

五階以上の高い木造の建物群は、街の景観には高級感があった。

大通りに面したとある一つの集合住宅に入った自分は、五階建ての建物に入っていた。


背はそこまで高くないが、太った自分。

丸い体を全身覆うように、金属の鎧を着ていた。

ガチャガチャと金属音を立てながら、自分はある人物を訪ねていた。


(久しく尋ねたが、彼女はいるのだろうか)

全五階建ての建物の、二階の廊下を歩く。

木造の廊下も、金属の太った自分が歩くとミシミシと音が聞こえていた。


(ここか)歩きながらも、一つのドアを見つけた。

木製のドアをゆっくり開けると、いきなり部屋の中の滑車が回る音が聞こえた。


罠だ。自分の方を向けて、矢が飛んできた。

自分は、咄嗟に背後にあった大きな白い盾を構えた。

構えた瞬間に、矢を盾で受け止めた。

受け止めた盾から、俺は矢を引っこ抜いた。


「相変わらずの、歓迎だな」

「ノックは忘れているにゃん」奥から、間の抜けた声が聞こえた。

女の声が、ドアの奥の闇から聞こえた。

出てきたのは、薄いピンク色のショートカットの女。

小柄な顔で、茶色のジャケットに、茶色のハーフパンツを履いた女というか子供の女。

背はとても小さく、自分の体の腰ぐらいの伸長しかなかった。


「ピュリ、久しいな」

「パラっちも、元気そうだにゃん」

自分の事を、『パラっち』と呼び、語尾に『にゃん』とつける子供の見た目をした女。

彼女は、『ピュリ』。年齢不詳だが、これでも二十歳以上なのは間違いない。

最低自分とは、十年近くの関係になっていた。


「罠を仕掛けてよく言う」

「警戒したまでだにゃん」

ピュリに言われながらも、自分は部屋の中に入った。

入った瞬間、自動的にドアが閉まった。


出てきたピュリは、暗い部屋の中で立っていた。

それと同時に、ピュリは短剣を天井に投げた。

投げた天井には、一枚の紙が貼られていた。


短剣の柄には、縄がくくりつけられていた。

小さな体のピュリが引っ張ると、短剣が彼女の手のように天井の紙を引っこ抜いた。

短剣に刺さった紙を、自分の方に投げていた。


ピュリは、幼い女の子のような見た目だけど実は凄腕の情報屋だ。

投げられた短剣を、大きな鉄のガントレットをつけた手で受け止めた。


「パラっちが欲しい情報を、ピュリは揃えたにゃん」

「助かる」

「コスモポリタンは、十年でかなり変わったにゃん」

「バレンシア帝国からの独立、市民団体の国。

それから、『ロブ・ロイ』が作ったギルド『レックス』が力をつけた」

「実際、独立国家コスモポリタンの市長は『レックス』の傀儡だにゃん。

ロブ・ロイの顔色を伺って、政治をしているにゃん」

「今の『レックス』は、随分デカイギルドなんだな」

「『ガルム』ほどじゃないにゃん。

だけど、力はこのコスモポリタンでは一番だにゃん。

それより、ほらほら。ピュリの欲しいキラキラ……」

ピュリが、自分に向かって手を差し出した。

自分は腰にある袋から、宝石を一個取り出してピュリに投げた。


「ありにゃん」ピュリは、受け取った宝石を眺めていた。

自分は、ピュリが調べた紙の情報を見つけた。


「パラっちは、『フレアボム計画』の真意を知ってどうするにゃん?」

「確認したいことがある、自分の正義のために」

「パラっちの正義は、いつものことだにゃん。堅苦しいにゃん」

ピュリは、熱そうになぜか自分を仰ぐ。


「やはりそうか、『フレアボム計画』はガルムの単独か」

「パラっちは、元帝国軍だし分かっている筈だにゃん」

「フレアボム計画の計画者は、『ザンシア・アレーデス』。ギルド『ガルム』スリークローズの一人。

スリークローズは、ガルムが誇る重鎮の一人。

魔術の心得もあって、剣も扱う魔法剣士と……」

自分が目を通したのは、自分が知っている『フレアボム計画』の情報と相違ない。


自分は、知っていた。

十年前に、世界最大ギルドの『ガルム』が行なった一つの実験。

それは、この町『コスモポリタン』のエネルギー源『フレイムタイト』を大量に手に入れる実験。

『フレアボム』という爆弾を使い、『フレイムタイト』を大量に発掘する実験だ。


この実験は、コスモポリタンのそばにある『ポリタン山』に爆弾を使い刺激を与えるというもの。

だが結果は失敗した、ある人物に妨害された。

それを妨害したのは、『ロブ・ロイ』達であると今のコスモポリタンの歴史で記されていた。


実は、この記述に関しては『裏七英雄』という存在がいるという話もされていた。

この裏七英雄が誰なのかは、自分は知らない。


実験の失敗で、ポリタン山を噴火させようとしたガルムの存在が明るみになった。

世界最大規模のギルド『ガルム』は、このコスモポリタンから撤退せざるを得なかった。


それでも民の怒りは、それだけに収まらなかった。

民が次に向いたのは、関係の無い帝国領主のブロンクス家だ。

不安にあおられた民衆は、帝国に反旗を翻して領主『マイタミ・ブロンクス』を殺害した。

それが十年前の『ブロンクスの反乱』顛末だ。


「マイタミは、昔から嫌われていたのか?」

「ピュリは、マイタミ領主が嫌われている様子は無いと思ったにゃん。

だけど、一部彼には悪い噂が流れていたにゃん」

「どんな噂だ?」

「強力な魔力兵器を有して、コスモポリタンを滅ぼそうとした……とかだにゃん」

「物騒だな」自分は呟く。


「マイタミのことは、そもそもパラっちが詳しいにゃん。どうなの?」

「マイタミは、自分にこの盾を託した」

自分が背負う大きな白い盾、これはマイタミから譲り受けたモノだ。

ブロンクスの領主マイタミは、コスモポリタンで評判が悪かった噂は聞かない。

それでも、マイタミは殺されて家族も皆殺し……されそうになった。


「堅物にさらに磨きがかかったな、パラっち」

「そうかもしれぬな?」

「でも、パラっちがこの時期に戻ってきたことは……再びココも荒れるにゃんね。

このコスモポリタンは、再び不穏な空気が流れてきているにゃん」

「どういうことだ?」

自分がピュリに尋ねると、不敵に笑っていた。


「何を言っているんだ、パラっちはおかしなことを言うにゃん」

「お前……」

「パラっちが戻ってきて、何も起らないはずは無いにゃん。

スプリッツアも、この町に戻ってきたのだろ?」

この部屋には、蝋燭の明かりだけが僅かに暗闇を照らす。

蝋燭のぼんやりとした明かりが、ピュリの怪しい笑顔を照らしていた。



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