038
倉庫街の一つの倉庫、この倉庫は外観では何か分からない。
だけど鍵のかかっていない倉庫を開けると、そこにはいくつもの鉄の板が置かれていた。
建材だろうか鉄の板が、いくつも床に置かれていた。
この倉庫は、とても暗い。
唯一の明かりは、高い位置にある窓から見える月明かりだけ。
敵の姿は、どこにも見えない。
だけど、私を確実に狙っていたのがわかった。
闇に紛れて、私を一方的に狙撃するアルゴンキン。
彼の弾丸は、間違いなくここから飛んできた。
それでもかなりのスピードで飛んでくるし、見えないところから撃たれたら終わりだ。
「アルゴンキン、ここにいるんだろう?」
倉庫で、私は大声を出した。私の声が、鉄の壁に反響した。
探しながらも、僅かな空気の動き、足音、物音をじっくり聞き分けた。
耳を集中し、周囲の僅かな変化も逃さない。
それをこなせる、別人格の私。
どこかに潜んでいるのは、間違いない。
それでも、私は恐怖を感じない。
(やばいな、アルゴンキン。私を、このまま殺そうとしている。
姿を見せないまま……殺してやろうというのか?いいねぇ)
無理矢理テンションを、私は高ぶらせていく。
私の二重人格、元は一人だ。興奮状態の私が本物だ。
残忍で、命の駆け引きに快楽を覚え、好戦的な人物が私の素。
パパを目の前で殺されて、ママを処刑されて、自分も処刑されそうになってそれでも生き残った。
そんな私は、自分の事も傷つけるのが大好きな壊れた少女だった。
それを、相棒のパラライカに矯正されていた。性格の矯正だ。
落ち着いて、感情を出さない。私は、素の自分を隠すもう一つの人格を手に入れた。
命の危険を感じても尚、興奮状態にあった。
私はこんなところで死なない、死ぬわけにはいかない。
持っている鎖を、ダランと垂らした。垂らしてそのまま、前に伸ばした。
(私の鎖は、普通の鎖ではない。それは、この鎖が焔の鎖だからだ)
目をつぶり、周囲に気配を向けた。
僅かな空気の動き、流れ、私は一つだけの違和感を察知した。
違和感があったのは、たくさん置かれた鉄板が積まれた区画だ。
何カ所も、鉄板の積まれた柱があった。
高さは。私の身長よりもかなり高い。
鉄板の柱を見ながら、一カ所で立ち止まった。
(ヤツは、そこだ!)
鎖を投げ込んだ闇の先には、銃弾が飛んできた。
見えた銃弾は三発、撃たれた銃弾が鎖に命中していた。
命中と同時に、鎖の勢いが弱まった。
弱まった鎖は、そのまま私が力で振り戻した。
鉄板の柱の先は行き止まりだ。背後には倉庫の鉄の壁が見えた。
そこに一人の男が、銃を持って立っていた。
黄色の帽子に、黒のジャケット。それから派手な赤い長ズボン。
持っている銃も、赤く大きな拳銃。
間違いない、この銃が『魔銃イフリート』か。
つまり、目の前にいる男はアルゴンキンか。赤い三角頭巾を、口につけていた。
「消えろ!」
銃口を私に向けて、再び銃を放ってきた。パーンと乾いた音が倉庫に響く。
銃弾は、真っ直ぐ私に向かってきた。
私は持っていた太い鎖を、盾代わりにして耐えることにした。
だが、私は素早く飛んでくる銃弾を見て驚いた。
(三発)弾丸が、三発飛んできた。
私は鎖を盾にして、弾丸の防御に専念した。
だけど、私は見落としていたものを見つけた。
「ヒビ……まさか」
鎖に一発弾丸が命中すると、鎖が砕けた。
鎖が砕けて、同時に私の頬を弾丸がかすめた。
「鎖が……」
鎖が壊れた。勢いの強い銃弾が、そのまま私の頬をかすめた。
私の頬には、赤い血が流れた。
二発目の銃弾、三発目の銃弾は、私の体をかろうじて避けて飛んでいた。
「お前……」頬に垂れた血を、舐める私。
私の目の前にいたアルゴンキンは、勝ち誇ったように笑っていた。
「ふふふっ、これで勝ったな。俺の勝ちだ」
勝ち誇ったように、再びイフリートの銃口を私に向けていた。




