037
一人きりになった私は、倉庫街をさらに進む。
この辺りの倉庫は、どこもよく似ていた。
鉄の倉庫は、街灯の明かりに照らされて独特だ。
倉庫自体にも装飾が施されている所もあって、歩いていて暗さが気にならない。
だけど、私は周囲に気を配って歩いていた。
(通り魔事件の被害者は、赤い髪の若い女)
私はその条件を、クリアしていた。
何より、幻術殿で銃弾を一度受けていた。
(あの射撃で死んだのは、幻術士コラーダ。
それでも、あそこで狙っていたのは私に向けられていた)
狙いも、なんとなく分かっていた。私の腰にある、焔の鎖だ。
魔銃イフリートを持つアルゴンキンも、魔錬成武具を集めているのだろうか。
腰には、私の武器『焔の鎖』をしっかり携えて私は歩く。
この武器をいつでも握れるように、長い革手袋をつけていた。
敵は銃だ、相手の射程の方が遥かに遠い。
(不意打ちは、絶対に避けないといけない)
僅かな空気の違い、雰囲気、全てに気をつけて、倉庫街を歩かないといけない。
先手を取られた場合は、撃たれてしまう。アルゴンキンの狙いは、機械のように正確だ。
そんな私は、背後に人の気配を感じた。
僅かな空気の違いを、私は逃さない。
「誰だ?」空気の流れで、私は声を発した。
長屋の夜道は、人の気配がない。
それでも、感覚を鋭くして周囲を見ていた。無論、背後にも注意を向けていた。
私の後ろにいた人間は、気配があった。
背後を取ったことで、私は確認した。
(向けられた視線は、殺意)
相手の顔は分からない。
だけど、相手の考えることは理解できた。
ヒリヒリする空気感に、向けられた銃口もはっきりと背中越しに感じていた。
これを感じたのは、私であって私じゃない。
感情が高揚した、もう一人の私だ。
残忍な別人格の私は、敵の気配を僅かな空気の動きから読めていた。
同時に腰の鎖に、手を伸ばす。
手で鎖を掴んで、振り返った私。
既に、弾丸は放たれて私に向かっていたのが見えた。
敵の名前は、アルゴンキンだ。だけど姿は、やはり見えない。
闇の中、どこかに潜んでいるのを感じられた。
私は不敵な笑いをしながら、鎖を振り回した。
その姿を見る前に、私は弾丸の処理をしないといけない。
鎖で迫る弾丸を、叩きつけるように弾いた。
「くっ」表情は歪みつつも、弾丸を弾ききった。
弾かれた弾丸は、ものすごいスピードで地面に刺さった。
「さて、場所はあの辺か」
弾丸の放たれた位置から、私は一つの倉庫を指さした。
その中から、放たれた銃弾だと私は確信した。
確信した私は、怪しく笑いながら大きな三角屋根の倉庫に歩を進めていた。




