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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
三話:通り魔狙撃手と暗躍と
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036

(SONORA‘S EYES)

次の日の夕方から夜に変わる時間、私は倉庫街に来ていた。

倉庫と、水路の町並みを私は進んでいく。

この時間は、人通りが全くない静かな場所だ。

街灯の明かりが、ようやく灯った時間だ。


ニコラシカは自警団で、情報が入ってきた。

昨日、ここで通り魔があった場所だ。

そんな場所に、私ともう一人一緒に歩く人物がいた。それは意外な人物。


「あなたも受けていたのね、カミカゼ」

白い胴着に、ちょんまげの若い男性。年齢は私と同じぐらいの未成年だ。

東国出身の少年の顔は、少し強ばっていた。


「拙者を置いて、アオサクラ殿はどこかに行ってしまわれたでござるよ」

「そう」

「ソノラも、パラライカがどこかに行ってしまわれたのでござるか?」

「まあ、そんなところね」

「ソノラ殿」いきなりカミカゼが、真顔で私に聞いてきた。


「なんだ?」

「なぜアオサクラ殿は、拙者を置いていったのだろうか?」

「未熟だからでは無いか?」

「身も蓋もないことを、鋭く言うでござるな」

「今回の依頼は、かなり危険だ。

魔銃イフリートは、アオサクラもよく知っている武器だ。

危険度と自分の関連性を鑑みて、アオサクラはお前を置いていった。

なに、アオサクラの実績も強さも充分だ。そばにいたお前が一番、知っているのだろう」

私の言葉に、カミカゼはぐうの音も出ない。


「まあアオサクラは、親のように過保護のところがあるからな」

「そうでござる。でも、拙者がアオサクラと一緒になるにはどうすればいい?」

「ならば強くなればいい、私もそうした」

「そうだな、流石ソノラ殿でござる」

カミカゼは、妙に納得していた。

だけど、私は前を見ていた。周囲に警戒を、怠らない。

闇の道、微かに明るい街灯の光。襲いやすい刺客だらけの場所だ。


「ソノラ殿は、パラライカ殿に置いていかれたのでござるか」

「バカを言うな、私は違う!」

「あれ、拙者の時より歯切れが悪いでござるよ」

「私は、パラライカを信用しているからな。

十年も一緒に旅をしてきていて、互いの趣味嗜好を理解している。

それにアイツは、どれだけ単独行動をしても必ず帰ってくるからな」

「そうか……羨ましいでござるよ」

パラライカの単独行動は、今に始まったことではない。

それでも、私はパラライカのことを信じていた。

十年以上連れ添って、いろんな苦楽を共にした相棒だから。


「この辺りか?」

「ああ、ここでござる。

昨日の夜中、赤い髪の女が銃で撃たれたでござるよ」

「時間も同じか?」

「そうでござる」

周囲を見回すと、血痕が微かに残っていた。

残念ながら、死体は残っていない。銃弾も、自警団が入手しただろう


「カミカゼよ、アルゴンキンという冒険者は知っているか?」

「ガルムの人間と、話は聞いているでござるよ。

アオサクラ殿が、特に詳しいでござるが」

「まあ、アオサクラもおそらくこの依頼を受けているのだろう。

カレドニアと同じ『裏七英雄』らしいからな」

「そ、そうなのでござるか?」

驚いた顔のカミカゼ。私は、それでも周囲を見回す。


「この通り魔の犯人は、アルゴンキンだ」

「なるほど。それでこの話を、しているのでござるか」

「だが、アルゴンキンの狙いは……おそらく私だ」

「やはり、ソノラ殿の……」

「さあな、私を狙っていることは確かで、間違いないだろうな。

そして、アルゴンキンは強い。魔銃イフリートを持った、危険な強さの男だ」

私の言葉に、息を飲んだカミカゼ。

そのまま、胸を叩いてカミカゼは前を向いた。


「拙者に、お任せくだされ。ソノラ殿が狙われても、拙者がお守りいたします」

「そう、あなたには私を抱きついて銃弾を護ってくれるの」

「え?それは」カミカゼは、私の事を上から下まで見ていた。

黒いブーツの足元から、ミニの黒スカート、そして黒のジャケットに赤い髪。

長いポニーテールにした私の顔を、じっと見て照れていた。


「せ、拙者は……その、いいですか?」

「無理ならいいわよ、私一人でも戦える」

「ですが……拙者も……」

「来なくていいわよ」

「そんな、殺生な……」

私は背中を向けて、無表情で前を歩いていた。

私に対して、カミカゼは必死について来た。


「何よ、来ないで」着いてくるカミカゼから手を払う仕草を見せた私。

「ですが、相手は魔銃イフリートを持った人物で……」

「私一人で大丈夫だし、あなたがいたら敵が姿を見せないでしょ。

だから、ここから別行動で……狙いは私だけよ。

私が囮になるから、あなたは泳がせておけばいいのよ。そして出てきた犯人を倒す」

素っ気ない顔で、そのままカミカゼを置いて倉庫街の奥へ進んでいった。

カミカゼは、呆然とした顔でその場に佇むしかできなかった。



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