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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
二話:新たな雄志と幻術士と
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私の名前『ソノラ・ノクターム』、これは偽名だ。

本当の名前は、『スプリッツア・ブロンクス』。

十年前に地下牢を抜け出し、名前を捨てた。髪も、赤く染めた。

短い髪も、『レックス』を皆殺しにするまで私は髪を切らない決意でずっと伸ばしていた。


幼い頃、パパに怒られたことが一度だけあった。

あのときのパパは、とても怖かった印象があった。

パパはいつも優しくて、怒ることはほとんど無い紳士の人だ。

周囲の洋館は、私がかつて住んでいた帝国領事館。


「なんで、そんなことを言うの?」

「お前は、もう一緒にパパとママと暮らそう。

これ以上、この世界に何の未練がある?」

「未練はある。私には、どうしてもやらないといけない事がある」

「それは復讐か?」

「そう、復讐」

私は、キッパリと言い放った。

パパの差し出す手を、私は毅然と払った。


「どうして、そうやってお前は愚かなことを考える?

復讐は何も産まないと、お前には散々教え込んだはずだ」

「そうよ、もう戦うのはやめなさい。

スプリッツア、あなたは普通の娘だから。

一緒に、私たちと暮らしましょう」

今度はママが、私に手を差し出してきた。


「さあ、もうあなたは戦うのをやめてこちらの人間に……」

「それはできない」

「ああ、お前を一人にさせることはしない。

一緒にこちらにこい、復讐なんかをやめて、もう楽になるんだ」

「絶対にできない!」私は再び叫んだ。


「どうして?」

「私のママとパパは、絶対にそんなことを言わない」

「そう、ならば死んでもらうしかないわね」

ママの顔は、いきなり変化した。

同時に、パパの姿も黒い影に変わっていく。


そうだ、これは幻術だ。

コラーダが作った、ものすごく胸くそ悪い幻術だ。

私は腰に巻かれた鎖を抜いて、力強く握っていた。

黒革の手袋で握られた鎖は、煙が上がっていた。


「どうやらこれが、幻術の姿か。なはら……」

私は、思い出した。コラーダのいる『幻術殿』にいたことを。

だからこそ、私の裏の顔が出てきた。

口を怪しく開き、感情を高ぶらせていた。


「コラーダ……幻術……レックス……敵」

暗示のように、自分の感情を無理矢理あげていく。

裏の私は、レックスと戦うことを喜ぶ私だ。欲望の私が、怪しく笑っていた。


これは幻術である事を、私はようやく見破った。

見破ったと当時に、敵は本性を見せてきた。

黒い影が、触手のように私に向かって伸びてきた。


「へえ、面白いじゃないか」

同時に私のテンションが、マックスになった。

舌なめずりをして、熱いチェインブレイズを強く握った。


「殺してやるよ」

私は、黒い影に向けて鎖を振り回した。

振り回した瞬間、黒い影が消滅……して再び合体した。

同時に、私は鎖を強引に振り回していた。


(さあて、実体はどこかな?)

だけど次の瞬間、私は気づかなかった。

背後から、黒い影の触手が迫っていたのを。


私が気づいたときは、既に黒い触手に捕まっていた。

逃げることもできずに、私は羽交い締めにされていた。


「ちっ!」苦い顔に私が変わった。実体のある黒い触手が、私の体を締め上げた。

私の小さな体が、体が軋んで痛みを感じた。


「痛いねぇ、この幻術」

次々と、私の体に黒い触手が伸びて絡んできた。

私の体を、そのまま締め付けていく。それでも、私は冷静に笑っていた。


(私の鎖、私に戻れ)

私が持っていた鎖が、私の元に戻ろうとした。

同時に、鉄の鎖が赤く光っていた。いや、燃えていた。

燃えた赤い鎖が、黒い触手に迫ると燃えるように消滅していく。


そのまま、私の腰に鎖が収まった。

私の体も熱いけど、感情が高ぶって熱さが麻痺していた。

だけど再び、黒い触手が再生して襲いかかってきた。


(マズいな)

黒い触手は、あちこちから無限に沸いて襲いかかってきた。

無機質で、手応えのない相手だが嫌らしい。感情が読めない、影のような敵。


(さて、どうするか?)

私が周囲を見回すと、いきなり奥から強い風が吸い寄せてきた。


その先には、一人の人物がいた。

白く大きな盾を持った、金属鎧のパラライカがそこに立っていた。

その盾には顔があった。彫刻で掘られた彫りの深い男の顔。

顔には掘られた目で、高い鼻があって口が大きく開いていた。


「吸い込め、『異界の口(デビルダムマウス)』よ」

パラライカの言葉と共に、世界が口に吸い込まれるのを私は見ていた。

口に吹き込まれた風は、あっという間に黒い触手を吸い込んでいた。

それと同時に、私の周りには強い光りが差し込んできた。



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