024
廃墟の中は、やはりまだ幻術が生きていた。
どうやら、コラーダは二重にも三重にも幻術をかけているようだ。
背教の中を入ると、綺麗な洋館の中だ。
外観とはまるで違うホテルのようなロビーが、私たちには見えた。
白い大理石の床に、大きな階段。
赤い絨毯に敷き詰められたこのロビーは、とても豪華だった。
「ここが、幻術殿か?」
「そうらしいな」
私とパラライカが、周囲を見回しながら歩いていた。
人の気配はない、静かな洋館。私たちの足音だけが、響いて聞こえていた。
「パラライカ、確認するけど……ここには、コラーダとお供だけが住んでいるのか?」
「ああ、幻術があるので、まともに暮らせない。
彼が心を許した選ばれた人間だけが、ここに住んでいるのだ」
「コラーダは、随分と友達が少ないのね」
「ソノラも同じだろ」
「私は違うわよ!」
パラライカに言われて、拗ねた顔を見せた私。
それでも、パラライカは前を見ていた。
洋館の階段を上り、廊下を進んでいく。
「まあ、この洋館も幻術なのね」
「そうだ、だからこの幻術を……打ち破らないといけない」
「幻術の破り方は、ちゃんと聞いているわ。
おそらくこれは、廃墟にかけられた二つ目の幻術。
つまり『物』にかけられた幻術よ」
「では、どうやって解くんだ?」
「幻術を放つ何かを探す」
「だけど、チェインブレイズの魔力は……」
パラライカが言うとおり、チェインブレイズにかかっていた魔力が消滅していた。
探索と解除を行い、『ヴィジョンコラプス』の魔力は無くなっていた。
「幻術を放つ何かを、お前は探せないか?」
「なのでこれを、持ってきた。
特定魔力に反応する、ランタンだ。2万タイトかかった」
「ソノラ、そんなものをいつの間に買ったのか?」
「魔術師ギルドに行ったからな、ガルサから直接買った」
私はランタンを持ち、前を進む。
ランタンには、いつも炎がついていた。
魔力によって、緑や黄色に変化していく代物だ。今のランタンの炎は赤い。
「赤い炎がさらに青くなると、さらに強く魔力を感知する。
一番強い色は、紫……コラーダクラスの魔力ならば紫の反応を示す。
流石に、2万タイトもかかったからな」
「魔力の強弱が、識別ができるのか。便利だな」
「ちゃんと私だって、考えているんだから」
「金を使いすぎじゃないか?」
パラライカは、素っ気なく言い放った。
私はそれでも、前を向いていた。
「いいのよ、どれだけお金を使っても……レックスは皆殺しよ」
ランタンの火をしっかり見ながら私は、前を進んでいた。
「相変わらずだな」
「ここにいるコラーダも、絶対に倒すわよ。そのために、私は多くの物を捨ててきた。
レックスを皆殺しに出来るのなら、なんでもやるわ」
私は、覚悟を決めていた。
パラライカと旅をして、再びこの町に戻ってきた。
「炎が、赤から……青に変わってきた」
「近いわね」ランタンの炎が……徐々に青くなっていく。
洋館の二階の廊下を、真っ直ぐ進む。人の気配は、未だにない。
そして、廊下を歩くと炎が揺れて青くなった。
「ここかしら?幻術の媒体になっている『物』は?」
「待て!ここから警戒をして……」
「ええ」
だけど私とパラライカがドアに近づいた瞬間、ドアが触れてもいないのに勝手に開いた。
ドアの中には、闇が見えていた。
「くそっ、罠か!」
「やはり『物』の守りは厳重だな」
ドアから流れる闇に気づいた時には、すでに闇に私とパラライカは包まれていた。
それは一瞬の出来事で、逃げる隙も無かった。




