022
(ROBUROI‘S EYES)
ここは、かつてブロンクス家のあった邸宅。
コスモポリタンの中央にある二階建ての大きな屋敷は、今は私たち拠点だ。
邸宅の地下には、通路が続いていた。
私は眼鏡をかけ、真っ黒の執事服を着ていた。
この服は、マイタミ・ブロンクスから奪った黒い服だ。
腰には杖を携えた私こそ、『レックス』の最高幹部『ロブ・ロイ』だ。
隣にはもう一人、一緒に歩く人物がいた。
私よりも十センチも背が高い剣士は、頭に灰色の鉄仮面をつけていた。
赤い革鎧に、黒のズボン。彼の名前は、幻術士コラーダ……の傀儡の男。
だが、コラーダとはこの鉄仮面を通じて会話が出来た。
「コラーダよ、集金の方はどうだ?」
「今月は500万タイトの上納金です」
「今月は、少ないでは無いか。
とにかく、もっとたくさんのタイト硬貨を集めよ」
「はっ、申し訳ありません。『ロブ・ロイ』様!」
眼鏡越しに、私は鉄仮面の男と話す。
鉄仮面の男は、ランタンを持って前を照らしていた。
「成果が出なければ、このギルドでは絶対に上にのし上がれぬ。
コラーダよ、分かっているな」
「ロブ・ロイ様。一つよろしいですか?」
「何だ?」
「氷の魔剣士『スノーボール』が、冒険者の女に負けたというのは、本当ですか?」
鉄仮面の男から、声が聞こえた。
その言葉を聞いて、私は眉をひそめた。
「初耳だな」
「うおっ、そ、そうでしたか」
鉄仮面後ろの声が、どよめいたように聞こえた。
「負けたのか?どこのギルドだ?」
威圧感のある私の顔、鉄仮面の男もさすがにたじろむ。
「『火之鳥』の残党と思われますが……なんとも。
裏七英雄の一人、アオサクラが『火之鳥』にいましたので」
「裏七英雄も、鬱陶しい存在だ。我らも力をつけてきたことだしそろそろ、潰さないといけないな。
彼らは、この街に残った臭い鼠だ」
「それに、スプリッツアの事ですが……」
だが、鉄仮面の男から声が漏れたとき私は不機嫌な顔に変わった。
「まだ、意見があるのか?」
「いえ、その……本当にスプリッツアは戻っているのですか?この町に?」
「情報は間違いない。確かな情報源から、この情報を得たからな。
奴がいれば、今のこの『レックス』の地位も脅かす存在になる。
殺せ、殺して全てを奪え」
「はっ!」鉄仮面の男から、畏まった声が聞こえた。
「それよりも……まだお前は、この場に姿を出せぬのか?」
「ええ、残念ながら」
「そうか、やるべき事をやっていれば問題は無いが……
成果が出なければ、お前のいなくなる『幻術殿』はどうなるか分かっているな」
「も、勿論です」
鉄仮面から聞こえていたコラーダの声が、震えていた。
私は、コラーダがどこにいるか知っていた。
いつでも、コラーダを殺すことが出来るのだ。
それだけじゃない、全ての冒険者を一撃で殺す力が私にはあった。
私は絶対的に強い、その力を持っていたのだから。
「それにしても、ここはどこなのですか?」
「ああ、お前にはまだ見せるのは初めてだったな。
ここには、ブロンクス家の隠れ財宝が眠っている」
「隠れ財宝?」
「そうだ、ここには私たちレックスの悲願が眠っている。
お前も聞いたことがあるだろう、『テールレス』という錬金術師を」
「偉大な錬金術師、テールレス。
数年前までこの世界で生きていた、天才錬金術師。
その正体は、魔界を追われた魔族だった。
テールレスは様々な武具を作り、世に出した。話は聞いていますが」
「この服もそうだ、私のこの服……『無敵の服』」
私が着ていた黒い執事服が、まさにそうだ。
このカヴァーチャには、一切の攻撃が通らない究極の服。つまり私は、無敵なのだ。
間もなくして、歩く私たちの前に厳重な重さの扉が見えた。
真っ黒で分厚い鉄の扉を、鉄仮面の男がランタンで照らす。
「この扉の先には、テールレスの財宝が眠っている。
だが、今はその財宝を使うことは出来ない」
「どういう意味ですか?」
コラーダが聞き返すが、私は無視してこの扉を開けた。
重いこの扉は、私のような条件を満たした人物しか開けることが出来ない扉。
扉を開けると、そこにはいくつものガラス管が見えていた。
「ここって……」
「テールレスの研究所、そしてテールレス最後の財宝が眠る場所だ。
この財宝で、私は帝国の歴史を終わらせようと思う」
私は顔の半分を影にかくして言い放っていた。




