021
(AOSAKURA‘S EYES)
ニコラシカの頼みを、私は聞いていた。
テコニックというニコラシカの親友、私は彼女を助けに来た。
方法は二つ。コラーダに会うか、スプリッツアを探すか。
スプリッツアは、十年前に滅亡したブロンクス家の一人娘。
処刑される寸前に逃走したと言われ、現在も行方を捜していた。
だけど、スプリッツアの手がかりは無い。
もう一つは、コラーダに会う方法。
しかし、仮面の男は偽物。本体は『幻術殿』にいた。
だが、幻術殿に行くには普通ではない入り口を探さないといけない。
制限時間、二十四時間以内。現在ちょうど昼十二時だから、後は七時間だ。
どちらをとっても、かなり難易度の高い条件だ。
「解き方が分かったが、方法が分からない」
「まあ、そうだよね。一番簡単なのは、幻術殿を探すことだよね」
「ガルサ、どういう意味だ?」
「ここは、魔術師ギルドだよ。忘れちゃった?」
おどけて、体を揺さぶるガルサ。
白い着ぐるみが、右に左に揺れていた。
「方法があるのか?」
「幻術殿を探す方法は……ある」
「どうすればいい?」
「条件も、ちゃんと揃っているしな」
「条件?」
「お前、その鎖をボクに貸してくれないか?」
ソノラの腰の鎖を、指さしてきたガルサ。
ソノラは、強ばった顔を見せていた。
「お前は……」
「君の鎖じゃないと、これを使うことは出来ないんだよ。
ボクの『ヴィジョンコラプス』にはね」
「『ヴィジョンコラプス』?」
「強い探知魔法だよ。だけど、この魔法は普通の魔法ではない。
魔力の影響が強くてね、普通のモノにかけると……」
そういいながら、ガルサは近くにあった一本の杖を左手で握っていた。
ガルサが、魔法を詠唱すると右手が紫に光る。
光った杖に、右手を近づけると杖の先端についていた宝石が破裂して杖が粉々に砕けた。
「魔力が強すぎて、壊れちゃう。
『ヴィジョンコラプス』は、魔法探知と同時に魔法解除効果があるんだよ」
「私の刀ではダメか?」
私の腰には、『朧月光』がある。
黒い鞘に納められた、三日月のように曲がった刀だ。美しい鞘も特徴的。
「うーん、朧月光だと探知が発動しないかな。
魔力を逆に全く帯びていない……不思議な魔導具だからね。
でも代用品はあるから2000タイトで魔力強化杖、絶賛販売中」
「商売上手だな」ガルサは、魔力がかかっている杖を、私に見せてきた。
それでも、私は購入を迷うとガルサはすぐにソノラの鎖を見ていた。
「でも、その鎖は違うようだね」
ガルサには、何かが分かるようだ。
確かに、ソノラの鎖には何か不思議な力を感じられた。
「この『ヴィジョンコラプス』を耐えれるか、確かめたいんだ」
「興味本位か、ガルサは。悪い癖だ」
私は、ガルサの性格をよく知っていた。
ガルサとも、十年来の付き合いだ。
「まあまあ、いいじゃないか。この魔術を成功すれば、君たちは探すことが出来る。
後は幻術殿の居場所だけど……」
「それに関しては、相棒が既に動いている」
ソノラは、パラライカを信用していた。
私はパラライカという男には、後ろめたい影が見えた。
それでも一緒に旅をしていたソノラには、彼を信じられる何かが強い絆があるのだろう。
「その鎖を……」
「ああ、構わない」ソノラは、革手袋の両手で腰に巻いた鎖を手に取った。
そのままビアスに向けて、鎖を差し出す。
「間違いない、最高の逸品だぜ。
これならば、ボクの魔術も力を発揮できるぜ。
少しその武器を貸して……」
だけど、ガルサが白い右手を鎖に延ばした瞬間右手から煙が立ちこめていた。
「あっち!」
鎖に手を近づけた瞬間、ガルサの手から煙が上がって、火がついていた。
「気をつけろ、これは炎の武器だ。凄く熱いぞ」
ソノラは、手袋を着けたまま冷静な顔で太い鎖を握っていた。
ガルサは、煙が出た右手を吹く仕草を見せていた。
「じゃあ、そのまま持っててくれ。
今から、ボクが魔法をかけるから『ヴィジョンコラプス』を」
ガルサはそう言いながら、着ぐるみの動かない口から魔法の詠唱の声が聞こえてきた。




