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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
二話:新たな雄志と幻術士と
19/55

019

(PARARAIKA‘S EYES)

――コスモポリタン中地区・集合住宅二階――

翌日の朝、自分は再びここに来ていた。

大通りに面した集合住宅、情報屋ピュリが拠点にしている秘密のアジト。


今回は、この前教えてもらった合い言葉で部屋に入った。

相変わらず薄暗く、窓のない狭い部屋。

そこに自分は、深い椅子に座って小さな女を見上げた。


「なるほど、幻術かにゃん」

ピンク髪の童顔の女が、荷物の箱の上に座っていた。

女盗賊の出で立ちで、ナイフを磨いていた。


「コラーダのこと、知っているか?」

「まあ、幻術士は珍しいからにゃん。

東国のように、幻術士もまた珍しいモノだにゃん」

「コラーダは、レックスの一員と聞いたが」

「合ってるにゃん。幹部クラスで、金作りの達人でもあるにゃん」

「どういう意味だ?」

「コラーダに限らず、レックスの価値は金の集金で成り立つにゃん。

金を集める奴が偉い。それがレックスにある、唯一にして絶対のルールだにゃん」

「冒険者ギルドのわりには、金稼ぎがメインのギルドか」

「金の力は、馬鹿に出来ないにゃん」

ピュリは、自分に一枚のタイト貨幣を投げてきた。

赤い硬貨には、一人の人物の顔が描かれていた。


「これは……」

「今、コスモポリタンに流通する硬貨の人物『ロブ・ロイ』だにゃん。

彼らレックスは、大金を集めて……貨幣まで制御したにゃん。

十年前にあった、この貨幣は今や激レアモノだにゃん」

もう一枚投げ渡した、タイト貨幣。こちらには『ロブ・ロイ』と別の人間が書かれていた。

「バレンシア皇帝……」

「コスモポリタンは、バレンシアの影響を確実に排斥しているにゃん。

今は『自警団』という元帝国軍人が集まる集団があり、帝国軍人は何とか息をしているにゃん。

しかし『レックス』は、確実に近いうちに動くだろうにゃん」

「そうか」自分は、ニコラシカの顔を思い出した。


「パラっちはニコラシカが、気になるのかにゃん?」

「知っているのか?」

「ピュリは、何でも知っているにゃん。

コスモポリタンの目だし、耳だにゃん」

「そうか。まあ、ニコラシカは大丈夫だと思う。

アイツはアレでいて、以外と何とかする力があるしな。

アイツも……『裏七英雄』だよな?」

「やっぱり、そう思うかにゃん?さすが、元同僚だにゃんね」

「あいつの槍の腕は見事だ。帝国軍の中でも、有数の槍の使い手だし。

アオサクラも、『裏七英雄』だった。

そんな昔話より、自分はあの幻術の話がしたい」

「まあ、そう慌てるにゃん。

コラーダの幻術のことが、もっと聞きたいかにゃん?」

「相棒は……コラーダと戦う気だ」

相棒(ソノラ)は、レックスを皆殺しにする夢があった。

自分と出会い、その夢をはっきりと目的に変えた。


「コラーダが、かける幻術は何だ?」

自分が質問するが、ピュリは首を横に振った。


「詳しくは分からないけど、幻術を見せるモノじゃないかにゃん」

「それはわかる」

「だけど、二つ噂は聞いているにゃん」

「噂?」

「一つ。コラーダの幻術は、鉄仮面を媒体に幻術をかけるにゃん。

だが鉄仮面の人物は、コラーダでは無いにゃん」

「どういう意味だ?」

「そのままの意味、そしてもう一つ……コラーダの本体は、『幻術殿』にいるにゃん。

幻術を解除するには、『幻術殿』にいる本物のコラーダを倒さないといけないにゃん」

「場所はどこだ?」

「大体……南区の当たりだと、思うにゃん。

鉄仮面の男の目撃例からして、場所はある程度絞れるにゃん。

だけど簡単には、入れないにゃん。後は……」

ピュリは、そういいながら後ろの箱に小さな体を突っ込んだ。

そのまま、体の半分を入れて取り出したのは、黒い二つの石。


「パラっち、これを持って行くにゃん」

「なんだ、これは?」

「パラっちの盾についていた、目玉だにゃん。

この目玉をつけたとき、パラっちの盾は真の力を発揮できるにゃん」

「そうか、金は……」

「いらないにゃん。その代わり……スプリッツアについて、ピュリも聞きたいにゃん。

十年前にいなくなった、ブロンクス家の娘がどこに行ったのか知りたいにゃん」

ピュリは、怪しい顔で自分に聞いていた。

目を細くして、自分に迫る姿はいつも通りのおどけた表情とは違っていた。



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