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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
一話: 氷の魔剣士と焔の鎖と
13/55

013

木造の建物には、二人の人間がいた。

いずれもリラックスした様子で、椅子に座っている男性。

いきなり私が窓を蹴破ると、驚いた顔を見せていた。

誰も、いきなり窓から潜入するとは思わない。ましてやここは二階だ。


そのまま、私は木の床に着地した。

振り子代わりに使った鎖を引っ張り、両手で握って立っていた。


「お前は誰だ?」

「『レックス』か?」

私が周囲を見回した、二階の部屋。

茶色の鉄壁に、木の床の部屋。見えた、人は二人だけだ。


休憩部屋のような部屋で、二人だけだと少し広く見える部屋だ。

木の床の足元から、喧噪の声が聞こえていた。


一人は、腰に曲刀を持っていた男。

曲刀は剣というより、真っ黒な鞘に入った三日月のような刀だ。

もう一人は、ナイフを構えて腰をかがめて身構える男。

二人とも、下にシャツとズボン。革鎧を着て、私の方を身構えた。


「な、なんだ?」

「ここは『レックス』の拠点か?」

「そうだが、お前は?」

「じゃあ、死ねや」感情を高ぶらせた私は、笑っていた。

「なんだ、お前は?」

「構わぬ、やれ!」

曲刀を持った男が喋りながら、後ろのもう一人の男が手にナイフを持っていた。

そのまま、物陰から一気に私に向かって突進してきた。


だけど、私の目は笑っていた。

口も大きく広げて、怪しく笑う。

右手には黒い手袋、手袋越しに腰から鎖を握っていた。

感情が抑えきれない、怖いほどの笑顔。ようやく見つけた『レックス』の人間、私が殺す敵。


突進してきた男は、次の瞬間には吹き飛ばされた。

吹き飛ばしたのは、私の鎖だ。素早く鎖を振り回すと、大きな男の体を鎖で振り下ろして吹き飛ばした。

壁に激しく叩きつけられて、地面に転がっていた。


「ぐはっ!」ナイフの男は、簡単に倒れた。

「レックスは、皆こうだ!」

「なんだ、このガキ!どうやって……鎖か?」

後ろの男が、曲刀を持っておののいていた。


「お前も死ね」

太い鎖をブルンブルンと、勢いよく振り回す。

後ろの男は危険を感じたが、曲刀を見た。


「そうだ、俺にはこの刀がある。スノーボール様からもらったこれが……」

男は、意を決した顔で曲刀を強く握った。

そのまま私に向かって、突進した。

振り上げて、私の顔をめがけて飛び掛かろうとした。


「無駄無駄無駄よ!」

だが私の鎖を、振りかざしていた。

横から振り回された鎖を、刀で受け止めた。


「この刀は、これでも……」

「無駄だと言っているのよ」

私の鎖が連続で右、左と振り回された。

振られた鎖の連続攻撃で、男の持っていた曲刀が男の手から離れた。

曲刀が、木の床に刺さった。


「使いづらい武器だ」男は負け惜しみを言う。

それでも、腰にはもう一本武器を持っていた。

これは、普通のまっすぐなロングソードだ。


「苦しいか、怖いか?」

「黙れ、化け物!」

苦し紛れに、叫んだ剣を持つ男。

気持ちいい、私が一番嫌いなレックスがこうして苦しんでいるのだ。


「アンタも死にな」

私が鎖を、男に向けて投げつけた。

投げつけた鎖は、男の横をすり抜けた。しかしすぐさま私の鎖が生き物のように、男の体を縛り上げた。


「これは……」

「あなたは、キツイ死を与えてやるよ。『フレアチェイン』」

険しい目で、私は両手で鎖を握った。

握ったと同時に、私の手から炎が巻き起こった。

そのまま炎は、鎖を辿って男に方に向かっていく。


「助けてくれ、俺は……」

だけど最後の断末魔と共に、男は炎に包まれていた。

鎖に捕まった男が燃えて、灰となって崩れ落ちた。

燃えた灰を私は、冷たい顔で踏みつけた。


「雑魚が」

黒いジャケットを着ていた私は、周囲を見回した。

タンスやベッド、テーブルなんかも見えるところからどうやら休憩所らしい。

鎖の先には、人だった人間の灰。残っているのは、倒れたナイフ使いの男。


部屋の中を確認して、周囲を見回した。

だけど、戦いが終わると顔が一気に冷めた。

感情も、抑えて周囲を見回した。


これは私の性癖だ。

戦いをする度に、私のアドレナリンが出て興奮状態になっていた。

いわゆるサディスト的な側面を私は持つ、二重人格という言葉が当てはまる。

興奮状態になって、サディストな私が出たときはとても強い。

だけど、それは破壊的な衝動もあり危険だ。

感情の制御を、訓練をさせたのがパラライカだ。


冷静になった私は、周りをよく見ていた。

少し遠くに見えた、木のチュスト。

大きな棚が目に入り、私は目の前に立った。


(レックスの拠点ならば、『ロブ・ロイ』の情報があるのだろうか)

なんとなく開こうとした瞬間、私は気配を感じた。

部屋の奥に唯一あるドア。ドアの奥から、冷たい氷のような空気が流れてきた。

同時に私に向けて、飛んできたあるモノが見えた。


(氷の柱)それは、細長い氷の柱だ。

二メートルほどの長い柱が、私に目がけて猛スピードで飛んできた。


反射的に、私は鎖を振り回す。

同時に感情を高ぶらせて、口元に笑みを浮かべた。

鎖で絡みついた氷の柱は、そのまま粉々に砕けた。


「出てこい、コソコソしないで!」

「なるほど、騒ぎの主がここにもいたのか?」

部屋の奥の通路から聞こえた、男の声。

部屋の奥から感じた、冷気のような冷たさ。

間もなくして、姿を見せたのは水色のマッシュルームカットの男だった。



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