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鉄と炎の街  作者: 葉月 優奈
一話: 氷の魔剣士と焔の鎖と
12/55

012

――コスモポリタン東地区・住宅街――

夕方から夜に入るころ、私たちは四人になった。

全身金属鎧のパラライカが、合流してきたからだ。

四人の中で、率先して案内をするのはニコラシカ。


夕刻、私の居場所は東地区のある建物に来ていた。

ここは東地区の住宅街、東国街と同じ地区だけどバレンシア帝国の風景だ。

茶色の鉄の壁、赤い屋根という同じ建物がいくつも見えた。

足場も、石を敷き詰めたような場所で見慣れた風景だ。


ニコラシカは、細い路地をドンドン進んでいく。

街並みがよく似ていて、鉄の壁には圧迫感があった。

迷いそうだし、狭くて暗い道。

ニコラシカが道案内すると言うことで、彼女に全てを任せていた。


「パラライカ、どうだったのだ?」

「だいたいな」

「そうか」ニコラシカの後ろで、私の相棒と会話を交わす。

なぜか、白い胴着のカミカゼも腰に木刀を携えていた。


「拙者も戦うでござる」

「木刀でか?」

「ええ。拙者もスノーボールを倒すためなら、何でもしないといけないござる」

「勢いはよし、パラライカ。依頼主を、守ってやってくれ」

「いいのか?」

「私は構わない」

パラライカは、大きな盾を背負っていた。

真っ白な円形の盾に、カミカゼは興味をそそられた。


「その盾、顔のようでござる」

「ああ、そう見えるな」

「ですが、顔のようなもので攻撃を受け止めるのでござるか?」

「まあ、そんな時もある」

「スノーボールの詰め所は、数はどれぐらいいる?」

「だいたい十ぐらい、というところか。

夜はレックス軍も少ないから、案外今の時期は好機だろう」

パラライカが、淡々と言う。


彼は、いつも私の知らないことを知っていた。

それは、決まって単独行動をした後だ。

どこで何をしているのか、私は知らない。

知らないけど、彼に対して深く追及はしなかった。


(何より、彼は相棒であると同時に師匠でもあるのだから)

険しい顔で私は、再び前を向く。

前を歩いていたニコラシカが、いきなりある路地の一軒家の前で立ち止まった。

ニコラシカが指さしたのは、赤い屋根の一軒家。

どこにでもありそうな外観の家だ。


「この建物が、詰め所ですわ」

「普通の家ね」

見えた普通の家は、周りの家となんの変わりが無い。

でも、私は詰め所と言われた家を見上げていた。


「一軒家をカモフラージュして、レックスは詰め所にしていますわ。

レックスの資金力はかなり高い、いろんな金集めをしていて……隠れ家的な経典もあるのですわ

そもそも西地区にある商会ギルドを、傘下にしておりますので……」

「御託はいいわ」

ニコラシカの饒舌な語りを、私が切り捨てた。

建物は、二階建てだ。

茶色の壁に、窓は一階に二つ、二階に一つ。


「それで、本気ですの?相手は冒険者ですわ」

「パラライカ、強い冒険者はここに誰がいる?」

「槍戦士のカルロス、剣士のジョンソン、盗賊のアード・ライド。槍戦士は一人ドノスに……」

「ど、どうしてそこまで詳しいのです?」

「ああ、調べた」

パラライカは、ニコラシカの質問に冷静に答えた。


「その中で、危険人物は?」

「スノーボールだけ……レックスの幹部。

魔導具(マジックアイテム)氷の魔剣(スノーブラインド)所持』」

「氷の魔剣、つまり弱点は……」

「炎だ」私に質問に、パラライカの即答。慣れた私と相棒の掛け合い。

それを、呆気に取られて見ていたニコラシカとカミカゼ。


「じゃあ、私がスノーボールを引き受けるわね。

一階と二階、どっちにいると思う?」

「さあな」パラライカは首を横に振った。

「じゃあ、私は二階から行くから。別行動で」

「え?」カミカゼが驚いていた。

それでも、私は腰にある鎖を抜いた。長い革手で握られた鎖を、グルグルと振り回した。

「ならば、自分は玄関から突入しよう」

盾を構えて、パラライカが玄関を見ていた。一軒家の玄関で、大きな盾を構えた。


「ここからは別行動だ。ソノラ、いいか?」

「いいわよ」

「ニコラシカ、自分が目の前で騒ぎを起こす。お前は、人質の救出をしてくれ。

『アオサクラ』は、お前の知り合いだといったな」

「そ、そうですけど……いいのです?」

「今が好機だ、だから今、このまま攻める。それだけの理由」

盾を構えて、助走を取るパラライカ。見えている先は、一軒家の玄関。


「なぜ、そこまでためらいもなく戦える?」カミカゼが、私達に聞いてきた。

「私はレックスを皆殺しに来た。それだけだ」


私も、同時に行動を起こした。そのまま、鎖を上に投げていた。

投げた瞬間、屋根の軒下に引っかかった太い鎖。

そのまま、鎖を持ったまま勢いよく駆け出した。


走った後、振り子のように体を浮かばせた。

浮かび上がった私は、鎖をしならせた。

そのまま二階の窓にめがけて、一気に飛び込んだ。

私のショーが、ここから始まったのだった。



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