第25話 自殺
葬式には叔父さんの同僚やら生徒が大勢来ていた。入り口では行列ができて、どこのお偉いさんの葬式なのだろうかと思わされた。彼と父はこの混雑の中で焼香だけ済ませてさっさと教会を後にした。
「人ごみだったな。まるで」
「何であんなに人がくるかね? 学校の生徒が来る? 普通——」
「さあ? 俺の葬式は親族だけで良いからな。俺には起伏がありすぎてかなわんし、それに、あんなの面倒だろう。どうせあそこの一家で盛大にやりたがってるだけなんだから」
「何かと騒がしくて、恥ずかしいな」
彼はどこかでこの葬式が悪いもののような気がしていた。直接の親族でもない家が葬式を取り仕切って、大事のように見せつけているようにも思えて仕方なった。
「叔父さんの家系、本当に誰もいないの?」
「さあ? 幼少期に家は無くなったって聞いたぞ?」
そして叔母も、しばくして死んだ。その報せは何故だか彼のところにやって来て、愈々母方の家族のバカらしさが彼にはわかった。彼の従姉弟である叔父の娘さんは結婚してK家とは疎遠になり、彼との関係も全くなくなった。従弟である息子は両親をなくしたショックから孝道と同じように学校へ行くことをやめ、定時制の高校へ進学し、K家の爺さんの養子になった。それはあの爺さんの目論見通りと言えたであろう。ただK家に関わった家族はみんなバラバラになった。あの爺さんにそのことの反省があるわけもなく。
叔母の死の報せと一緒に葬式の期日を記したメールをよこしたのは京子であった。しかし彼は叔母の葬式には行かなかった。
叔母は自殺だった。