第24話 叔父の死③
「ところで叔父さんの子供はどうしてるんだろうね」
「知らんな、でもあそこの娘さんはもう結婚してるんだろう?」
「息子はまだ中学入ったばかりじゃなかったかな」
「問題ねえだろ」
叔父さんは教員だった。京子の姉とは職場結婚だった。
「でもあそこの叔母さんもおかしいからな」
「叔母さんも教員だったんでしょう? 何がおかしいって?」
「それは爺さんの町庁時代のコネで教員になれただけだよ。教員っていうのは割とそういうのが多いんだよ」
「へえ」
「それで結婚してから直ぐに教員辞めたはいいけどな。家庭ではうまくできなかったみたいだってな」
「ああ、娘さんと喧嘩ばかりしてたらしいね」
「いや、そうじゃなくて、——知らねえのか。あそこの叔母さん、何度も自殺未遂起こしてるっていう話」
「それははじめて聞いた」
「それを娘さんは気付いていて、親子関係は上手くいかなかったらしいな。訳はそれ以上知らないけどな。それに、叔父さんがいなかったらあそこの叔母さん、とうに死んでいたかも知れないんだってよ」
「どういうこと?」
「あそこの叔母さんは夢遊病でな、時々姿を消すって言うんだ。それで叔父さんと娘さんは探しまわったりするらしいんだけど、それが死にたくていなくなるらしくてな、見つけ出すと結局死にきれないっていう話になるんだとか」
「へえ――、叔母さん、狭心症で薬を飲んでいたのは知ってたけど」
彼はなぜかそれを簡単に聞き流していた。彼にはやはり父がその話を面白がっているようにも見えた。そのためかそれ以上の話を彼は聞きたくなかった。それに――、今から葬式と言うことで、そちらの方を気にかけていたということもあった。
彼は俯きながら喪服姿で縁石の上を愉快に歩いた。子供じみた姿だった。それでもどんよりと落ちてきそうなけむりのような空を見ているよりはずっとマシだった。